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第二百二十一話 子どもからの相談

「なんやここにおったんかい。まったく今までどこほっつき歩いとったんや」


 シェリナ達から離れた後イロリが歩いていると奥から上背の高い男が声を掛けた。全身が何故かずぶ濡れであり下草に水が滴っている。


「はは、ごめんねミキノスケ兄さん。それにしてもどうしたの水に濡れて」

「ちょっと涼んとっただけや」


 そのやりとりからイロリの兄であることがわかる。背格好といい容姿といいあまり似てはいないが仲はよさそうである。


「それで仕事はこれから?」

「呑気か! もうわいの仕事は片付いたわ。全くお前は本当にマイペースやな」

「そんなに褒められると照れるよぉ」

「褒めとらんわボケッ!」


 ビシッとミキノスケがツッコミを入れた。言われたイロリの方はどこかポワンっとしているが。


「でも兄さん。ちょっと楽しそうだね」

「うん? はは、わかるか。せやけどイロリだって似たようなもんやろ。何や面白い奴でもみっけたんか?」


 ニコニコしているイロリをマジマジと見つめながらミキノスケが聞いた。


「ふふっ。うん凄く興味深い人にね」

「ふ~ん……ま、えぇわ。ほな戻ろっか。風魔(・・)様の下へ――」


 そして二人はそのままどこかへと消えていった――






◇◆◇


「助けてと言うと何か困ったことがあるのか?」


 二人の内、少年の方に俺は聞いた。どこか必死なようでもある。


 まぁこんな状況だ助けて欲しいことなんて山ほどあるだろうが――


「僕たちを神父様から救って欲しいんだ!」

「あのね。本当は神父様海賊と繋がっているの!」


 それが二人の相談内容だった。俺の脳裏にあのクリア神父の顔が思い浮かぶ。


「おいおいあの神父が海賊と通じてたって? だけどあの神父はお前たちをここで匿っているんだろう?」


 そう。わざわざこんな地下室に潜み倒れていた俺まで助けてくれた。その神父が実は悪人だったとは……。


「僕、見てしまったんだ。神父様が密かに海賊と話しているところを。神父様は明日の夕方僕たちを海賊に引き渡すつもりなんだ。多分その時に貴方も……」


 うつむき加減に少年が答えた。そんな悪巧みをあの神父が……?


「しかしだったら何でわざわざ俺を助けたんだ」

「それは、多分利用価値があると思ったからだと思う。お兄さん強いんだよね? 海賊とも渡り合えるほどに!」


 今度は少女が俺の手を握って聞いてきた。俺が強い、か――


「……まぁそれなりには出来るつもりだが、それで俺は何をすればいい?」

「明日、シノビンさんが神父様を引き付けておいてください。その間に僕たちが皆を連れてここから脱出します!」


 それが二人のお願いだった。しかしこの作戦には疑問がある。


「俺が引きつけておくとしてお前たちだけで逃げられるのか?」

「それは大丈夫です。密かに脱出ルートを確保しておいたので。それに――僕たちの中にも最低限戦える子どももいます」

「そうなのか?」


 ここで匿ってる子どもは年齢もバラバラだ。この二人も十歳前後といったところか。


「そういえば二人とも名前は?」

「あ、紹介が遅れてごめんなさい。僕はペデル。こっちは妹のグリルです」


 なるほどやはり兄妹か。


「二人は戦えるのか?」


 俺がそう聞くとペデルがナイフを取り出し両手に持った。


「それなりには……逃げる時は僕が皆を守ります」

「そうか。ならちょっと手合わせするかい?」

「それで――納得してもらえるなら」


 言うが早いかペデルが俺の横に移動しナイフを振った。速いだけじゃない気配も消せるのか。


 だが俺なら素手でも捌ける。二刀流で中々の連続攻撃だがある程度捌いたところでペデルが飛び退いた。


「凄いやシノビンさん。自信なくなっちゃうよ」

「いや。確かに結構凄いぞ。その年でそれだけ動けるんだからな」

「はは。ありがとうございます。妹も火魔法がちょっと使えるんですよ。これでどうですか?」


 グリルは魔法派か。ふむ、確かに逃げるだけならこれでも――

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