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第二百十六話 マーリンの要求

「これはマーリン様。一体どうされたのですか?」


 一人見張りの海賊のために姿を見せたマーリンにその場にいた者共が尋ねてきた。


 ギロリと鋭い視線を向けマーリンが返す。


「ふん。どうしたもこうしたもない。こしゃくにもわしの部下を利用してセイレン様に会おうとした不届き者がいたのだ。その報告に来た。さっさとそこをどけんか」

「え? そ、そんなことが?」


 海賊の一人が目を丸くさせる。


「何だ貴様。わしの言うことが信じられんのか?」

「い、いえ。ですがその不届き者はどこに?」


 両手を振って答える男。マーリンは鼻を鳴らし問いかけに答える。


「逃げられたわい。全く中々油断ならない奴だ」


 マーリンの知らせに一際大きな船をバックに立っていた海賊たちは随分と驚いていた。マーリンはそれほどまでの腕前だということか。


「とにかくわしはセイレン様の下へ向かうぞ」

「は。ということはマーリン様も船を出されるのですね」


 海賊の兵が聞いてきた。確か船長にはそれぞれ船が分け与えられていた。セイレンの船は海上にある為、歩いていくわけにもいかない。


「時間が惜しい。そこに小舟があるではないか。わしはそれでいこう」


 目の前には数人が乗れる程度の船があった。見回り用か何かかもしれないが海上の船に向かう程度なら事足りる。


「……つまり一人でいかれるということで?」

「だとしたらおかしい。一人ならマーリン様ならば飛んででもいけるはず」

「――貴様一体何者だ!」


 海賊たちの様子が変わった。マーリンがやれやれと嘆息する。


「空を飛んでか。これは失敗失敗。まぁそれならそれで――」


 マーリンの目が光った。途端に海賊たちがぽわんっとした顔になる。


「ではこの船は借りていくぞ」

「は、はい。マーリン――様」


 そして船着き場にあった船を一隻拝借し、マーリンがさっさと海に出る。


 ある程度進んだところで変化の術が解けた。姿を見せたのは蠱惑的な一人のくノ一――ゲンランだった。


(こっちにも中々の使い手がいたものね)


 ゲンランは、あの老獪な魔法使いを思い出しつつ考えていた。彼女はこれまでも様々な立場で色々な国に関わってきた。帝国ではハミットを名乗りメイドとして立ち回っていたこともある。


 その過程で自称凄腕の魔法使いと関わることもよく会ったがその多くは彼女を満足させるものではなかった。


 故にあのマーリンの腕前には素直に感心した。正直ちょっと本気で戦ってみようかと一瞬頭を過ぎったがやめておいた。


 簡単ではない上にこの場は相手のテリトリーだ。長引けば間違いなく不利になる。


 ならば何故わざわざ敵の懐に飛び込むようなことを、といったところだが、当初の予定が狂ったことが理由だった。


 本来の予定は正にマーリンに話したように帝国がやってきてるという話を信じ込ませるため。


 しかしそれも難しくなった。なら仕方ないと出戻り失敗したで済ませるのは簡単だったがゲンランにもくノ一としてのプライドがある。


 それにいざ戦うにしても敵の情報を知っておくことは必要だ。ならば海賊船の中でも一際大きなセイレンの船に乗り込めれば有力な情報も集まるかもしれない。


 勿論セイレンにみつかれば彼女とて無事でいられる保証はないが――


 そしてゲンランは途中から幻術で船そのものを風景と同化させ上手く巨大海賊船に乗り移ることに成功した。


 そして船の調査を開始するわけだが――


「ふふ。いい実験体が手に入ったものね。さてどうしようかしら」


 その途中で白衣の女とベッドに寝かされたマビロギを見つけた。


 何でこんなところに? と疑問符が浮かぶ。とは言えこのままではろくな事になりはしない。


 ただ、確かにハミットとして帝国に仕えていたゲンランだが今無理して彼女を助ける理由がないのも事実だ。ちなみにゲンランはマビロギの性別もとっくに知っていた。


「――ま、仕方ないわねリスクはおかせないし」

 

 そしてゲンランは温度のない瞳で一人そうつぶやくのだった――

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