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現代で忍者やってた俺が、召喚された異世界では最低クラスの無職だった  作者: 空地 大乃
第三章 水滸海賊団編

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第二百十四話 セイレンに呼ばれるマビロギ

「一体僕に用とは何だ?」


 マビロギは水滸海賊団大船長セイレンに呼ばれ船長室に来ていた。セイレンは基本的には自らが乗る巨大船アクアリベンジで待機している。


「何。お前はあの男を殺してくれた。その褒美をしっかりとくれてやってなかったと思ってな」

 

 マビロギをセイレンが讃えた。シノブを倒したことを言っているのだろう。


「フンッ。あの男との戦いは僕が望んだことだ。今更礼など不要だ」

「まぁそういうな。どうだワインでも?」

「僕は酒が苦手だ」

「ふむ、つれない女だな」


 グラスを手に問いかけるセイレンだったがマビロギは固辞した。セイレンが肩を竦める。


「話はそれだけか? それならもう戻るぞ」

「待て。実はもうひとつ話があってな。マビロギ貴様に確認だが――お前はあの男を本当に殺したのか?」


 ワインを一息で飲み干し、そしてマビロギを睨めつつ確認した。目つきがサメの如き鋭さに変化している。


「何故そんなことを?」


 マビロギの眉間に皺が寄る。一見すると不機嫌そうに思える態度だ。


「俺はこう見えて慎重でな」

「そうか。だとしても目の前で見ていただろう? 僕はあの男の心臓を射抜き死体を燃やし尽くした。それが全てだ」

「くくっ、実はそこが気になっていたのさ。何故あの時死体をわざわざ燃やしたのか? とな」

「言っただろう? 僕はあいつに恨みがあった。あれぐらいしないと気がすまなかったんだよ!」


 覗き込むような目でマビロギが答えた。セイレンは顎を手で擦る。


「そうか。だがな、そうなると妙でな」

「妙?」

「そうだ。実は我々も新しい船員確保の為に動いていてな。ターゲットには子どもも含まれている」

「……それがどうした?」

「その過程で協力者がいてな。定期連絡がついさっき届いたのだが――随分な怪我をした男を見つけたらしい。運んでみたところ命に別状は無かったようだが、その特徴を聞くにお前が殺した筈のあの男に似ているのだがさて、これはどういうことだ?」

「――たまたまだろうそんなの」

「この俺にそんな言い訳が通じると本気で思っているのか?」

「――そうか。だとしたらあそこまでやって生き延びたってことだな。しぶとい奴だ。だったら僕に任せろ今度こそ息の根を止めてきてやる」

「ハッハッハ。それも面白いな。だが俺は少しでも疑いを持った奴は二度と信用しないことに決めてるんだ。残念だった――」

「フラッシュアイ!」


 マビロギの手に目玉の魔物が現れ閃光を放った。彼女が魔石化して持ち歩いていた魔物だ。


 セイレンの目が眩んでいる内に、マビロギは踵を返し背中に翼を生やして飛翔した。低空飛行で加速しこの場から離れようとする。勿論背中の翼は張り付いている魔物の物だ。


「無駄だ」


 だが、前方のパイプからなんとセイレンが飛び出してきて逃げ道を塞いでしまった。


「俺は水のあるところなら自由に移動が可能だ。虫みたいに飛び回っても無駄なことよ」

「チッ――」


 通路に降り立ちマビロギが舌打ちする。


「諦めることだな。ま、安心しろお前にもまだ利用価値がある。白衣の女を覚えているだろう? あいつはなかなかいい趣味をしていてな。生物に改造手術を施したりも可能なのさ」

「そんな悪趣味に付き合ってられるか!」


 指で弾くようにしながら叫ぶと、蜥蜴の魔物が姿を見せ炎のブレスでセイレンを攻撃した。セイレンが炎に呑まれる。


「やったか!」

「そんなわけないだろう」


 セイレンから吹き出た水で炎はあっという間に消火された。セイレンには火傷一つない。


「七水遁・水来牟(すらいむ)


 セイレンが印を結ぶとドロドロの軟水がセイレンから伸びていきあっという間にマビロギを包み込み身動きを封じてしまった。


「馬鹿な奴だ。この俺に勝てると思ったか? ここは海の上だ。水場において水遁は無敵だ」

「随分な自信だな」


 正直マビロギからすれば水遁などの忍術は全く理解出来ない力だ。


 だが確かにこの男は強い。それはシノブとの戦いを見た時から知っていた。


「もう諦めたか?」

「どうかな? あんた舐め過ぎだよ。魔石像身!」


 ナビロギの声に反応してセイレンの足元の魔石が形を変えた。電撃バチバチと迸った鳥の魔物だった。


「さっき炎を喰らわせたときに弾いておいたのよ! やれ!」


 電撃を纏った魔物がセイレンに突撃する。バチバチと稲光が発生した。


「何のつもりだ? まさか水だから電撃に弱いとでも思ったか? そんなものあの霧隠でも使ってきた姑息な手だ」


 だが電撃攻撃もセイレンには通用しなかった。


「俺は水の性質を変化できる。そしてこれは」

「純水だから電撃を通さない、そういいたいんだろう?」

「――何?」


 ニヤリと口元を歪めるマビロギにセイレンの顔が曇った。


「やれ! ソルトスライム!」


 セイレンの足元に小さな魔石もまだ落ちていた。それが姿を変えセイレンを包み込む。


「そいつは弱い。だから魔石も小さい。それで見逃したね」

「……なるほどな。しかもそのスキルは死んだ魔物の魔石を使っている。だから気配を感じなかったわけか」


 セイレンが得心が行ったような顔を見せる。


「だがそれがどうした? こんなものすぐに吹き飛ばしてやるぞ」

「純水ってのは不純物がないから意味がある。だが、そいつは塩混じりのソルトスライム。それがお前の水を侵した!」

「な、そ、そうか!」


 セイレンがあの電撃のほとばしる鳥を見た。


「やれライトニング!」


 ライトニング、それがこの魔物の名前だった。そして電撃を纏ったまま二度目の突撃。ぶつかった瞬間さっきよりも更に激しい稲光が発生した。


「グォオオォオォオオォオオ!」


 セイレンのうめき声が聞こえる。そしてマビロギを拘束していた水も解けて消えた。


「あ、はは。どうやらなんとかなったみたいだ――」


 マビロギの目の前では大の字になって倒れるセイレンの姿があった。どうやら電撃で気を失っているようだ。


「……流石に死んではいないか。だけど今のうちに――」

 

 逃げることを考える。このまま殺すことは考えなかった。セイレンはマビロギにとってシノブと同じく不気味な相手だった。奇妙な力を使う以上下手に近づいては何が起きるかわからない。


「なるほど。そこで迂闊に近づかないあたりはまだ利口と言えるか」

「――ッ!?」


 マビロギの背中を水が貫いた。吐血し片膝をつく。


「そ、んな? 効いていない?」

「ふん。こっちの異世界人程度じゃこんなもんか。その場しのぎの浅知恵でしかない。さて、おい。そこにいるんだろう?」

「あらあら。流石に察しがいいわね」


 セイレンに呼ばれ白衣の女が廊下の影から姿を見せた。


「人体実験用のおもちゃが欲しいんだろう? そいつは好きにしろ」

「あらあら。これは楽しみね」

「ち、ちく、しょう――」


 こうしてマビロギはセイレンによって白衣の女に差し出されたのだった――

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