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第二百四話 言えること、言えないこと

 俺は分身として話せる範囲でカタリナに事情を伝えてやった。何故分身が出来たかは、魔法とだけ伝えておいた。


 無職の俺が魔法を使えたことに疑問は持たれたが、忍者であることを明かす権限が今の俺にない以上仕方ない。


「何か煙に巻かれたような話っすね。海賊が街を支配しているというのは由々しき事態っすが、それとシェリナ様が一緒にいるのに何の関係があるっすか?」

「俺からは言えないんだよ」


 ピサロが怪訝そうに俺を見てきた。


『お願いだから仮面シノビーを信じて上げて! 彼は正義のヒーローよ!』

「やっぱ信じられねっす! お前、姫様に何を吹き込んでるんっすか!」

「くっ! こればっかりは耳が痛い!」


 本体のやったことだが、いつの間にか妙なヒーロー扱いされたのも、本体が妙な設定持ち出したからだしな!


「皆様少し落ち着きましょう。今のお話を聞いていて思ったのですが、もしかしてシェリナ殿下は、あのまま帝国にいては、姫様にとって不都合な目に遭う可能性があったのでありませんか? そしてそれを解決するためにはどうしても帝都を出てこのハーフェンまで来る必要があった。しかしいざ来てみたら海賊によって占領されていたと」


 こいつ、中々鋭いな。そのあたりは流石忍者か。


 特にくノ一は情報収集能力に長けていたものが多かったし。


「そうっす! シノブは何も姫様を困らせるつもりだったわけじゃないはずっす! それに、一緒にいたあたしが証明するっす! シノブは姫様を大切にしたっす! 私にも優しくしてくれたっす! それこそ昼夜問わず大事にしてくれたっす!」

「……大切に、優しく?」

「昼夜問わず、大事に?」

「これは由々しき事態っすね――」


 カテリナとハーゼがギロリと厳しい目を俺に向けてきた。ピサロに関しては槍を構えてすぐにでも刺しに来そうだ。


「待て待て! お前ら絶対勘違いしてるだろう! あとハミット、面白そうに眺めてるなよ!」

「あらあら、つい。ふふっ」


 くっ、こいつこんな性格だったのか! 俺が困るのを見て楽しんでるな!


「お前たちいい加減にせぬか! 我が主がシノブなどという女たらしの助平を相手するわけがないだろう! こやつは自分を狙いに来た魔物使いの女を押し倒し胸を揉みしだくような不埒な男なのじゃ! そんな男にこの我が手出しなどさせぬのじゃ!」

「うん、よしネメア。お前後で覚えてろよ」


 その後、とにかく誤解を解く俺だが。


「……殿下。やはりこのような性欲まみれのゲス野郎に姫様を任せてはおけないと私は思います」

「だから説明しただろう! 今!」


 ハーゼが汚物を見るような目で俺を見てるし!


「……近づくな。汚れる。カテリナ様もご注意を。触れただけでも孕まされかねません」

「安心しろ。そんな真似したら切る!」

「話を聞け!」

「まぁまぁ。おふざけもその辺で」


 ハミットが間に入ってきた。こっちは何もふざけてないんだがな。


「とにかく現状をまとめればこっちとしても本体がどうなったかがわからないと動くに動けないといったところだ」

「……一つだけ聞く。お前がこれからやろうとしていることはシェリナにとって大事なことなのか?」

「そうだ」


 そこだけは答えておいた。理由は言えないが、ここまでわざわざやってきたのはシェリナの首飾りに掛けられた呪いを解くためでもある。


「ふむ、だとしたら――ただ待っているだけではあまりに消極的すぎないか?」

「あぁ、俺もそれは思っていた。ただ、本体がやられたことを考えるなら俺達だけで無策で乗り込むわけにもいかないと考えでもある」

「ならば、私にいい考えがある」


 カテリナがそう言って一つ提案してきたわけだが。


「お前も知っていると思うが、私は帝国の姫だ」

「ま,そうだな」

 

 姫騎士と呼ばれているぐらいだし。


「この立場を活かそうと思う。帝国から視察に来たと告げて潜入するのだ。占領している海賊たちも、帝国からの視察をいきなり襲うような無謀な真似はせぬだろう?」


 カテリナが俺の意見を聞いてきた。

 ……一つの手としてはありと思えなくもない。ただし相手がただの海賊ならばだ。水滸海賊団はやり口がかなり強引だ。帝国からの視察だから手を出さないとは言い切れない。

 

 ただ、全く駄目というわけじゃない。それなりに説得力のある材料を用意できれば――


「ハミット――」


 その時、俺の察知範囲に踏み込んできた連中がいた。ハミットに呼びかけるがどうやらこっちも気がついているようだ。


「えぇ、わかってるわ」

「? 何だ? まだ話の途中だぞ?」

「それは後だ。こっちに近づいて来ている連中がいる――」






◇◆◇


「な、何なのですかお前たちは!」

「それはこっちのセリフだ。お前らこそ一体なんだ?」

「私達は旅の商人で……」

「荷物を見る限り確かにただの商人なようだな」

「ふむ、おっさんとおそらく娘が、二人? それに猫か」

『グルルルルウウウ!(誰が猫じゃ!』

「私達はただこの辺りまで商売しに来ただけです。どうかお見逃しを」

「そうはいけねぇな。この辺りは俺たち水滸海賊団の縄張りなんだよ」

「とりあえずおっさんはいらないか、始末しとこうぜ」

「女は連れていくか。だけど、その前にちょっとは楽しむか」

「おいおい、いいのかよ仕事中だろ?」

「少しぐらいいいだろう。大体町じゃ船長らが煩くて出来やしないからな」

「じゃあ、俺はそっちの――」

「全く。やっぱ海賊ってのはゲス野郎の集まりかよ」

「「「ハッ?」」」


 そして俺達は背後から忍び寄ってやってきた海賊三人を叩きのめし気絶させた。


 気配の消し方からして忍者だなとは思ったが、やってることは盗賊と一緒だし、忍者としてもレベルが低い連中だった。

 

「……姫様を囮にするなんて」

『わ、私が望んだことなので』


 最初から囮作戦は考えていた。俺やハミットでいいかなと思ったのだが、パーパとムスメが商人の自分たちのほうが怪しまれないと囮役を買ってくれた。そのうえでシェリナも一緒に残ると言ってきた。


 何か役に立ちたいと思ったんだろうな。懸念はあったがネメアも残ると言ってくれたし、俺達も見守っていたから絶対に手を出されるつもりはなかったがハーゼは不満そうだ。


「そういうなハーゼ。私も心配だったが結果として上手くいった」

「こっちは気が気じゃなかったっすけどね」


 槍を肩に担ぎながらピサロが言う。


「……それでこいつらどうする? 拷問なら任せて欲しい」

「あいつ、結構物騒だな」

「暗器使いっすからね。あのマントの中からとんでもない拷問器具を出してきて危うくやられそうになったことも数えきれない程あるっす」

「お前、しれっととんでもないこと言ってるな……」


 そこまで男嫌いなのか。ピサロも良くここまで無事だったな。


「とにかく、こいつらから聞ける情報は聞いておこう。そのうえで作戦を更に練っていきたいところだ」

「それなら私に任せて貰える?」


 情報収集といえばやっぱハミットが出てきたか。ハーゼが残念がっていたが、ここは忍術の方が早いかもしれない。


「問題はこいつらに何か仕掛けられてないかだが」

「大丈夫だと思うわよ。私感知系も得意だから」


 どうやら既にハミットがこの連中にあやしい点がないか調べてくれたようだな。


「さて、起きて頂戴」

「ん、ハッ! お、お前ら!」

「どういうことだ! 商人連中だけじゃなかったのか!」

「悪いけどこちらの素性は明かせないわ。でも、この状況を見れば自分たちがどれだけ不利な状態かわかるわよね?」

「くっ――」

「ねえ、取引しない? 私達、ハーフェンの今の状況を知りたいの。後は、貴方達海賊の仲間のこととかね」

「へへっ、教えたらあんたがいいことしてくれるのか?」


 ハミットに欲望丸出しの視線を向けながら男が言う。ハミットは見た目ならかなり目を引くしな。何かエロいし。


「……シノブ、何考えてるっすか?」

「へ、い、いや別に――」


 何かマイラの視線が痛い……


「そうね。考えてあげてもいいわ」

「そうかい、だったら、なんて言うかよたーこ! 誰が情報を吐くか! それよりも覚悟しておくんだな! 俺らが戻らなければ仲間が怪しむ。少しは出来るようだが、うちの船長や副船長が出てくればお前らなんて一発よ! そしたらあんたみたいなエロい女は欲望のはけ口にとして散々利用されるだけさ!」

「あらあら、清々しいぐらいのゲス野郎ね。ま、こっちも最初からサービスする気なかったし、強制的に吐かせたけど」

「な、なんだ――と……」


 そして一旦目が覚めた筈の海賊共はハミットの幻遁によって意識を奪われ知っている情報を全て吐き出してくれた。


 ふぅ、しかしちょっとびっくりしたけどな。本当にその、サービスする気だったのかなと――

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