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第百九十七話 霧隠 対 水滸

「くそ、水遁使いかよ。しかも水のないところでここまでの水遁を使うとはな」

「ふん、霧隠――まさか因縁の貴様らにこんなところで出会えるとはな」


 奴の忍術には俺も少々驚いた。というか事前情報にはあったが、海賊の親玉が本当に忍者とはね。


 しかし、こいつ妙なことを口走ったな。因縁だと?


「言っている意味がわからないな。なんだよ因縁って」

「……忘れたとは言わせぬ! 貴様らが水滸の里にした仕打ちを!」

「は?」


 水滸の里? おいおい何だよそれ。確かに忍者には里があり、あとは家がある。うちみたいに家族だけでやってるのは家で、俺は霧隠家の忍者だ。里はまぁ伊賀とか甲賀とか大きい集団だ。


 だけど、水滸の里なんて聞いたことがないな。というかそもそもこいつはどうやってこの世界に来たんだ?


「よくわからねぇけど人違いじゃないのか? 俺はあんたなんて知らないし」

「知ってる知らないの問題ではない。貴様が霧隠の人間であることそのものが罪なのだからな」

 

 凄いこと言い出したな。つまり俺が霧隠家だから問答無用で殺すっていうことか? 酷い話もあったもんだ。


「そんな理由で殺されたんじゃたまったもんじゃねぇな。火遁・烈火連爆!」


 印を結び火遁で攻撃。これは烈火連弾よりも強力で一発一発が着弾すると激しく爆発する。


 それを思いっきりくれてやった。容赦なく数十発の火の玉が弾幕となり襲いかかり目の前が赤く染まり爆発音が重なり合う。


 さて、これでどうかな?


「ぬるい炎だ。この程度でやれると思われるとはこのセイレンも舐められたものだな」

「チッ、水で防ぐかよ――」


 爆発で発生した黒煙が薄れていくと、そこには平気な顔をしてセイレンが立っていた。何やら粘性の水の壁に守られていやがる。あれが俺の火遁を防いだのか。


「水遁・海蛇縛り」


 セイレンの足元からニョロニョロと水の蛇が伸びてきて加速して俺に近づいてきた。


「こんなもの――」


 霧咲丸を抜いて向かってきた蛇を切り裂く。


「水遁・水鳥乱舞」


 今度は奴の手から水で出来た鳥が大量に飛び出して襲いかかってきた。たく、どんだけ水を使ってるんだ。港町とはいえすぐ近くに水があるわけでもないのによ!


「土遁・石壁の術!」


 印を完成させ地面に手をつくと目の前に石の壁が生まれ鳥の進行を妨げた、筈なのだが水鳥が当たる度に罅が入り亀裂が走った。これはもたないか。だが壁ができて相手から俺は見えていない筈だ。ならば――背中を取った!


 目の前に後ろ向きのセイレンがいた。正確には俺が瞬時に後ろをとった。時空遁・瞬間移動の術。これにより石の壁は消失しただろうが問題ない。


 俺は背後からセイレンに斬りかかる。だが、その攻撃も妙に弾力のある壁、というよりこれは膜だな。それによって防がれた。


「面白い忍術を使うが無駄だ。そんなものは通じない」

「そうかよ、だがお前の弱点ははっきりしたぜ」

「何?」


 相手は水遁使いだ。逆に言えば全てが水、ならば手はある。印を結び――


「雷遁・紫電一閃!」


 そう水の守りなら雷が通る。なまじ水に極振りしたのが仇になったな。霧咲丸に雷を集め、すれ違いざまに紫電の一閃を叩き込む。


 バチバチバチバチッ! と電撃の迸る音が俺の耳を撃つ。これでダメージは通ったはずと奴を振り返るが。


「全く残念な男だ。まさか俺が水遁使いだから雷が通るとでも思ったか?」

「なん、だと?」


 薄笑いを浮かべ平然と立っていた。これも通じないだと? 馬鹿な、水は雷に弱い。忍術の属性にもそういったものが存在する。だがこいつは全くダメージを受けた様子がない。


「不可解と言ったところか? 俺からすれば水遁使いが雷に対策するのは当たり前のことだと思うがな」

「対策だと?」

「そうだ。汚れなき水は雷を通さない。俺はそういう風に水の性質を変化させた。だから貴様の雷など効きはしない」


 汚れなき水は雷を通さない? そうか!


「純水ということか――不純物のない水。確かにそれなら雷は通さないな」

「そういうことだ。さて、次は俺から攻めさせてもらうか。最速の水でな」

「最速の水だと?」


 セイレンが不敵な笑みを浮かべ、人差し指を立てる。そこに水が集束していくのがわかった。


「知っているか? 水に強力な圧を加えると、圧倒的な貫通力を生む」

「は? 何を馬鹿な――水で貫通なんて不可能だぞ」


 水遁は本来そこまで攻撃に向く術ではない。勿論強力な水遁は怒涛の水の流れで相手を押しやったり水で流したりそれ相応の衝撃を生むが、攻撃の効果はある程度限定される。


 こいつは水に高圧を加えて威力を高めると言っているようだ。だがウォーターカッターなどで勘違いされがちだがあれは別に水だけで切っているわけではないし水圧だけで貫通など通常は不可能――


「フンッ!」

「ぐはっ!?」


 だが、そんな俺の考えを打ち砕くように奴から放たれた水によって俺の肩が撃ち抜かれた。ぐっ、これは、確かに貫通している。だが、馬鹿な水遁で貫通なんて!


「くそ、なんでこんな」

「はは、どうした? 水で貫通など不可能じゃなかったのか? さぁまだいくぞ」

「させるか金遁・鉄壁の術!」


 石壁より更に硬い鉄の壁を生み出した。だが、指から発射された水は高速で鉄の壁を突き抜け、全身に痛みが駆け抜ける。


「残念だったな」

「はぁ、はぁ、くそ、水遁でなんでそんな貫通力が……」

「わからないか? ならば教えてやろう。さっきの純水もそうだが俺は水の性質を変化出来る。そして今使ったこの術の名前は水遁――硬水閃」


 水遁――硬水閃? 硬水……ハッ!


「くっ、そうか硬い水、水を硬水に変化させた、だからこれだけの速さと貫通力を生み出したってわけか……」


 うっかりしてたな。日本ではほぼ軟水で硬水は馴染みが薄い。だが確かに硬い硬水なら高い貫通力も期待できる。


「わかったようだな。そしてこれを上手く利用すればこんなことも可能だ。水遁・水輪斬!」


 手を翳した奴の頭上に巨大な水の円盤が現出した。激しい回転音が耳障りに感じる。


「さぁ、避けれるなら避けてみろ!」


 セイレンが水の円盤を投げつけてくる。だが、硬水閃ほど速くはない。これなら避けられる!


「硬水閃――」

「がっ!」


 だが俺の動きを予測したように指から放たれた水が俺の膝を貫く。


 畜生が、しかも水の円盤は軌道を変えてまた俺に向かってくる。しかしそれを避けると硬水閃が俺を射抜く。


「さぁどうした? それにばかり気を取られていたら私の高圧の水がその身を貫いていくぞ!」

「調子に乗るなよ――霧隠の術!」

 

 霧咲丸を指でなぞると同時に霧が辺りに充満した。とにかく先ずは相手に狙いをつけさせない必要がある。俺はこの霧の中でも視界が確保できる。ここから、とにかく突破口を切り開かないと――

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