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現代で忍者やってた俺が、召喚された異世界では最低クラスの無職だった  作者: 空地 大乃
第三章 水滸海賊団編

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第百九十話 サハギンの根城を叩け!

感想や誤字脱字報告に感謝です!

「オラオラ! 邪魔だ邪魔だ! あたいの前にいるやつはこの斧でぶった切ってやるよ!」


 なんとも頼もしいことだな、とケントは斧を振り回しながら前を行くバーバラを見て感心していた。


 川を飛び越えた先には大量のサハギンがいた。この先に冠種がいるのは間違いないだろうが、しかしそれほどの大群を前にしてもバーバラは全く意に介すことなく、サハギンの死体が量産されていく一方だった。


 これは俺の出る幕がないな、そんなことを考えるケントだったが、敵もそう甘くはなかった。何せここはサハギンの王がいる本拠地、その守りに回されたサハギンの量も当然多い。


 その数は先に進むごとに増していき、遂にはバーバラを完全に囲んでしまう程の圧を持って攻め入ってきた。


 その数、ざっと見ても五百以上は確実だ。斧を振り回し続けるバーバラだが、やはりこの量になると中々に厳しい。


「……やっと俺の出番が来たか」


 いよいよ満を持してケントが動き出した。勿論サハギンの群れはバーバラだけではなくケントも排除しようと動き出していたわけだが、群がるサハギンに向けてケントの左が次々と打ち込まれていく。


 最速のパンチ、それがジャブだ。ジャブを制すものは世界を制する。その言葉を地で行くように威力と速さを兼ね備えたケントのジャブによって、サハギンが次々とマットに沈んていく。


 尤もそれは地面がむき出しのマットだが――ちなみにサハギンは決して弱い魔物ではない。それどころか本来サハギンはその鱗のおかげで防御力は高いとさえ言われている魔物だ。


 サハギンの鱗はスケイルメイルの材料にされることだってある。だが、ケントのジャブの前ではその鱗も意味をなしていなかった。


 ジャブが突き刺さった箇所から容赦なく鱗が粉々になった状態で飛び散り、中の肉を抉る。それほどまでにケントの拳は強力なのである。


 気がついてみれば、バーバラを囲むサハギンの量も減っており、その斧でかるがると吹き飛ぶサハギンの姿がいっそ清々しいぐらいであった。


 五百を超すサハギンの兵士を倒した二人は更に先へと突き進む。


 暫く進むと小高い丘が左右に見えてきた。丘の上にはサハギンが陣取っている。手には銛が握られており、それを一斉に投げ出した。


 二人に向けて銛が雨のように降り注ぐ。


「おいおい、今度は槍の雨かい」

「……銛だな。多いが大丈夫か?」

「あたいを誰だと思ってるんだい。そっちこそ大丈夫かい?」

「……問題ない。俺は世界チャンピオンになる男だ」


 すると、バーバラが頭上で斧を回転させ、ケントはデトロイトスタイルでウィップジャブを繰り出し、降り注ぐ銛を全て撃ち落とした。


「でも、この量はうざったいね」

「……なら――」


 黒目を素早く左右に動かし、ターゲットを定め、ケントは拳を握りしめた。


 そして、フンッ! フンッ! と左右に一発ずつ拳を打ち込んだ。螺旋のような回転を加えた拳によって生じた拳圧が突き進み、左右の丘を崩れ落ちる。


 丘の上にいたサハギンもまとめて崩落に巻き込まれ、そのまま動かなくなった。


「やるねぇ! 大した威力じゃないか」

「……いや、これはただパワーに任せただけのパンチだ。あのときの感覚とは程遠い……」


 ケントの言うあの時とは、白騎士を相手にしたときのことだろう。確かにケントの今の一撃はパンチを放った際の衝撃波によるものだ。


 だが白騎士の時には何か内側から湧き上がる力を感じた。それはこの世界におけるオーラともまた違ったものだ。


「中々難しいものだね」

「……あぁ、だが今はこれで良しとしよう。先を急がないとな」


 ケントとバーバラが更に進むと、いよいよサハギンの根城と思われる洞窟が見えてきた。


 だが、その前には川が流れており、その正面にサハギンがいた。しかも雑兵だけではなく、ジェネラルとロード、それに更に大きく貫禄のあるサハギンも控えている。頭には王冠が乗っていた。


「後ろのはもしかしてキングかい?」

「……だとしたら、トップはエンペラーの可能性が高いってことか」


 冠種は通常キングが出現しただけでも下手したら領地を失いかねないほどの脅威だ。


 キングでもそうなのだからエンペラー級ともなれば本来軍隊が出撃してくる程でもある。

 そんな相手にたった二人で挑むなど正気ではない、と普通なら思えるものだが。


 だが、二人は笑っていた。


「……それならこれは前哨戦ってところか」

「たぎるねぇ。先ずはキングからとっととやってしまおうかい!」


 一直線に走る二人。するとサハギン達が一斉に口から水を吐き出した。本来ならたかが水だが、サハギンは吐き出す水に鱗を混ぜている。これによりただの水鉄砲も凶悪な兵器と化すのだ。


 だが、それがどうしたと言わんばかりにバーバラが斧を投げ、ケントはジャブの拳圧で離れたサハギンを次々と射抜いていった。


 バーバラの投げた斧は回転しながら突き進み、サハギンを回転に巻き込んで切り刻んでいく。そしてある程度進んだところで手元に戻ってきた。


「どうだいあたいのブーメランアクスは!」

「……器用だな」


 ケントが感心すると、ヘヘッとバーバラが鼻をこすった。


「ギョギョギョッ!」


 すると後ろに控えていたサハギンキングが両手を広げ、かと思えばケントとバーバラが泡の中に閉じ込められた。


「これは、魔法かい!」

「……弾力があるな」


 ケントが軽く泡を殴ってみるが拳は泡に弾かれるだけだ。

 そんな二人をみてチャンスと感じたのか、ロードとジェネラルが迫ってくる。

 

 この泡は恐らく内側からは破れなくても外側からは簡単に破れるのだろう。ロードもジェネラルも泡ごと二人を始末してやろうと意気込んでいるようにも思える。


「……だが甘い」

「本当だね!」


 確かにちょっと殴ったり切った程度では破けなかった。だが、力を込めたらどうなるか?


 正解は破けるだ。そして泡から出てきた二人は迫ってきたロードとジェネラルをあっさり撃破した。


「ギョーーーーーー!」


 サハギンキングが怒りの声を上げ、口から大量の水を吐き出した。サハギンの水鉄砲とは比べ物にならず、鱗以外にも土砂が混じりまるで大雨によって発生した濁流のようである。


「……むぅ」


 水圧と激しい水の流れでケントとバーバラの動きが鈍る。立っている地面も濁流によって崩れ泥となり足場が非常に悪い状況だ。


 尤もこれが二人でなければとっくに濁流に飲み込まれ命はないであろうが。


「ケント! 肩を借りるよ!」

「……肩? そうか!」


 バーバラの意図を理解したケントは、彼女をサポートするため腰を落とした。この流れの急な中でもそれが出来るのはさすがの足腰である。


 そして、屈んだケントの肩にバーバラが飛び乗り、ケントが立ち上がった勢いも利用して大きくジャンプ。


「頭がお留守なんだよ! ハァアァアアアァアア!」


 そして空中から迫るバーバラにサハギンキングがギョッとするが既に遅し。


「グレネードインパクトーーーー!」


 空中から振り下ろした斧刃によって、サハギンキングの身は見事に開きにされ、更に斧が地面に叩きつけられた時に生じた衝撃で生き残っていたサハギンの雑兵もまとめて吹き飛ばされた。


「へへ、どんなもんさ」

「……やるな」


 振り返り、いい笑顔で親指を立てたバーバラにケントがニヤリと笑みを返し、そして二人はいよいよサハギンの根城へ踏み込んでいった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >何か内側から湧き上がる力を感じた 新たなる道、第5の道拳闘道の拳気かな?w
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