第百七十三話 オーク狩り
「領主のレッドビアード男爵から依頼を請けたもんや。このあたりに出没する魔物を退治すればええんやな?」
「あぁ、昨晩も何体か確認されている。駆除対象はオークだ。どうも群れを作ってどこかに潜んでいる可能性もある」
水門横の砦についてからの話はスムーズだった。あの男爵も言っていたが、そろそろこのあたりで増え始めたオークを駆除する為の傭兵や戦士を募集するつもりだったようだからな。
話は砦の外で行われている。グレイトブリッジに向かうまでに見た洞窟のような砦と異なり、ここはしっかりとした石造りである。
水門も基本は石造りだが、門の部分は観音開き式の鉄門であり、状況に応じてハンドルで開閉してるようだ。
それにしても、魔物というのはオークだったのか――
「だけど、オークはあの砦の騎士とか兵士じゃなんとかならなかったのか?」
兵士から話を聞いた後、俺達は砦を後にしたが、その道すがら疑問が口から漏れた。
「ま、難しいやろな。あの男爵が囲ってるキープブリッジ騎士団いうんは、名前こそ大層やけど、兵力は四、五十ってとこや。その内、三分の一程度は城に詰めてるのと町の警備にあてとる。砦に詰めてるのも水門の管理や砦の守りを除けばそこまでオークの駆除に人数は割けんやろう。全く何もやってこなかったわけちゃうんやろけど、むしろいざという時のために砦と水門の守りを固めておきたいってとこやろしな」
いざと言うと、オークが群れで攻め入って来たときって事か。オークはゴブリンよりも更に知恵が回るらしいからな。
「それにしても、まさか着いてすぐに仕事に掛かることになるなんてな」
「もう大分暗いっすねぇ」
砦を後にしてからは、早速狩りにいくで! と張り切るミキノスケに付いていく事となった。
オークの狩りがメインとなるので、これまでのように山道をただ歩いているというわけにもいかず、自然と森の中へ足を踏み入れていく事になる。
既に時間も時間だけに、空気がひんやりしていて、薄着だと肌寒いぐらいかもしれない。
周囲を木々に囲まれた空間だと空も生い茂る葉でカーテンとなり、より暗さが増す。
マイラはアブラソメビに火を灯す手も考えたようだが、何かの拍子に引火しては大変だという点と、炎の明かりでオークに見つかる可能性もあり得るので却下とした。
「しかし、オークは夜行型だったんだな」
この世界のオークは見たことがないが、イメージでは二本足で歩く豚だ。尤も本来のオークは別とも聞くが。
「正確には夜も動けるが正解やな。連中は鼻も利くし、昼も夜も関係なしや。ただ、砦周辺は敢えて夜を狙って様子を見に来てるのかもしれへんな」
「つまり、オーク側も攻め込むつもりはあるって事か……」
「オークは血肉を好む魔物やからな。それにゴブリンやオークみたいな連中にとって人間は、食料としてだけやなくて、繁殖の道具にも役立つ。お得すぎて襲わない理由がないやろ」
笑顔で中々とんでもないことを言う。
まぁ、ゴブリンのときの惨状を見ているから言っている意味は判るけどな。
それにしても本当、人間にとっては有害でしか無いな。
「でも、闇雲に歩いていて大丈夫なんっすか?」
「そうだな。正直今の話を聞いていると、砦の近くに現れるなら、待ち伏せしておいた方が良かったんじゃないか?」
「そこは安心せぇな。わいがあてもなく適当に歩いていると思う取ったら大間違いやで。実はな、もうとっくにそれは事前にしとるんや。そんで群れの場所もとっくに把握しとる」
なんてことがないように言ってのけるミキノスケに、俺は少々驚いた。
「仕事が早いな。でも、それならむしろ騎士団に教えたほうがよかったんじゃないか? いくら人数を割けないといっても、群れの場所がわかるなら――」
「何いうとんのや。そんな事したらわいらの手柄にならへんやろ? あんはん目的を忘れたらあかんで」
あ、と思わず声が漏れた。そうだ、俺達はあの水門を開けてもらいハーフェンに向かう必要がある。
その為にはオークの群れを撃退して、あの男爵に納得してもらわないといけないんだ。
だけど騎士団を頼ってしまったら、その件もうやむやにされる可能性がある。
「どうやら理解したようやな。ま、そんなわけで、おそらくそろそろオークともご対面となるで。とりあえずそっちの嬢ちゃんは捕まらんようにな。あんはんみたいな可愛らしいおなごが捕まったら、悲惨な事になるのは間違いないやろし」
「か、可愛いと言ってもらえるのは嬉しいっすが、オークに好かれるのは勘弁して欲しいっす……」
マイラは小さな体をブルっと震わせた。それにしてもシェリナは連れてこなくてよかったな。
ネメアがいるとはいえ、もしものことがあったら目も当てられない。
『グウゥウオオ!』
「おっと、早速おでましやで」
そんな話をしていたら、突如藪の中から丸太のような腕が伸びてきて、手に持った棍棒でミキノスケに殴り掛かる。
が、小さく跳ねてそれをあっさり回避。だが、今度は逆側から飛び出してきたオークが棍棒を横に振り抜いた。
「チョンワッ!」
だが、背中を思い切り反らし、二体目のオークの攻撃も回避。その勢いを利用し、回転しながら跳ね上げた足をオークの延髄に叩き込んだ。
「グゥウ……」
両膝をつくオーク、マイラと目配せし、俺は残ったオークに針を連射。
マイラは膝をついたオークの脳天を狙ってアブラソメビを振り下ろす。
これで二体のオークは死んだ。
「おぉ、あっさりやな~やっぱわいが見込んだだけあるわ」
「いや、最初の蹴りも大したものだったぞ」
「そうっす! あの一撃でもうこっちのオークは身動き取れずって感じだったっす!」
「ほなら良かったで。わいだけ武器無しで役立たず言われんかと心配だったんや」
ガハハッと笑い声を上げる。
しかし、役立たずなんてとんでもないな。
ステータス
名前:オーク
レベル:20
種族:魔物
クラス:人獣系
パワー:380
スピード:150
タフネス:500
テクニック:180
マジック:0
オーラ :80
スキル
異種交配、絶対受精、精力増大、豚骨大打撃、強制淫行、夜目
称号
強姦豚人
オークのステータスはこんな感じだったが、このLVにしてはタフネスがかなり高い。
それを足だけで戦闘不能にまで追い込んだんだ。
しかも本人は全くの余裕の体である。俺の方も針に見せかけた手裏剣で倒したけど、結構急所に打ち込んだしな。
しかし、無手でこれなら、武器を持ったらどれほどの強さなのだろうか。
「あ、そや! このオーク、あの犬の餌に丁度えぇかな?」
そんなことを考えてたら、ミキノスケがとんでもないことを口走る。
チラリとオークの亡骸に目を向けるが。
「いや、コレは正直……」
「そ、そうっすね……」
マイラも顔をひきつらせている。
俺からしてもイメージと少々異なる、というか、何か中途半端だ。
このオーク確かに鼻と耳は豚なのだが、それ以外は髪の毛がない鬼といった様相である。
下顎から湾曲した牙が二本飛び出してたり、そういったのがより強面に拍車を掛けている。
筋骨隆々でやたら逞しく、肉も硬そうだ。そもそもこの見た目である程度の知能がある魔物を食おうとは思えない。
豚要素は鼻と耳とステータスにある豚とついたスキルや称号だけだ。
「そもそもオークはゴブリンと一緒で、食材にしたくない魔物ベストスリーに入る程っす……」
そんなのがあったのか! 誰が決めたんだそれ!
「とりあえず、魔石だけ回収しておくか……」
ちなみにミキノスケは魔石には興味がないとか。だからとりあえず俺の方で保管した。
その後も何体かのオークを倒して歩く。先に進むほど、数も増していったのだが――
「ゴリゴリゴリーー!」
「こ、このオーク! 俺ばかり狙ってきて! てかオークなのかよこれ!」
「ブハッ! 随分と好かれたんやな~」
笑ってる場合か! くそ、こいつ、オークらしいけど、なぜか首から下がゴリラだ! こうなったら、看破の術!
ステータス
名前:ゴリゴリオーク
レベル:28
種族:魔物
クラス:人獣系
パワー:480
スピード:150
タフネス:700
テクニック:200
マジック:0
オーラ :250
固有スキル
同性強孕
スキル
増強、狂雄愛、強制雄襲
称号
雄喰らい
こいつはヤベェ!




