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現代で忍者やってた俺が、召喚された異世界では最低クラスの無職だった  作者: 空地 大乃
第二章 それぞれの旅路編

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第百五十五話 潜む敵

更新再開です。

※タイトルとあらすじを変更してみました。

 霧の中、視界は最悪と言っていいものであった。

 目だけで見ていると、一メートル先も確認するのが厳しいほどに暗い。


 しかも特殊な霧のようなので、単純に目が慣れればいいというものでもないようだ。

 つまり霧の中では視界を確保する方法がない。


 おかげでマイラもかなり不安そうだ。何せ松明代わりに掲げている、炎を灯したアブラソメビも全く意味をなしてない。


「うぅ、真っ暗っす。これじゃあ、何をどう調査していいかわからないっす」

「まぁこの状況じゃな、仕方ないだろ」

「ふぇ! な、なんっすかなんすか!」


 とにかく、この状況じゃちょっとしたことで逸れてしまいかねない。

 一応気を遣ってはいるが、念のため、マイラの手を握って逸れないようにしておく。


 すると、マイラが妙な声を上げた。


「いや、何だと言われても、逸れないように手を握ってるんだが?」

「ふぇ? あ、そ、そうなんっすね。そうっすよね……」


 ホッとしたような、残念なような、そんな良くわからない感情を見せる。

 

 とにかく、進む時はこれでいいとして、戦いの時はそうだな。


「イズナ、戦いになったらマイラをサポートしてやってくれ。イズナならこの暗闇の中でも俺を見失うことはないだろうしな」

「ウォン!」


 イズナが任せておいて! と言わんばかりに一吠えした。

 イズナには鋭い嗅覚と聴覚があるし、気配にも敏感だからな。


「……何か、あたしだけ役立たずな気がしてきたっす」

「大丈夫だ、マイラは気にせず敵が現れたら魔法でも何でも撃ちまくれ。こっちに来ても俺躱せるし」

「……その言い方、何か微妙に傷つくっす」


 何でだ? 当然の事を言ったまでなんだけどな。

 

 まぁとにかく、実際俺が手を握って進んでるのは、この状況でも周辺の状況は把握しているからだし、暗いというだけじゃ正直移動の妨げにはならない。


 それにしても、この霧の中でもやっぱり魔物はしっかり俺達の位置を把握してくるな。


「マイラ、2時の方角から魔物の群れが近づいてきてる。魔法が可能なら先制攻撃頼めるか?」

「任せるっす!」


 マイラは詠唱を開始、そして俺の言った場所に向けて、魔法を行使した。


「ファイヤーボール!」


 2時の方角へ大きな火の玉が飛んで行く。間もなくしてソレが魔物、ブラックウルフに着弾し派手な爆発音を残した。 

 

 魔物の群れも流石に見つかると思っておらず油断したのか、無防備に魔法を受け予定通り一掃された。

 

 そして俺は俺で、前後から挟撃してきたブラックウルフを避け、武遁で作り出した棒手裏剣で串刺しにしていく。


 固有スキルの闇隠れで完全に闇の中に溶け込んでいたが、気配までは完全に隠しきれていなかった。


 それではいくら姿を消しても一緒である。全く問題にならない。


 それはイズナにも言えて、特に犬特有の嗅覚で闇の中でもブラックウルフの位置は完全に掴んでしまっている。


「ウオォオオオォオォオオオン!」

「――ッ!?」


 イズナの正面にいたブラックウルフの動きが止まった。

 イズナが新たに覚えた【振吠(しんはい)の術】だ。強烈な吠え声で、空気を振動させダメージを与えた上、動きを一時的に止めてしまう。


 勿論、効くか効かないかは相手次第というのもあるが、ブラックウルフには十分通じたようだな。


 あの術はどちらかというと動きを止めることのほうが重要だからな。

 その上で、イズナが脚の止まったブラックウルフ目掛けで毛を連射していく。


 硬質化した毛を飛ばす【毛針の術】だ。連射が出来るから集中して当てることが出来れば十分な武器になる。


「ウォン!」

「こっちすね!」


 ブラックウルフの相手をしながらも、イズナはマイラのサポートを忘れない。

 彼女に近づいてきた獣共は、炎の乗った剣戟で見事に消し炭にされていった。


 しかし、出てくるのは本当ブラックウルフばかりだな。次元収納にも既に遺体が二十以上入っている。


 油断する気はないが、ブラックウルフ自体はもう脅威ではないな。

 

 ただ、ブラックウルフだけいくら片付けても意味はない。そもそもこのダークミストの発生原因を調査することの方が重要だ。

 

 それに、どうもこのブラックウルフ、倒しても倒しても霧の中でいくらでも再生しているように感じられる。


 しかし、奇妙だな。さっきから偵知の術も使っているが、ブラックウルフ以外にこれといった何かは見つかっていない。


 霧を発生している原因は霧の中にはないという事だろうか?

 もしかしたら魔法的な何かか?


「なぁマイラ。こういう霧を魔法的に発生させる手はあるのか?」

「う~ん……こんな妙な霧のことは知らないっすが、シノブがやってるような霧を発生させる魔法なんかはあるっすよ。大体は一時的な目眩ましっすが、戦争があった時は自軍を有利にするために大規模な霧を長時間発生させ続けた事もあったようっす。でも、その場合通常は範囲内に術式を描いたりするのが普通っすね。勿論隠蔽はするようっすが」


 なるほど……でも一領地でわざわざそこまですることはあるだろうか?

 それに術式ならある程度魔力の流れみたいのが発生する筈で、それなら偵知の術でも何かしら感じ取れると思うんだが――


「て! またか、うざってぇ!」

「うぅ、ちょっと疲れてきたっす」

「ク~ン……」


 そう、このブラックウルフは群れで行動するタイプだから、出てくる時は常に複数。

 

 しかもこの霧の中では倒しても倒してもそれほど間をおかずやってくる。

 ブラックウルフそのものは既に苦戦するような相手ではないのだが、こうも連戦が続くと疲れが溜まっていく一方だ。


「うぅ、バーニングショットっす!」


 マイラは魔法を撃ち続けている。群れを相手にするには剣での戦いより魔法のほうが向いているし、ブラックウルフ自体が闇魔法を行使してくるタイプだ。


 遠距離から魔法をばら撒いてきたりすることもあるので剣で接近してからなどと考えている余裕はない。


 ただ、魔力の消費からか、大威魔法を放つのはいい加減辛くなってきてそうだ。

 

 イズナも忍術を控え、各個撃破に切り替わっていっている。


 とは言え、いい加減、何かしらの答えは示したほうがいいだろう。

 このままさまよっていても無駄に終わりそうなら、やはり一旦霧から抜け出して、ん?


「ちょっと待てマイラ」

「え? あ、何か見つかったっすか?」

「クゥ~ン、クゥ~ン」


 マイラとイズナの声には俺に対する期待のようなものが感じられる。

 いい加減、決着をつけたいと思うのは皆一緒か。

 

 ただ、今のは俺もほんの少し察した程度のこと。そう、ブラックウルフを倒した直後、何か別な気配が混じっていたような、そんな空気。


 はっきりとしたことはわからないが――とにかく。


「体遁・開眼の術――」


 印を結び、忍気を両目に集中させ術を発動。

 これでよりはっきりと目に視えている意外のものも視えるようになった。 

 

 忍気は勿論、オーラや魔力の流れもはっきりと視認出来る。

 

 これで今度は何かあっても見つけることが出来るだろう。

 先ず気配が消えた方向へ向かう。


 すると、再びブラックウルフの群れが現れた。

 ブラックウルフは五匹一組で現れることが多く、今回もそうだったのだが――


「そういうことか――」


 俺は思わず呟く。ブラックウルフの一匹の足元に影が出来ていた。

 この暗闇の中でだ。勿論闇に包まれた状況では普通は影なんて見えないが、開眼の術で強化された俺の目に掛かればそれも可能だ。


 ただ、気配に関しては完全にブラックウルフの中に溶け込んでしまっている為、偵知の術では把握しきれなかったのだろう。


 それにしてもこれはある意味灯台もとぐらしだな。まさかブラックウルフの中に潜んでいたとは。

 

「喜べ、これで決着がつきそうだぞ」

「ふぇ?」


 間の抜けた声を発するマイラだが、俺はその場で印を結び。


「――土遁・石牢の術!」


 術を発動。地面に両手を合わせた途端、目的のブラックウルフが石の牢に閉じ込められた。


「よし、残りの四匹を先ず倒すぞ!」

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