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第百三十二話 忍者VSゴブリン軍団

「ゴブリンが戻ってきたぞーーーー!」


 シノブが単身奥へと向かってから、その場に残った討伐隊のメンバーが交代で二箇所の出入り口を見張っていた。


 これは念のため、他のゴブリンがやってこないか用心するためだったが。

 どうやらその心配は的中。急いで戻ってきた見張りが、戦闘準備を! と戦えるメンバーを促した。


「やってきたっすね! このまま終わるなんて物足りないと思っていたっす!」

「シェリー様、まもりはこのネメアに任せて欲しいのじゃ!」

『は、はい、ありがとうございます』

 

 シェリナの守りには当然だがネメアが付く。そしてマイラは戦える他のメンバーと迎え撃つ準備に掛かった。


 基本的にはシェリナや回復系魔法の使い手を後衛にし、前衛を戦士で固める。魔術士や弓士系は盾持ちを盾にしつつ左右に広がるように散り、戦士系を援護する陣形に。


 勿論何かあったときのために背後にもある程度守りを配置しておく。


「来たっす!」


 そして、遂にゴブリン達が空洞内になだれ込んでくる。

 数はかなり多く、当然全員クラス持ちだ。

 

 ギャーギャー喚きながら、数十体のゴブリンが先ず迫るが、その進行を戦士たちが防ぐ。

 そうして食い止めている間に、弓と魔法の混合部隊が援護に入り、ゴブリンの数を減らしてく。


「こんなところでやられてられないっす!」


 マイラもアブラソメビに炎を纏わせ、ゴブリン共を焼き、切り裂いていく。


「バーニングショット!」


 更に魔法を行使、散弾と化した炎が次々とゴブリンを消し炭に変えた。

 

 数はゴブリンの方が多いがここにきて生き残った者たちの団結力が強まり、連携も上手くとれるようになっていた。


 そのおかげで、そうやすやすとはやられない部隊へと昇華しており、更に傷ついたらシェリナを含めた回復部隊がすぐに対処できるよう陣を設けている為、多少崩れてもすぐ立て直すことができる。


 これであれば、ゴブリン程度なら問題ない、そう思われたが――


「ギイィォオオオオオ!」

「ギュギギイィイィイィ!」


「な、ゴブリンロードが二体きやがった!」


 緊張の声が空洞内を駆け巡る。ここにきてまたもや冠種、しかもロードが二体である。


「ひ、怯むな! 数を多めにロードに割いて――」

「それじゃあ駄目っす! ゴブリンはまだまだいるっすよ!」


 誰かが叫び、ロード専用の隊を作らせそれに当たらせようと考えているようだ。

 だが、生き残りのメンバーを考えると、ここで下手に別部隊を設け、陣形を崩すのは得策ではない。


 マイラはきっとそう考え、だからこそ、単身でゴブリンロードに向かっていった。


「な! 嬢ちゃんいくらなんでも無茶だ!」

「大丈夫っす、ロードなら一度倒してるっす!」

 

 そういいつつ、先ず一体に斬りかかる。

 隼斬りがヒットし、ゴブリンロードの顔が若干歪む。


 だが、その直後、闘魂爆発によって体色が変化。

 しかも二体同時にだ。肌が朱色に染まったロードの内、マイラから離れた一体がその口を大きく開いた。


『ネメアちゃんお願い!』

「任せるのじゃ! お前達は死にたくないなら急いで左右に散るのじゃーーーー!」


 だが、ネメアの吠えるような声でネメアの前で壁になっていたメンバーが左右に割れた。


 その先には口を開き、今にも闘吐弾を吐き出しそうなロードの姿。


「獅子一掃爪塵なのじゃーーーー!」


 だが、その直後ネメアの爪が空間をなで、かと思えば大量の爪の斬撃がゴブリンロードの全身を駆け抜けた。


 一瞬、ゴブリンロードの頭に疑問符が浮かぶ。だが、その直後その表情は苦痛に歪み、そして細切れとなった肉片が地面にばら撒かれた。


「ふん、大層な冠背負ってる割に軟弱な奴なのじゃ」

『すげーーーーーー!』


 周囲の男たちが目が飛び出さんばかりに驚いた。

 何せネメアは見た目には幼女だ。正直なんでそんな幼女がこの依頼に参加しているのかと思っていたようでもあったがこれで納得できたことだろう。


「あたしも負けてられないっす!」


 すると、残ったゴブリンロードに向けて片手を向け、マイラが術式を刻み――


「フレイムランベル!」


 魔法が完成し、その瞬間、マイラの目の前に槍を持った炎の騎士が顕現する。

 そのまま槍を突き出し、ゴブリンロードに向けて一直線に突撃した。

 

 進行上のゴブリン共を焼き尽くし、ロードの胸部を炎の槍が貫いた。

 轟々と派手な燃焼音を奏で、その巨体が瞬時に炎に呑み込まれる。

 

「おお! あの嬢ちゃんもすげーぜ!」

「あ、あれは確か大威魔法――剣士のようにも見えるのにあんな魔法も使えるとは……」


 ネメアの活躍に続いて、マイラの力を認めた面々から歓喜の声が上がる。

 援護に回っていた魔術士達からも驚きの声が上がった。


 魔法騎士ということで中途半端な自身の力に悩んでいた事もあったマイラだが、シノブと行動をともにしたことで自分の殻を破るきっかけを得ることに見事成功したようだ。


「グギ……」

「ギギャ……」

 

「おい見ろよ。今ので出来た炎の壁に遮られてゴブリンが戸惑っているぞ」

「よっしゃチャンスだ! 弓と魔法の部隊で攻めまくれーーーー!」


 マイラのフレイムランベルはフレイムランニングの効果も併せ持っている。

 炎の騎士が駆け抜けた跡には炎が吹き出し、上手く使えば敵の進行を妨げる事が可能だ。


(シノブが戻ってきたときに無様な姿は見せられないっす――)


 そしてマイラは更にやってくるゴブリンに目を向け、決意を胸に戦いを続けていく。

 シノブが必ず元凶のゴブリンを倒して戻ってくると信じて――






◇◆◇


「紫電――一閃!」


 霧咲丸に紫電を纏わせ、群がるゴブリン共を薙ぎ倒していく。

 目指すはゴブリンクィーン一点、なのだが、やはり兵士の女王を守ろうとする気持ちは強い。


 近づけば近づくほど、その壁も厚くなり、ゴブリンでありながらファランクスを思わせる密集陣形さえも見せてくる始末。


 前衛にしっかり円盾持ちがいるので防御力も高い。


 だが、その戦法は忍者には意味を成さないけどな。


「雷遁・電鎖(でんさ)の術!」


 俺の手から迸る雷、それが前衛の壁にぶつかり、次々と連鎖してゴブリン共を蹂躙していく。 


 この術は密集していればいるほど感電する範囲は広がっていく。

 これにより前衛の方陣一個を先ず撃破。

 

 そこから印を切り替え新たな忍術を発動。


「雷遁・雷裸尽附(らいらつふ)の術!」


 体中に巡らされた電撃により細胞が活性化され、俺の肉体が、その筋肉が一気に膨張を始めた。


 そして肉弾戦車と化した俺は、次の部隊に向けて弾けるように飛び出してく


「ウオォオオォォオオオラァアァアアァア!」


 渾身の力と電撃の乗った拳が、視界に映る全てのゴブリンをぶっ飛ばし、粉砕した。


 この術は、一発の攻撃で効果は切れるがその威力は絶大である。


 あれだけ厚みのあったゴブリンの壁に風穴を開け、俺はゴブリンクィーンに向けて一直線に駆けていく。


『グギィイイオオォオオオォ!』


 だが、そうは問屋がおろさないと言わんばかりに、二体のゴブリンジェネラルが行く手を阻む。


 揃って槍持ちであり、タイプとしてはあのハウンドが相手していたのと一緒。

 ただ、ここはすぐ近くにクィーンがおり、そのスキルの影響で能力的にはかなり強化されている。


 試しに武遁で作成した手裏剣を投げつけてみたが、回した槍を盾にすることで全て防ぎきった。


 反応速度も上がっているようだな。一体のジェネラルは俺に突撃しながら槍を連打。


 その間に残ったもう一体が回転させた槍を投げつけ、ブーメランのように戻らせることで前方の刺突と後方の投擲された槍による挟撃を狙ったようだ。


 だが、そんなものが忍者に効くかよ! 

 俺は霧咲丸を鞘に収めたままの状態で使用、後方に宙返りしつつ、飛んできた槍を後ろから霧咲丸で打ち返し、俺の威力も乗った槍がジェネラル一体の首を刎ねた。


 そして戸惑う残りの一体も斬り殺し、ゴブリンクィーンとの距離を一気に詰めた。


 さて、後はこいつを倒せば、この依頼は終了だな――

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