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現代で忍者やってた俺が、召喚された異世界では最低クラスの無職だった  作者: 空地 大乃
第二章 それぞれの旅路編

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第百二十八話 本性

 ゴブリンジェネラルが雄叫びを上げ、周りのゴブリンナイトを従えつつ、ハウンド率いる猟兵団を倒そうとやっきになる。


 だが、ハウンド達は付かず離れずといった位置から攻撃を仕掛け続け、アドバンテージを握り続けていた。


 槍を持ったゴブリンの将軍は、それを用いて特攻しながら連続で突いてみたり、頭上で回転させた槍をブーメランみたいに投げたりして抵抗するも、そのどれもがそれぞれの攻撃の後に生じる隙を逆に狙われ、槍を回転させて攻撃から身を守る【旋風壁槍】にしても、側面や背後からの攻撃までは守れないという点をつかれ。そこにハウンドの毒を塗布したボルトを喰らい続ける事となり――結果としてはロードと同じく、周囲の騎士も含めてある程度時間を掛けた末に地面に倒れ二度と動かなくなっていた。


「フン、テメェも雑魚には強いってことか」


 魔石も回収し、戻ってきた灰色の猟兵団の第一声がそれだ。

 こいつらは最速で冠種を取ることだけを狙っていたようであり、その為か、ゴブリンの討伐数だけ見た場合、俺達のほうが遥かに多い。


 だが、こいつはゴブリンを倒した俺達よりもジェネラルを倒した自分たちの方が上だと信じて疑ってない様子だ。


「ま、どちらにしても今回の元凶を倒したのはこの俺様だ。こいつらも異論はないようだし、問題ないな?」

「は? 本気で言ってるのかそれ?」

「……本気に決まってるだろが。それとも何か? テメェは俺があのジェネラルを倒したことに納得してねぇとでも言うのか?」

「いや、別にそのことに文句はないがな」


 まぁ確かに、毒であろうとなんであろうと、確かにアレを倒したのがこいつであることに間違いないだろう。


「ふん、よく判らねぇことを言う野郎だな。まぁいい、おい! お前らもそんなところでぼ~っと見てないでこっちへ来い! もうゴブリンも全滅したわけだしな」


 結局この戦いに参加できず、終始見守り続けていたメンバーをハウンドが呼ぶ。


 確かにこの空洞にいたゴブリンは全て片付いた。彼らもそれを見て安心したのか俺達の下へ駆け寄ってくる。


 元々いた面々もシェリナによる治療でほぼ完治状態だ。驚いたことに部位欠損まで彼女は治してしまっていた。尤も腕が残っていた場合に限るようで、今回は切られた腕や足がそのまま転がっていた為、治せたらしいが。


「……それにしてもそっちの嬢ちゃんは、千切れた部位まで治してしまうとはな。そんな金になる力もっておきながら何でこんなのと一緒にいるんだ? 俺達と一緒にくればもっといい稼ぎになるぜ?」


 シェリナが俺の背中側に隠れた。ネメアがハウンドに向けて唸り声を上げる。


 こいつらの視線……今はマイラより下手したらシェリナの方に興味が移ってる様子だ。


 勿論、こんな連中には指一本触れさせる気はないけどな。


「――ま、それはとりあえずはいいか。さて、お前らに集まってもらったのは実は他にもわけがあってな。今回の報酬に関してだ」

「は? 報酬?」


 生き残ったメンバーの一人が声を上げた。何でそんな事を今更、と疑問気な雰囲気を感じる。 

 

 報酬に関して確かに今更何を語ることがあるわけでもないからな。

 まぁ、元凶を倒していたらの話だが、その場合は全員が千万ルベルを山分け。元凶にトドメを刺した者は特別報酬で百万ルベルが手に入る。


「報酬の件なんて今更確認することなんてあるのかよ」

 

 更にもう一人がハウンドに向けて言った。

 するとハウンドが鼻を鳴らし、全員を見回した後。


「あるに決まってるだろ。俺が言いたいのはだ、今回の報酬の件、お前ら全員辞退しろと、そういうことだ」


 は!? と何人かの声が揃う。ふざけるな! という怒声もハウンドにぶつけられた。


 全員命がけでこの依頼に従事している。勿論今回みたく危険があって参加できなかった者もいるが、そこにいたるまでに何もしてこなかったわけではないし、生き残ることが何より大事な場合だってある。


 だから流石に全員辞退しろは乱暴過ぎる。俺たちもその中に含まれてるみたいだしな。


 そして当然だがこれに納得している者はいない。


「ふざけたことを抜かしてんじゃねぇぞ! 俺達だってここに来るまでに自分たちに出来ることはやってる! なんで辞退しないといけないんだ!」

「足手まといでしか無かったテメェらがか? とんだお笑い草だぜ」

「なんだと!」


 周囲の面々が怒りに任せて声を荒げる。だけど、灰色の猟兵団はニヤニヤと不遜な態度を見せているだけだ。


 正直、あまりいい傾向には思えないな。こいつらもしかして――


「そんなに不満か?」

「当たり前だ!」

「そうか、だったら死ね」

「え?」

 

 その瞬間、ハウンドと弓持ちの二人からボルトや矢、鉄球が放たれた。

 まさか攻撃されるとは思わなかったのか、文句を言っていた面々はあっけにとられていて反応しきれていない。


「お前、いくらなんでも乱暴が過ぎるんじゃないか?」


 だから、仕方ない。一応ここまで一緒にやってきた面子だ。このまま見殺しにしてたんじゃそれこそ寝覚めが悪いしな。


 だから霧咲丸を取り出し、全ての球を切り飛ばした。

 やれやれだな本当に。


「え? え? あ、あんたいつの間に?」

「詳しいことは後だ、こいつら最初からこれが目的だったみたいだしな。あんたらは全員離れていたほうがいい」


 俺が忠告すると、後ろから戸惑いの声が漏れる。何がなんだかと言った様子か。


「え~い! いいからさっさと行くのじゃ! お前たちは邪魔だと言っているのじゃ! ガオーーーーーー!」


 ネメアが雄叫びを上げると、わ、わかりましたーーーー! と声を上げて全員再びその場から離れてくれた。


 咆哮を調整してくれたようだな。まぁ、実際下手に残られても厄介だしな。


「テメェ、針術師じゃなかったのか……」

「針術師さ。だけど俺、器用だから」


 そう言いつつ刀を構える。憎々しげに俺を見てくるハウンドだがな。


「な、何か状況が掴めないっすが、どうしてこいつらがあたし達を狙うっす?」

「簡単な話だ。この依頼の報酬は最終的には全員で山分け、だけど、生き残ったのがこいつらだけなら総取りってわけだ。それに元々こいつらはその手の依頼で似たようなやり方を繰り返してきたんだろ。だからこその称号の裏切者だ」

「そ、そういう事っすか……」


 マイラも納得したようだな。まぁ、称号を見たときから警戒はしていたけどな。


「フン、なるほど。奇妙な奴だと思ったが、まさか鑑定まで持ってるとはな。それで俺の仲間の事も掴んだのか? そして仲間に鑑定を阻害する魔装具か何かを身に着けさせたわけだな」

「そこまで答える義理はないな」


 正確には鑑定とも違うしな。まぁそれ以外はそのとおりだが。


「ハッ、だがな、一つだけ違うぞ。俺達はそこのマーラとシェリーだけはいかしておくつもりだった。色々と利用価値がありそうだからな」


 だろうな。尤も、それを聞いたマイラとシェリナは心底嫌そうにしているけどな。


「リーダー、もしかしてこいつら只者じゃないんじゃ?」

「あん? 何びびってやがんだ。俺達は元凶のゴブリンジェネラルだって倒したんだ。ビビる必要はねぇよ」

「た、確かに」

「そうだよな。俺達はゴブリンを率いてたジェネラルを倒したんだ。こんな連中……」

「おめでたいことだな」


 さっきから見当違いのことを口にし続けている連中に、俺は呆れたように口にする。

 全く、心底浅はかな連中だ。


「おめでたいだぁ? それはテメェの頭の方だろが」

「い~やお前さ。大体今回の元凶は――」

 

 その時、背中に感じる奇妙な気配。

 これは――


「ワン! ワン! ワン!」

「グルルルルルゥウ――」


 そしてハウンドの両隣の猟犬も吠え声を上げ唸り声も上げる。その頭が頭上を向いており――


「あん? 何だお前ら突然……な!?」

「ネメア!」

「わかっているのじゃ!」


 突如頭上から迫る影。数は八――その内の五体が猟兵団の連中に迫り、瞬時にハウンド以外の四人が首筋を切られた。


 断末魔の悲鳴を上げ絶命する。


「クソが!」

 

 ハウンドは肩に一撃喰らいながらもゴロゴロ転がって強襲者からの致命傷を避けていた。

 

 俺達の方はネメアが即座に反応し、二体を切り裂き、俺も霧咲丸で一体の首を刎ねた。


「くそ! なんだこのゴブリン! 畜生が!」

「キャン? ギャン!」

「アン! アン! アン!」

「うるせぇ! テメェは飼い主を守るためにしっかり盾になっとけ!」

「ウォン!?」


 ハウンドの言うように強襲してきたのはゴブリン――ただ、こいつらはゴブリンアサシン、つまり暗殺者のクラス持ちだった。


 それで気配を消して天井を這ってきたってわけだ。

 それにしてもハウンドの奴――飼っている猟犬を盾にして逃げやがった。

 一匹は投擲ナイフの盾にされ、もう一匹は蹴り飛ばされてハウンドを狙っていたアサシンの囮に使って奥へと逃げていきやがった。


 とんでもないやつだな。全く苛々させてくれる――

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