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第百十四話 目覚めた俺の手にあったのは何やら柔らかいソレだった

第二章公開です。

「う、う~ん――」


 なんだろう? 妙に頭がグラグラする。まるで荒っぽい運転手の操縦する車に乗り、悪路を延々と走り続けたような気持ち悪さ。


 最後に何があったか――何とか思い出そうとする。ここは、確か、そうだ。

 俺は何故か教室で妙な出来事にあい、そしてクラスの皆と異世界に召喚された。


 異世界で俺は、無職というクラスとして認定され、使いものにならないというレッテルまで貼られてしまった。


 だけど、俺は地球では忍者だった。故に、その正体は隠しつつも帝国の内情を探り、そしてそれをきっかけに幽閉されていた姫様であるシェリナや、帝国の不平不満を手帳に綴り続けていたが為にそれを理由に処刑されそうになっていたマイラを救出し――更に口が聞けなくなる呪いを掛けられたシェリナを助けようと、帝都を出たわけだが……。


 その途中、黒騎士や強力な魔導師、それにその孫である魔物使いなんかに妨害された上、巨人のような怪物が山を武器に落下、このままじゃ不味いと思った直後――空中に謎の穴が開き、それに吸い込まれた。

 

 そうだ! 俺も、マイラもシェリナも、あの穴に吸い込まれたんだ。

 そしてその後は――記憶はハッキリしないけど、とにかく、起きないと!


――フニッ。


 て、うん? フニッ? そういえば、何か手元に、柔らかいものが――


――プニプニ。


 プニ、プニ?

 俺はゆっくりと瞼を開いてみることにした。なんだか意識が覚醒してきて気がついたのだが、どうやら俺の両手は何かを掴んでいるらしい。


 しかも俺の体も、妙に柔らかいというか、クッションのようなものの上に覆いかぶさるような体勢でいるようであり――


「う、うぅぅん」

「はい?」


 呻き声を上げる、その人物に俺は思わず間の抜けた声を返す。

 

 そこにいたのは、紛れもなくマビロギであった。

 つまりマビロギが俺の下になっていたのだ。


 だが、おかしい。そう、おかしいのだ。


 何故なら、俺の両手に感じられるこの感触は、どう考えてもアレだ。外套越しではあるがよくわかる。そうアレなのだ。


 しかしこれはおかしい。なぜならこいつは男だ。そうだ男の筈なのだ。


 なのにこんなものついているはずがない!

 そう思いたち、俺は思わずマビロギの外套を開けさせた。

 

 妙に余裕のあるサイズの為か、肩の部分がすっぽりと抜け、胸部が顕になるが。


「――おっぱい……」


 思わずそんな言葉が漏れる。勘違いしてもらっては困るが、俺はとにかくマビロギが男か女なのか、それが気になって仕方なかっただけであり、別に下心があったわけではない。


 それにしても、まさか下着すらつけてないとは――いや、今問題なのはそうではない!


 なぜこの子が女なのかということだ!

 確かあの時俺は看破の術でステータスも確認したはず。


 その時の性別は確かに男だったはずだ。

 とにかく――もう一度確認してみるか、看破の術!



ステータス

名前:マビロギ

性別:女

レベル:40

種族:人間

クラス:魔物使い

パワー:150

スピード:230

タフネス:160

テクニック:220

マジック:1020

オーラ :1200


固有スキル

魔物隷属化、魔物強化、ステータス加算(魔物分)、魔物操作、魔物招集

スキル

身代わり、四属性魔法

称号

魔物を従えし者



「マジで女かよーーーー!」

――ビクンッ!

「おわっ!」


 ステータスを見て思わず俺は叫んでしまった。するとマビロギ、なんというか実は女だったらしい彼女の体が跳ね、俺は俺でどうにもまだ身体の調子が本調子ではなかったようであり、つまりバランスが崩れて前方に倒れそうになる。

 

 なので、思わず両手を使って自分の身体を支えてしまったわけだが。


――むみゅ。


 うん、柔らかいね。何というか、思ったより大きかったからついというか何というか――


「ふぇ?」


 しかも、タイミングの悪いことにマビロギが目を覚ましやがった。頭が上がりフードが捲れてその顔も顕になる。


 そういえばまともに顔見たの初めてか? 

 どことなく幼気な面立ち、髪はウネウネとした癖のある灰色で、目はまるで黒目だけが広がったようなそんな瞳。


 ただ、雰囲気としてはやはり女の子っぽいかなと思う。小柄だし、柔らかいし、変わった点は多いけど可愛らしいと思う。


 まぁ、俺は彼女に命を何度も狙われたわけだけどな。

 うん、そんなことを冷静に考えているが、正直この状況は――


「ヒッ、ヒッ、い、イヤッァアァアアアァアアアアァアア!」

「ぐぼっ!?」


 手に握りしめた杖で思いっきり喉を突かれた! 洒落にならん! 

 息が止まりそうになり、身体も仰け反る。そこへ更に二発、三発と殴打。


「ちょ、ちょっと待てタンマ」

「だ、黙れ! 黙れこの変態! レイプ魔! 鬼畜ド畜生!」


 酷い言われようだ! いや、確かに俺にも非がないとは言わないけど!

 とにかくこの状況でいるのは良くない。

 

 俺は一旦飛び退き、マビロギと距離をおいた。

 彼女は開けていた胸元をすぐに直し、怒りの形相で俺を睨んでくる。


「うぅ、お前なんかに、お前なんかに、僕の僕の――」

「待て待て待て、話を聞け、だ、大体お前ずっと男だった筈だろ! なのに何で女になってんだよ!」

「うるさい! うるさい! 黙れ! 殺す! もうお前絶対殺す! 僕が絶対殺す!」


 やべぇ、全く聞く耳持ってくれそうにない。大体この状況もよくわかってないのに何だってんだ。そもそもどこだよここ?


「し、シノブ! 一体何があったっすか? 凄い悲鳴が聞こえてきたっすよ!」

『――コクコク』

「え? あ、二人とも無事だったのか!」


 後ろを振り返ると、マイラとシェリナが立ち上がり心配そうに声を掛けてきてくれていた。

 まぁ、シェリナは石版だけど。


「くっ! くそ! 僕の魔物の反応がない! こんなことって――え~い! 覚えてろよ! お前は絶対に僕が、僕が殺してみせるからな! このド変態くそ強姦魔ーーーーーー!」

「あ! ちょっと待て! 変な誤解したままいくなオイ!」


 引き留めようとしたが遅かった。マビロギはそのまま森の向こうへと消えていったからだ。


 うん、そうだ、森だ。どうやらここはどこかの森の中らしいけどな。


 それにしても、目覚めた早々、こんな不名誉なレッテルを貼られるとは――これじゃあまるで俺がド変態の間男みたいじゃないか……全く幸先が思いやられるったらないな……。

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