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異世界から勇者が魔王倒しにやってきたので、世界を救わせないために頑張る  作者: Q・直下
藤城進士は勇者に振り回されて、溜息を吐く
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最初の出会い

「さぁ!魔王を倒しましょう!」


 いきなり目の前に現れて剣を天高く掲げながら意味不明の発言をした不審人物を俺-藤城進士はまじまじと見つめてしまった。


 直前まで俺は自宅で仕事をしていたのに、何故一人暮らしの我が家に女の子が現れてゲームか小説の中でしか聞けないような妄言を垂れ流しているのか。


 そう-女の子、目の前の不審者は間違いなく十五、六歳の女子であった。最近は男の娘とかいう何か間違った概念もあるらしいが、仮にこの存在がY遺伝子を所持していたら間違いなく俺は重篤な女性(男性?)不審に陥ることだろう。


 この日本ではなかなかお目にかかれない金髪碧眼の美少女である。

なぜか腰には剣を佩き(今は鞘しかないが)、使い込まれた風情の鎧を纏っているのが不自然だが、不思議とそれがしっくり来ていた。

 

 とはいえ、俺の好みとしては同年代か年上、つまり最低でも二十代半ば以上の包容力のある女性なので別段色気は感じない。

ぶっちゃけるならアニメのキャラクターかテレビの中のアイドルに感じる「あぁ可愛いな」という感情と大差はないだろう。より具体的に言うなら「遠いところで見物する分にはいいだろうけど身近に置いたら気苦労が絶えないだろうな」、という感情しか沸いてこない。

 

そしてここは間違いなく俺の仕事場だ。目の前のパソコンと周りの棚に仕舞われた書類がそれを証明している。そこに突然まばゆい光が発生し、俺が目を覆っているうちに光の中から仕事机の上にコイツが現れたのだ。

 -などという益体もないことを考えながら目の前の不審者を観察していると、一向に返事がないことにようやく気付いたのか、剣を頭上に掲げたポーズを解いて-登場からこっちずっとこのポーズのままだった-剣を鞘に納めるとようやくこちらに声をかける。


「ムムッ? 返事がありませんよ? 勇者の従者に選ばれるという栄誉に預かったのですから、感涙にむせび泣くのが昔からの伝統でしょうに」


 誰が勇者で誰が従者なのかとかそんな伝統は誰が決めたのかとかそもそもお前は誰なのかとか様々な疑問が頭をよぎるが、最終的に俺の頭脳は社会人として実に常識的な結論に達した。


「警察、警察っと……」


 相手が何歳だろうが可愛い女の子だろうが、家宅侵入の現行犯なのだから警察を呼ぶのは実に当然の判断だろう。

 素晴らしきかな警察機構、ビバ血税。尊い労働から得た収入により毎年確定申告に苦労している甲斐があるというものだ。


 -シャン


 今までの人生で一度も聞いたことのないような美しい金属音が鳴り響く。何事かとその音が鳴り響いた側-今まさに警察に電話するべく取り出したスマートフォンを見ると-

 真っ二つだった。


「すみません、誰か人を呼ぶために通信機を取り出したのでしょうけど、今はあまり人を呼んで騒ぎにはしたくないのです。まずはあなたにゆっくり話を聞いてもらえれば、と思うのですが……」


 先ほどの尊大な態度はどこへやら、やけに殊勝な態度でこちらに頼み込んでくる女の子。その手にはたった今一歩間違えれば俺の右手と胴体を生き別れにしていたであろう剣が握られている。


「OK、まずは穏便に席に着こう」


 女の子相手にヘタレと笑うか? 少なくとも俺は斬るつもりはなかったとしても人に向けて躊躇なく真剣を振れる人間と対立する気はない。もっと強気な態度に出れるという奴がいるなら、代わってくれ。切実に。



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