わたしのお兄ちゃん
わたしには5つ年上のお兄ちゃんがいる。
勉強が出来て、スポーツも出来て、カッコイイお兄ちゃん。わたしの自慢のお兄ちゃん。
だけど最近、お兄ちゃんに彼女が出来た。
お兄ちゃんに彼女が出来たのはこれで三回目。必ず家に連れてきて、私に紹介してくれた。親には紹介しないくせに。
顔は…あんまり可愛くない。お兄ちゃんは本気でこの人を好きなんだろうか?ってくらい。
「可愛い妹さんね」
「だろ?まひるって言うんだ。俺の自慢の妹」
「……どうぞ、お二人でごゆっくり」
「あ、おいっ!?まひる!」
私、浅葉まひるは、彼氏いない歴15年の中学3年生。
お兄ちゃんの浅葉海斗は20歳の大学生。
年が離れているせいか、私は小さい頃からお兄ちゃんに憧れていた。
背が高くて、優しくて、眼鏡をかけているお兄ちゃんが大好きだった。
わたしは今、学校まで電車で通っている。大体、駅から歩いて10分程度で家に着く。
そんなある日の学校の帰り道。私は携帯を鞄から取り出して、お兄ちゃんに電話した。
『もしもし』
優しいお兄ちゃんの声だ……。
「迎えに来て」
『え?今、どこ?』
「今、駅にいるの。家まで歩きたくない」
『俺、免許持ってないし。何で迎えに行けばいいんだ?』
「……自転車」
しばらく駅で待っていると、自転車に乗ってお兄ちゃんが迎えに来てくれた。
どこまでも優しいお兄ちゃん。
その甘ったるい優しさが大好き。好きで好きでどうしようもないよ……。
「ほら、乗れよ。わがままちゃん?」
「今日ね、告白したの。まさおに」
「まさおって誰?クラスの奴?」
「うん。でもね、振られたの。彼女がいるからって」
「ふーん」
「うわぁああっん!!」
「泣くなよ。また他に好きな奴作ればいいだろ?」
もっと構ってよ。私に。
もっと嫉妬してよ。お兄ちゃん…。
血が繋がってるから恋しちゃいけないの?それが常識?私は何にも悪いことしてない。
ただ、お兄ちゃんを好きなだけ……。
駅から家までのほんのわずかな時間、お兄ちゃんがこぐ自転車の後ろに乗って、幸せを感じている。
私は、お兄ちゃんのお腹をぎゅっと抱きしめた。
ねぇ、お兄ちゃん。私の気持ちに、少しは気付いてくれてるのかな……?
次の日、学校に行くと、あまり話したことのない人が私に話し掛けてきた。
「ねぇ!浅葉さん、いつからあんなカッコイイ彼氏が出来たの!?」
「彼氏なんか出来てないよ…」
「うっそ〜?私見たんだから。自転車で二人乗りしてたじゃん」
そう言って、ニヤニヤしながら私を見つめていた。
「その人、彼氏じゃないよ。私のお兄ちゃん」
「えー!?兄弟で二人乗りしてたんだ!?きっつ〜」
さっきのニヤついた表情が一転し、曇り出した。
「何で?兄弟で二人乗りしちゃ悪いの?」
「だって浅葉さん、お兄さんのこと抱きしめてなかった〜?もしかしてー、ブラコン?」
「ブラコンじゃないっ!!」
その後、周りにいた男子が騒ぎ立てた。
ブラコンとか、キモいとか……。
私は周りの視線に耐えられなくなって、昼休みと同時に気分が悪いなどと嘘をついて学校を早退した。
家に帰ってからも、学校で言われたことが纏わり付いた。
なんでいけないの?そんなに悪いことなの?
ただ、お兄ちゃんが好きなだけなのに。
家に帰ってから部屋に閉じ込もっていると、ドアの向こうから優しいお兄ちゃんの声が聞こえた。
「まーひるー。部屋にいるのかー?」
驚いた。大学にいるはずのお兄ちゃんの声がしたから……。
「何でお兄ちゃんが家にいるの?大学はどうしたの?」
「ああ、授業抜けてきた。お前こそ、何で家にいるんだ?」
「具合が悪いの」
「大丈夫か?」
私は部屋の扉を開けた。
「入って…」
「それよりも、晩飯どうする?今日、親父もお袋も帰るの遅いだろ?」
「私のことよりも夜ご飯の方が大事なの!?」
―――私は子供。
こんなこと言ったって、お兄ちゃんが迷惑するだけ。
「変だぞ?まひる。どうした?」
「そうだよ…。私のこと皆が変って言う。お兄ちゃんが……お兄ちゃんが好きって言ったら皆が私のこと軽蔑するの!?」
「まひる」
「お兄ちゃんも私のこと、軽蔑するの?」
―――お兄ちゃんへの想いが膨らんで……爆発しそう―――
「言っちゃ駄目じゃないか?まひる」
「え?」
海斗はまひるの手を取り、抱きしめた。
「…な……んで?」
「好きだよ。まひる。愛してる」
「からかってるの?お兄ちゃん……」
「からかってないよ」
海斗はまひるをベッドに押し倒した。
「だって……お兄ちゃんには彼女がいるじゃない」
「まひるより可愛い女なんかこの世にいない。まひるに嫉妬させて面白がってたんだよ」
「………ひどい」
海斗はまひるの首元を舐めた。
「………う…ぅ…」
「もう逃がさないよ。まひる」
―――昼と夜が逆転しそうなほど………………甘い誘惑。
【END】




