命
僕たちは、産まれた時の事を覚えていない。
僕たちは、産まれる前に歴史を見る。
何億という生命の歴史を僕たちは辿る。
そして辿りつく。
僕たちは扉をくぐり、この世に産まれ落ちる。
僕たちはそのことを覚えていない。
意図的に忘れたのか、それとも無意識的に忘れたのか。それが恐怖故に忘れたのかわからない。
だが、僕たちは知っている。覚えていないけれども知っている。
永久に生きられぬことを、永久に寄り添えぬことを。
この運命からは逃れられない。誰もが同じ運命を抱えている。
だからこそ、大切にしなければならない。
僕たちに命を与えてくれた人たちを。
損得抜きで愛を与えてくれる両親を。
時間は少ない。永久に寄り添うことはできない。共に歩むことも出来ない。
彼らは先を行き、先を生き、先に逝く。
時間は有限であり時間は少ない。
生命の歴史は僕たちの中に刻まれている。忘れていても残っている。
親が子に残すものを。
命を、愛を。
それは奇跡であり軌跡。
彼らの軌跡は奇跡を起こして僕たちを産み落とした。
今度は僕たちの軌跡が奇跡を起こす。
僕たちが先を行き、先を生き、先に逝く。
これは運命。
だからこそ、最大の感謝を。
父さん、母さん、僕たちを生んでくれて、ありがとう。