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「なあなあ、あの噂知っているか?」
現実か幻かもわからない出来事があった、次の日。
あの後、家に帰った優斗は風呂にも入らず、そのままベットへ身を投げ、気がついたら朝である。そのまま優斗は朝にシャワーを浴びて、昨日の出来事は幻だろうと自身に言い聞かせながら、いつも通り学校へ来たわけだった。
青桜高校の二年二組の教室。
桐沢が、興奮した口調で自分の椅子に座った優斗に言った。昨日のことはすっかり念頭から消えているようで、その表情からは優斗への不満は微塵も窺えない。
「ん? 桐沢がついに魔法使いになったことか? おめでとう」
「ああ、霧神、応援ありがとうな──って、違う! 勝手に、俺の人生決めてんじゃねーよ! ……そうじゃなくて、今日転校生が来るっていう噂だよ」
「……転校生? この時期にか?」
「ああ、もう夏休みに入るのに珍しいよな。まあ、でも、問題はそこじゃないんだ。その転校生、かなり美人らしいぜ」
「へぇー」
気のない返事をする優斗に、桐沢が顔をしかめる。
「なんか興味なさそうだな」
「まあな」
それよりも、もっと気になることがあるのだから当然だ。
結局、昨日眠ることはできなかった。
あの夕闇柴乃という少女の話が気になってしまったからだ。
『もう看過できないほど、現象が進んでいる』とは、果たしてあれのことなのか。それとも、全く別のことなのか。
どちらかはわからないが──これだけは言える。柴乃は何かあれについて知っているはずだ。
──と。
ガラッ、と。
教室の扉が開いた。
それは教室内を完全に沈黙させるに十分なものだった。
最初に教室に入っていたのは先生。
先生は教室の雰囲気を一瞬で感じ取ったようだった。
いつもと違う沈黙が降りた教室に、怪訝な表情を浮かべる──が、直ぐに、ニコリと笑って上書きすると、教壇の中心まで歩いて言う。
「皆さん、おはようございます。さて、皆さん気付いているかもしれませんが、今日は転校生がこのクラスに入ってきます。良い子だから、仲良くしてあげてください」
先生が扉の奥に向かって手招きした。
そして──
「────」
問題の転校生が、初めて優斗の視界に映った。
腰まである珍しい黒紫色の髪。丸い双眸は、クラス中を這って──優斗のところで止まった。
驚愕。
青桜高校の制服姿だが見間違えることなどない。だって、そこにいたのは、自称・異世界人の少女──夕闇柴乃だったのだから。
柴乃はクラス中から浴びせられる視線など、さして気にすることもなく黒板に『夕闇柴乃』と書くと、クラスメイトの方を振り返る。
「皆さん、よろしくお願いします」
それだけ言って、柴乃は黙ってしまう。クラス中が、柴乃からそれ以上のことを聞きたいような雰囲気を醸し出すが──柴乃がそれ以上何かを言う気配はない。
沈黙した空気を破るように、先生はパンと手を叩いた。
「はい! じゃあ、夕闇さんの席はどこにしましょうか? ええっと……」
「あそこが良いです」
黙っていた柴乃が、先生の声を遮ってピッと指さす。
白い手から放たれた直線上には、優斗の隣の席があった。が、そこは既に一人の男子生徒が座っている。
先生が困ったように声を漏らす。
「ええっと、あそこはもう座っている人が……」
「問題ありません」
言うと、柴乃はその男子生徒の席に近づき微笑む。
「悪いけど、譲ってくれないかしら」
上目づかいでそう言われたら断る男子はいないだろう。現に、その男子生徒は刹那の判断で柴乃に席を譲ってしまった。
柴乃が、優斗に横に座って含みのある笑みを見せる。
その笑顔を見て──
優斗の直感ですら読むことが出来ない未来に天を仰いだ。
「ちょっと、聞きたいことがあるの。時間もらえるかしら?」
昼休み。
柴乃から声を掛けられて、優斗は、ようやく来たかと身構えた。柴乃の目的が何かはわからないが──どこかで話はすると思っていた。
柴乃の言葉に教室がざわつく。
美少女で今日転入したにも関わらず、既に学校中の噂の渦中にいる柴乃ならそれも当然かもしれない。しかも、その相手が冴えない一人の男子ならなおさらだ。
周囲から集まるクラスメイトの視線が嫌でも優斗に突き刺さり、柴乃の影に隠れるように思わず首を縮める。
だが、柴乃はそんなものを意に介することなく、再び口を開いた。
「霧神君、あなた──」
と、優斗に一方的に喋りかけたところで、柴乃は言葉を紡ぐのを止めた。
今更ながら、否応なく視線と注意を集めていることに気がついたらしい。それに、柴乃は困惑した表情を浮かべる。
が、それも数瞬のことで、柴乃は不意に優斗の耳元に顔を近づけ、囁いた。
「ちょっと場所を変えないかしら。話したいことがあるの」
柴乃の行動に、さらに教室が騒然となる。
正直、その提案は願ってもないものだった。
男子の怨嗟に満ちた視線が、優斗に集中しているからだ。
大方周囲は、学園のアイドルへとなった柴乃が告白でもするのか、と考えているのだろう。だがそんなことではないことは、昨日の非日常の光景を目の当たりにした優斗自身が、よく理解している。
「ついてきて」
沈黙を肯定と受け取ったか、柴乃は踵を返すと教室から出ていき。
残った優斗は、容赦なく怨嗟の満ちた視線に晒された。
…………ついて行っても、行かなくても男子生徒に抹殺されそうだ。
ならば。
一瞬の思慮の後、優斗は席から立ち上がると、視線から逃れるように柴乃の背中を追いかけた。
柴乃は目的地に着くまで一言も喋らなかった。
かつかつと廊下を小気味よい音をたてながら歩き、階段を上って、着いた場所はこの高校の屋上だった。
屋上の扉を開けると、柴乃が視線で優斗が中に入るように促す。優斗が入るのを確認して、柴乃は扉を閉めると外から鍵をかけ、視線を優斗に移した。
「怪我はなかったかしら? 霧神君」
「ああ、大丈夫だ。……ということは、昨日のはやっぱり夢じゃないのか」
「夢、ね。……その言葉は半分合っていて、半分間違っているわ。でも、覚えているということは……ふーん、まあ、これはいよいよ決定的ね」
後半部分を柴乃はぶつぶつと呟き、手を顎に当てながら、一人で考え込む。
その様になっている姿に、優斗は疑問をぶつけた。
「勝手に納得してないで、ちゃんと説明してくれよ。あれが、何なのか。あの獣は何なのか。──それに、夕闇はいったい何者なんだ?」
「だから、最初から言っているじゃない」
柴乃が微笑む。
「──霧神君から見て、私は異世界人だって」
「……本当にそうなのか?」
「本当にそうよ。それに、そんなに特別なものじゃないわよ。私がいた世界のことは、あなたもよく知っているところだし」
「俺が知っている場所……?」
人生で、地球はおろか日本も出たことがないはずなのだが。
首を傾げる優斗の様子を見て、柴乃が答える。
「その世界のことは、一冊の本に記しされているわ。その本の名前はルイス・キャロル作『不思議の国のアリス』──つまり、アリスが行った夢の世界のことよ」
「夢……って、寝るとき見るやつか?」
「違うわ。寝るときに見る夢は、所詮脳が見せているに過ぎないから。アリスが行ったのは、完全な別物。夢の世界という名の異世界よ」
そんな馬鹿な。
そう叫びたいのは山々だが、優斗には残念ながらそれを否定するだけの知識はない。
しょうがなく、取り敢えず思いついた疑問を口にする。
「……それで、夕闇は、その夢の世界から何をしに来たんだ?」
「良い質問ね。そうね、そのことを話すためには、少し過去に遡らなきゃいけないわ……そう、あれはビックバンが起こったとき……」
「そこまで遡るの!?」
「──冗談よ。夢の世界の歴史は地球ほど古くないもの。だって、夢の世界はこちらの世界の人間の《思い》を糧に創られた世界だから。地球よりも歴史は浅いわ……それに、前は、世界の本質自体はそこまで変わらなかったのよ。──一つの法則を除いてね」
「一つの法則……?」
「そう、夢の世界にはこの世界のあらゆる物理法則の他に、もう一つ、オリジナルの法則があるのよ」
柴乃はそこで一端区切り、再び口を開く。
「特別な条件を満たした人間が持つ《属性》を能力として具現化する法則。私たちはこれを《夢の法則》と呼んでいるわ」
「……それってどういう事なんだ?」
「そうね……例えば、その人間の《属性》が《改変》なら、その人の《改変》するための能力が具現化されるわ」
「…………は?」
「まだ、わからないの? 夢の法則は、夢の世界では絶対にして不変の法則なのよ。つまり、さっき言った通り、《改変》の能力は間違いなく、《改変》を可能とする。……世界を言葉通り、自らの思うがままに《改変》することすら可能よ」
「……そうなるとどうなるんだ?」
その言葉に、柴乃がダメ押しの言葉を口にした。
「世界がその能力を持った人の欲望の色に染まるのよ。そうなった世界はもう終わりだわ。……最悪、世界そのものが消滅する」
「……そんな」
絶句する優斗に、柴乃が苦笑をにじませる。
「まあ、実際は制約がかなり厳しいから、そんなことも起こらないの。だから、前は世界の在り方もそれほど、こちらと変わらなかった。……だけど、こちらで数えて約二百年ほど前に、一人の少女が《夢の法則》によって、完全に夢の世界を改変した──いや、一から創造したのよ」
世界を一から創造する。
しかし、それは人間の成せる業ではない。
人間の能力を遥かに超えてしまっている。
そんなことができてしまったら、それはもう──
「……神じゃないか……」
優斗がぽつりと呟いた言葉に、柴乃が目を見開く。
「ええ、その通りよ。その少女や同様に《夢の法則》を使い、神の如き力を得た人間は、夢の世界の神として数えられているわ。でも、問題はそこじゃない。人間が世界を創造したことが問題なのよ」
「それの何が問題なんだ?」
柴乃の言葉に、優斗は首を捻る。
確かに、人間が世界を創造するのは問題なのかもしれない。が、具体的に何が問題になるのかはさっぱりわからなかった。
柴乃はそれに大仰に溜息をつく。
「わからないの? たとえ《神》の如き力を持つ人間がいても、それは厳密には《神》ではない。万能じゃないのよ。……その少女が創った世界は、魔法や魔力が溢れる便利な世界となった──けど、それは不完全だった。今、その反動が夢の世界で起きているのよ」
「反動……?」
オウム返しの呟きに、柴乃が頷く。
次いで、紡がれた答えは簡潔なものだった。
「夢の世界の崩壊」
「──ッ! それじゃあ──」
「そう、今こうしている間も夢の世界は崩壊し続けているわ」
「じゃあ、夕闇がこっちの世界に居るのはその崩壊を止めるためなのか」
静かに呟いたその言葉を、柴乃は首を振って否定する。
「違うわ。最初から言っているでしょう。私がこっちの世界にいるのは、こっちの世界を救うためよ」
「……何でだ? その崩壊とやらは、こちらの世界に影響があるのか?」
「いや、元々はなかったわ。だけど、国の上層部がある政策を秘密裏に打ち立てたのよ──夢の世界が崩壊する前に、二つの世界を繋ぐ《門》を開いて、こちらの世界──つまり、現実世界と融合するというね」
「……《門》?」
「そう、《門》よ。簡単に説明すると、表裏一体でありながら、決して交わることがない二つの世界を無理矢理つなげたもの、ね。昔は時々、偶然二つ世界がつながったものを《門》と呼んでいたらしいけど……それを模倣して創って開くことで、夢の世界と現実世界を融合しようとしているの」
「……融合したらどうなるんだ?」
「最終的には、《門》から夢の世界の全てが流れ込む。魔法も魔力も、獣もね」
優斗は息を呑み込んだ。
獣。優斗が殺されかけた元凶。あれは、夢の世界から来たものなのだ。
「まだ、夢の世界との融合率は遥かに低いから、そんなに影響は出てないけど……それでも少しはあるわ。例えば、今巷を騒がしてる神隠し。あれは、夢の世界に生息する堕獣と呼ばれる生物が、人間を喰った結果、現実世界からその人間が消えているのよ」
「なっ──」
優斗は思わず眉根を寄せた。昨日の光景が脳内に蘇る。灰色の世界で、獣が半透明となった人々を襲う。──あれが、神隠しの原因。
ただ、皆が気付いていないだけで既に影響は現れているのだ。そして、それを現実世界の人々は認知する術も対抗する術もない。防ぐ術を持っているのは、優斗の目の前に凛とした態度で立つ夕闇柴乃のみだ。
優斗の背中に冷や汗が流れた。
もしこのまま融合が進んでいったら、どうなるかなど考えるまでもない。
最悪、現実世界も崩壊してしまう。
「このままだと、大勢の人間が堕獣に喰われるわ。私はそれを阻止しようとしているの。……そして、最終的には《門》を破壊して融合を止める」
柴乃が静かに締め括った現実を、優斗はどこか遠い出来事に思えた。
それほどまでに、優斗にはにわかに信じ難かったのだ。だが、昨日の光景が脳裏にこびりついている優斗には否定することも出来なかった。
「……それは、本当のことなんだな?」
「ええ、全て真実よ」
柴乃が首を縦に振る。
おそらく言葉通り、柴乃は嘘をついてはいない。信じ難い話だが、優斗は柴乃の言葉を疑ってはいなかった。
しかし、だからこそ疑問に思うこともある。
「……夕闇がこの世界を救おうとしているのはわかった。現に、俺も救われたからな。だけど、何でそれを俺に話すんだ? 幻覚を見たと思わせておいても良いだろ? 実際俺は夕闇がクラスに来るまではそう思っていたし」
疑問を口にした瞬間、優斗はそれを激しく後悔した。
柴乃が、ニタリと微笑を浮かべたからだ。
まるでその言葉を待っていたかのように。
「最初に言ったでしょ。あなたには協力してもらうつもりだって。まさか、ここまで聞いて逃げないわよね」
優斗の目には、柴乃はもう詐欺師にしか映らなかった。
以前見惚れたはずの笑みも、今では何かを含んでいるように思える。
「……お前は、俺に何をさせるつもりだ? 言っておくけど、俺にあの獣と戦えというのは無理だからな。武道の心得とか皆無だぜ」
優斗は身体を広げ、柴乃に半ばやけくそに問い掛ける。
お世辞にも優斗の体格は良い方とは言えない。
身長は日本人の平均以下。身体の線は細く、女の子と間違われるほど華奢だ。加えて、優斗には筋力もそうはない。あの方天戟を持てと言われても、確実に持ち上げることができない自信がある。
しかし、柴乃の返答は優斗の予想を裏切った。
「違う、そんなことじゃないわ。それは私でもできることだから。あなたにやってもらいたいことは、《門》の破壊よ」
「それこそ、夕闇が出来るんじゃないのか?」
柴乃は呆れた表情を浮かべる。
「できたら頼まないわよ。良い? 《門》は神力で創られていて、私は攻撃性の神力は持ってないの。──神力は神力でしか対抗できない。常識じゃない」
「知るか、そんな常識!」
「察しなさい」
「どうやって!?」
優斗は一旦気持ちを落ち着けると再び口を開く。
「……だいたい、俺が出来るわけないだろ。俺は夕闇みたいに特別な力なんか持っていないんだぞ」
そう持ってなどいない。
持っていたら、あんなことにはならなかったはずなのだから。
優斗の返答に、柴乃は今日二度目の溜息をつく。
「あなたは持っているわ」
「────ッ! で、でも……」
「だいたい出来ないのに、私があなたを選ぶわけないでしょう。あなたは特別な力をその身体に宿している。思い出して、昨日のことを。あなたは擬似夢で自由に動けていたじゃないの。他の誰も動くことができないのに」
「…………」
確かに、そうだった。
柴乃が擬似夢と呼んだあの灰色の空間で動けたのは、優斗のみだ。
だけど、それだけだ。
凄まじいエネルギーを秘めているわけでもなく、灰色の空間で動くことができるだけ。どう、この能力を《門》の破壊へと結びつけろというのか。
すると、柴乃が優斗の内心を察したかのように言う。
「あなたはこの重要性を理解していないわね。あなたは知らないだろうけど、現実世界で擬似夢の中で動ける人間は大きく二つに分かれるわ。一つは私みたいな夢の世界から来た人間。そして、もう一つは神力を持っている人間。つまりね、霧神君。あなたが持っているのは世界を改変するほどの神の如き力なのよ」
「……いや、でもそんな力なんか、この十七年間の中で使えたことなんかないぜ」
優斗のその申告に。
柴乃はさも当然のような表情を浮かべる。
「それはそうよ。だって、神力を使うことができるのは夢の世界、もしくは擬似夢の中のみだもの。……それに、まだ信じていないようだから教えてあげる。今の夢の世界を創造した少女は、アリスよ。それに加えて、その他の《神》と呼ばれる原初の存在は全て、元々は現実世界の人間なのよ」
優斗はその言葉に絶句する。
「……なんで、そんな力が俺に……?」
「たぶん、あなたの祖先が神様なんじゃないかしら? ほら、あなたの名前、霧『神』だし」
やけに自身満々にいう柴乃に、優斗は呆れたように声を出す。
「そんな安易でいいのか?」
「いいのよ。大事なのは、神力を手に入れた経緯ではなくて、神力を持っているという事実なのだから。──それでどうするの? 私の手伝いをしてくれるの?」
悪そうな笑みを柴乃は浮かべ、優斗を見つめる。
しかし、その瞳は真剣そのものだった。表面上は取り繕っても、瞳の奥の小さな輝きが不安げに揺れ動いているのがわかる。
正直、優斗がここで《門》の破壊に協力したところで、出来ることは限られているし、そもそも《門》の数も一つではないのかもしれない。
無駄だった。
それで終わってしまうかもしれない。
でも。だけれども。
優斗は知ってしまった。
世界がどんな状態にあるかを。
優斗は見てしまった。
世界を襲う現象を。
そして、優斗は知っている。
大切な人が、周りの人がいなくなる恐怖と辛さを。
もし、優斗が協力することで誰かのために、あるいは優斗の『大切なもの』を守る強さを得ることが出来るのかもしれないなら──
「……わかった。夕闇に協力するよ」
一つの決意とともに発せられた声に、柴乃はあからさまに安堵した表情を見せた。
「うん、そうよ、そうよね。霧神君ならそう言うよね。──じゃあ、霧神君。今日の放課後、お出かけするわよ」
前半柴乃がぼそぼそと言っていたが、優斗が気になったのはむしろ後半の部分だった。
「さっそくやるのか?」
「いや違うわ。だいたい、いきなり出来るわけないでしょ」
「そうだけど……だったら、何をするんだ?」
優斗の疑問に、柴乃はあの悪そうな笑みを浮かべる。
「座学の次は決まっているでしょう」
そして、この短い一言で昼休みの話は終わりを告げた。
「実地訓練よ」