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二人だけの眩い世界

崖の上に、彼と彼女は立っていた。

微笑みあい、お互いの耳元で何事かを囁きあい、幸せそうに笑う。

いつしか手を繋いでいた二人は、長い長いキスをする。

照れたように笑う彼女を、彼は優しい瞳で見る。

地平線に向かい合う。彼女が手を引く。

彼は逆らわない。

そのまま、重力に引き寄せられるまま――


海に何かが落ちた音がした。

これらの光景をずっと眺めていた紅岬レイカは、目を伏せる。


「これで、何回目ですかね~。よくもまぁ、飽きないな~と思うんですよね」


かって一時的だが刑務所長の役職についていた男が、レイカの後ろでそう言った。

ここには、男とレイカしかいない。

ここには、他の誰にも踏み込ませないとレイカは胸の内で思う。


「レイカも、よくやりますね~。文句を言う篠崎家を潰して、このあたり一帯を買いとるなんて。そんなに彼と彼女のことが好きなんですか?」


「君は茶々を入れるのが好きだな。何だか、その開きやすい口をのりで一度ちゃんとくっつけてみたくなる」


「ふふふ、勘弁してくださいよっ。あなたのせいで、私は篠崎家の奴隷という立場をうしなったんですから」


「拾ってあげただろう。感謝してほしいものだ」


篠崎家を潰したのも、別に今回のことがあったからというわけではない。

父が仕切っていたころから、篠崎家は紅岬家にしばしばちょっかいを出してきた。

おそらく鳴浜家の次に、紅岬家を狙っていたのだろう。


「ミユはそのことにも気づいてしまった。だから尚更、私から距離を置いた。ふん、別に潰してくれて私は全然かまわなかったから、ミユのその気遣いは余計なものだったけど。まさか、私に何も相談なしに死んじゃうなんてさ………。ほんっとにミユはバカな子だった。私に何か言ってくれれば、力になれたのに」


「レイカが力になるって……怖いですね~。もし現実にそうなっていたら、いったいどんな地獄が生み出されていたのか、少し興味あります」


猫のように笑うレイカに男も笑った。

「レイカ」と自分の名を呼ぶ奴隷。レイカはまた自分の欲しかったものを手に入れることに成功していた。

だが…………


「本当に欲しかったのは、『彼』なのだけど」


それから半日が経とうとする頃、いつの間にか崖に一人の少女が立っていた。

不意に現れた少女はただじっと海の彼方を微動だにせず眺めている。

それから、さらにしばらく――

全身をずぶぬれにした少年が、崖から這い上がってきた。

たどり着いた少年は、息を簡単に整えると、立ち上がりすぐさま彼女に声をかけた。

微笑みあい、お互いの耳元で何事かを囁きあい、幸せそうに笑う……


「何度くりかえす気? ハジメ」


レイカは独白を漏らす。

彼と彼女には届かない。

二人は幸せそうに笑っている。


あれから、レイカが発見した時から二人は幾度も死をくりかえしている。

男が渡した薬の効力が切れ、何の副作用なのか、彼女はただこの時だけをくりかえす。

彼も、まるで彼自身も彼女と同じ『時戻り』にかかってしまったかのように、寸分たがわぬ笑顔で彼女と死んでいく。

レイカは、舞台のワンシーンのような光景をただ眺めていた。


いつしか手を繋いでいた二人は、長い長いキスをする。

照れたように笑う彼女を、彼は優しい瞳で見る。

地平線に向かい合う。彼女が手を引く。

彼は逆らわない。

そのまま、重力に引き寄せられるまま――


その時、不意に突然、彼の瞳がレイカを映した。

驚いて、目を見開いたレイカに彼は微笑んで、唇が動く。


『ごめん、レイカ。――――ありがとう』


消える二人の姿。

水音。


「……ふふふ……くく……あはっ、あはははははははははははははははは!!」


レイカは腹をかかえて笑う。


「バカ! バカだよ、君は! そんなに主に尽くしちゃって、ミユを愛してしまって!! これは笑うほかにないね。あはは、あははははは! ハジメ!! 君は、本当にバカだ!」


痙攣する腹を押さえて、涙目になりながら、レイカは叫んだ。


「やめたくなったら、いつでもやめればいい! 私はずっとずっと待っている。君が弱音を吐く日を、諦めてしまう日を。何年、何十年、私が老婆になってしまったとしても、この気持ちはずっと変わらない。私はいつまでも、君を待っている!!」


そんな日が来るはずないことをわかっていながら、レイカは心の底からの思いをぶちまける。

眼前の憧憬を感じずにはいられない光景に、胸を焦がして……




ラスト~!

と、いうことで、連続投稿&完結でした。

これはバラバラにしたいけど、あまり長い期間あけて投稿したくないと思ったのでそうすることにしました。


みなさま、本当にありがとうございました!!


感想&レビューをしてくださった方々、とても感謝しつくせないほどありがとございますと言いたいです。

小説を書き続ける力をいただきました。


初めての連載作品完結でドキドキしていますが……またみなさまに会えることを心の底から願っています。


ありがとうございました!!!!!!!!

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