3.★ 空とぶケモノ・A
「麻川アキくん」
「何」
「藤宮カオルは我等が担任佐藤アオイ通称シュガーくんが好きなんじゃないかと思うんですけどどうでしょう」
「そうなんじゃないの」
「先生と生徒ってアブナイですね」
「そーだね」
「…アキくん」
「何」
「そこに愛はありますか?」
「馬鹿は嫌いです(にっこり)」
「(ヒィ)」
空とぶケモノ・A
「人間はねー、昔は飛べたらしいですよ」
「へぇ」
「そんなカンジの骨の跡があるんだそーで」
「へぇ」
「なんで飛べなくなったんでしょーね」
「へぇ」
「あのですね、ボク一応真面目に話してるんですけど」
いちごカフェオレ飲むの止めない?しかもそれ6パック目。
「日本は基本的人権を認めてるってことくらい知ってるよね?(にっこり)」
訳:一応真面目にきいてりゃ何したっていいだろーがよそんくらい頭使え。
「なんか…すんません」
ホン○クコン○ャクなしたって、俺はアキの言いたい事(っつか言葉の裏)がよくわかる。これも愛のなせる技?とこの前かなり真剣に訊いたら、
「小野篁に会わせてあげようか?」
と言われた。オノノタカムラって誰ですかと思ったけど、その時のアキのイナズマ効果万点の背後に暗雲垂れ込めさせた雰囲気に負けてとりあえず黙った。
家に帰ってゲームエロ本etc…に埋まってる広辞苑(かれこれ8年は使ってない)を引っ張り出して調べると、小野篁は平安時代の歌人で冥府(これも調べたらどうやらあの世のことらしい)のお役人という伝説があった人らしい。
つまり死んで来い。むしろ死なせてあげよっか?的なことを言われたわけだ、俺。
次の日大いばりで言ってやったら、
「トリ頭の上に馬鹿で阿呆なんだね、アンタ」
と馬鹿にしてスト(馬鹿にしてる、の最上級)な顔で哀れみの視線をくれた。
「なんか…すんません」
と言ったら、
「何で謝るのかわかんない。謝ることでアンタの頭の造りが改善されるんだったら話は別だけどそんなワケはないでしょ。阿呆は死んでも治らないって言うし」
あたいも何であやまってんのかわかんないョ☆
日常っつーのは、衝動で満ち満ちてる。
条件反射っつーのは、俺達が抑えられなかった欲望のカタマリだ。
人間っつーのは、誰も彼もがエゴイスト。
「逃げ出したいと思うのは、ワガママ何でしょーかねェ」
「ワガママでしょ」
6月のじっとりとした空の下、裏庭のベンチに並んで座る俺達。
右にいるアキが、6パック目のいちごカフェオレを放る。
キレイな放物線を描いて、それはゴミ箱の中に入る。
ってかキミ。なんでバスケ部はいんないの?野球部でもいいよ?
何度か言ってみたけれど、その度に同じ答え。「俺帰宅部部長だから」。かく言う俺は同部会計。(微妙)只今部員募集中。
「なんでデスか」
アキはうざったそうに左手で前髪をかき上げ、右手でいちごカフェオレのパックにストローをさしながら(7パック目!)言う。
「人にかかる迷惑考えてない」
「は?別に迷惑かける人なんて」
「いるよ。俺代表者」
そう言ってから含んだいちごカフェオレを飲み込むために、アキの喉が上下する。
「あんたがいなくなったら、日常がつまんなくなって困るんだけど」
ヤツは、
俺が青空トリップをしない理由で、帰宅部部長で、
そんで、俺がいなくなったら困ってくれるヤツの代表者だ。
例え、
ぼーとしてばかりだったり、
ちょっと自暴自棄になってたり、
ちっとも勉強しなくても、
僕らは大人が思うより、
ずっとたくさん、難しいこと考えてるんだ。