25.★ 血液型・B型 中-A
ああ、痛いな。
言葉が痛い。
敵意が痛い。
もしかしたらと思う、
心が痛い。
血液型・B型 中‐A
「何コイツ、男の癖にされるがまま?」
がつんと壁にぶつけられた肩がじりじりと痛む。
ってか痛い、ホント痛い。髪ひっぱるなよ。
「聞いてンの?」
「あー、あんまり。今考え事してるンで」
「ッ、ふざけんな!」
「ふざけてないです」
腹蹴らないで欲しいなとかぼんやり思いながら、繰り出されるバイオレンスを受け流す。
こぶしも、痛いんだけどね。
張り手も、痛いんだけどね。
何よりも、
「あんた、ホントむかかつく…!」
「ほんとなんなのよ!何でアンタみたいなのがアキくんと付き合うの!?」
「どうしてアキくんが男なんかとッ」
それは俺も訊きたいんですけどねえ。
いまいちはっきりと答えてくれんのですよあの人。
おねーさんA(茶髪を耳の上でくくってる)がスカートのポケットに手を突っ込んだ。
あ、ちょっとヤバめ。
案の定というか何と言うか、出てきたのは握り手がごてごてに装飾されたはさみ。
…カッターじゃないだけいいかな。
先っぽ丸いし。
Aがにやにやしながらこっち来る。
あー、邪なこと考えてる人は男も女も醜いねえ。
頭の後ろでばつんと言う音。
髪の毛掴まれて浮いてた頭が落っこちる。
頭、なんか軽い。
「…あれ、もしかして髪切った?」
「アハハっ!いい気味、アキくんは長髪が好きなんだよーッ」
へえ、そら知らんかった。
こんど髪の長い着せ替えジェニーちゃんでもプレゼントしたろ。
多分着き返されるけど。
ってかそれから3日間くらいシカト?みたいになるのは必至だけど。
「散発代浮きましたわ、どーも」
へらりと笑ってそう言うと、おねーさんBの顔が悔しそうにゆがんだ。
Aの手から放された髪の毛が頭の上からばらばらと降ってくる。
これ、片付けンの俺?
だよね。
でもめんどいし。
明日の当番だれだっけねえ。
…あ、カオルだ。
じゃあいいや、まかせた。(マテコラ)
がん、と頭を蹴りつけられる。
まだ甘いなあ、楡月っちの蹴りっつーか張り手は首ねじ切れそうになるべ☆
「あんた、ホントむかつく」
知ってる。
だって自分が一番むかつくもんさ。
「…ねえ、あんたたち俺がにくいんでしょ?」
ふうっと問いかける。
Cだけが気味悪げに顔を潜めたけど、残り二人は嬉しそうに口早に言った。
「そうよ!だいっきらい!」
「あんたなんかいなくなればいいのよ!」
「うん、俺もそう思うんだよね。だからさ、殺してよ」
顔を持ち上げると、おねーさん2人は顔を潜めていた。
Aの手を取って首元に持っていく。
「これをさー、ちょっと力入れて突くだけでいいんだよ?」
すらすらと言うと、手がこわばったのがわかった。
ほら、うざいとか嫌いとかいなくなれとかいえるけど、自分の力で消すことなんて出来ない。
「…何、あんた」
「憎ければ、殺せばいいじゃん」
「ッ、うるさい!何よアンタ、きもちわるい!死ねよ!」
死ねって言うくせにね。
自分では殺せないくせにね。
気がついたら視界が変わってた。
Aの上に馬乗りになって、いつの間にか取り上げたはさみを首に突きつけていた。
Cは半泣きで逃げてく。
あ、残念。こいつらの友情ここで終わったわ。
「ねえ、おねえさん」
自分の声が、どこか遠い。
「そんなにぼくがにくいんなら、ぼくのいないせかいにいけばいいでしょ?」
俺に死ねというのなら。
「ひとにしねっていうんなら、あんたがしんじゃえばいい」
ぐぐ、とはさみのさきっぽを首筋に突きつけると、突然頭の後ろから衝撃が襲った。
俺の背中を蹴り飛ばしたBがあわただしくAを支えて、「覚えてろよバーカ!」とか芸のない捨て台詞を言って去っていった。
はさみ、おいてったし。
今何をやろうとしたか、なんとなくわかってる。
わかってるよ。
だけど今更。
今更、もうひとり殺したくらいで。
突然、空が見たくなった。
久々ですすみません。
終わりが見えませんこの話。