20.☆ 腹黒ハザード
紋高1の腹黒って誰でしょう。
麻川アキでしょうか。
いえいえ。
幟堂リナでしょうか。
いえいえ。
案外安倍セイヤでしょうか。
いえいえ。
その人の名前は二階堂サトル。
けっして酒の名前ではありません。
腹黒ハザード
『は?お披露目会?』
『そう、執行部のメンバーが決まったから麻川ちゃ、様に紹介しておこうと思ってね(あぁっぶなーい)』
『ま、気が向いたら行ってやってもいいわよ』
『じゃあ放課後に』
ま、不安が無かったわけじゃないんだけど。
「こうも見事に裏切られると笑いたくなるね」
現在時刻7:03。
「笑う余裕があるなら仕事の1つや2つ片付けてくださいよ会長」
「だめー、サキちゃんがいないとやる気出ない―。それよりサトルもよく落ちついてられるよね。サキちゃんだよ?副会長が2人いるなんて知ったら毒殺されるかもしれないのにさ」
「俺は毒殺されるほど浅はかじゃないし、第一副は2人いるって説明しておかなかった会長が悪いんだから、万が一毒殺されたら夢枕に立ってやりますから安心してください(にっこり)」
「(笑えない…)」
てきぱきと仕事をこなしていくサトルは休み無く手が動かす。
見た目は中の上なのにあのサワヤカーな雰囲気と嫌味のないフェミニストなところでけっこうモテるんだよね。
ま、それでもサトルの浮ついた噂って聞いたことないけど。
「サトルはさー、好きな人っていないの?」
「…会長、頭のネジ飛びました?」
「あー大丈夫いっつも飛んでるから」
なんとなく訊いてみたくなっただけなんだけどねー。
「好きな人…そうですね、いないと思います多分」
「あいまい」
「Me」
「違うIの格変化じゃないから」
「わかってますよ(にっこり)」
ほんと、こういうのを腹黒策士っていうんだろうな。もう歴史の影で活躍する参謀タイプ。ってことは僕はサトルの思い道理に動かされてる傀儡か。
そういうのも悪くないけど。
「サトルって性格悪いよね」
「それはどうも」
ほめてない、ってつっこむのも面倒でデスクに突っ伏したら、
どかばしごーん
「来てやったわよ幟堂!」
生徒会室のドアってわりと重いんだけど、さすがサキちゃん。見事な開けっぷり。
「麻川様まだ学校にいたんだね」
「今まで江崎とわんこそば早食い対決してたから」
それはまた個性的な。
「で、私に紹介したいやつって誰よ」
「えっと他のメンバーは帰ったんだよねもう」
きみがあまりにも遅いから。
「ふん、根性がないわね!」
根性の問題じゃないと思うよ。
「それでね、この人がきみと一緒に副会長をやる二階堂サトル」
「ストップ、今なんつった」
「え、二階」
「違うわよその前!」
「きみと一緒に副会長をやる」
「副って1人じゃなかったの」
「1人だよ。男と女1人ずつ」
「2人だろ(怒)」
あらやっぱり怒っちゃったか。
さぁてどうしようかなぁ、またシンイチの時みたいに戦争が起きなきゃいいけど。
「で、あんたが二階堂サトシ?」
「サトルです」
向かい合った2人から火花が飛び散ってきそうであとさずる。
「どうでもいいわ!こうなったらバトルロワイヤルでどっちが正しい副会長か決めるわよ!」
決めなくていいんだけどなー。
「それは構わないけど」
構えよー。
「ここで戦うにはいささか無理があるので、隣の副会長室で思う存分お手合わせ願えますか」
「了解したわ」
何する気だよきみたち。あのね、生徒会室って十分広いんだけど。
呼びとめられるはずもなく、2人が副会長室に入って数十分。
最初は壁に張り付いてた僕もつまらなくなり(生徒会室および会長室、副会長室は防音バッチリ☆)そろそろ帰りたいなぁと思っていたところに突然ものすごい音をたてて副会長室のドアが開いた。
何事かと思えばサキちゃんが目をキラキラさせながら「私先輩に一生ついて行くわ!」と叫んだ。
えーっと、うん副会長室のドアも重いんだけどね。
呆然としていたら「じゃ、そういうことで幟堂」と言ってさっさと帰っていった。
副会長室からいつもの笑顔でサトルが出てくる。
「…サトルって性格悪いよね」
「俺は会長の脳内回路の謎が知りたいです」
つまるところ、紋高1のストマック・ブラックの貴公子は、未来のヒットラーが尊敬するほどあらゆる意味ですごい人なのだ。
恐らくKの小説至上で最も恐ろしいと思われるストマック・ブラックの帝王です。
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