プロローグ「約束の海」
青春ラブコメ。ボーイ・ミーツ・ガール!
甘酸っぱい恋愛ストーリーを楽しみませんか?
登場人物紹介
前原 隆司──17歳、高校2年生。サッカー部に所属している。
伊勢 さくら(いせ さくら)──同じく17歳、高校2年生。放課後はまっすぐ家に帰る帰宅部だ。
隆司は、会計士の父とパン屋でパートをしている母、そして15歳の弟・渉と4人で暮らしている。
住まいは4LDKのマンション。穏やかながらも、それぞれが忙しく過ごす家庭だ。
さくらの家族は、会社員の父と専業主婦の母、そして10歳になる妹・涼花。
年の離れた妹をとても可愛がっていて、面倒見のよいお姉ちゃんでもある。
プロローグ「約束の海」
* * * 12年前 * * *
【隆司 side】
ジリジリと肌を焼く太陽と潮風が、さくらの長い黒髪をやさしく揺らしていた。
波打ち際には、角の取れた小石がいくつも浅瀬に埋もれている。
ズボンの裾を膝までまくった隆司の足のまわりにも、
白く光る石や貝がらが散らばっていた。
二人は夢中になって、キレイな石を探している。
顔を近づけ、地面とにらめっこするように。
やがて、隆司が小さな声を上げた。
「わぁ、やったー!ついに見つけた!」
手のひらには、白と青が混ざり合うマーブル模様の小石。
潮に濡れて、鈍い光を放っていた。
「えーっ、隆司くんだけズルい~!」
半べそをかきながら駆け寄ってきたのは、さくらだった。
「大丈夫。さくらのぶんもあるよ。」
隆司はポケットから、もう一つの小石を取り出す。
さっき拾ったものによく似た、丸いガラスの石だった。
「ありがとう、隆司くん。キラキラして宝石みたい。
ずっと大事にするね。わたしの宝物」
さくらの笑顔に、隆司は少し照れながらハニカんだ。
「うん。俺も宝物にする。二人だけの秘密だね」
「うん!」
さくらは元気いっぱいに返事をすると、
パラソルの下で見守っていた母のもとへ駆けていった。
隆司はズボンで手の汚れをぬぐい、
ガラス石を太陽にかざしてみた。
透きとおるマーブル模様が、光を受けてゆらめく。
それをそっとポケットにしまうと、
彼もまた、母親のもとへ走っていった。
新作、書下ろしになります。
良かったと思ったらいいねなどしてもらえると
次作へのモチベーションになります。




