対決魔法使い
いきなり攻撃を仕掛けた杖を持った不審な男。
カーリーヘアの緑髪で目はギョロっと魚のように丸く大きい。
体は細身の筋肉質で身長は190㎝くらいでデカい。
着ている服は赤と青と金色の良く目立つガリアの軍服。
「ボダゲバセジョガサギドラジョダヅラビジョデンゾバべパガボゲビジョラギゴゾスザドバシグデデゾビシガベ・ドスベベゾ!」
「サクラ!詠唱だ!逃げろ!」
「え?あ、はいっ!」
いきなり名前を呼ばれ逃げて魔法を交わすよう言われる。
不審な男は謎の呪文を1秒くらいで唱え、杖からブーメランのような形をした魔法がすごい速さで飛んでくる。
わたしはその場の地面に伏せ、魔法を交わす。
「――くッ……」
ラインハルトさんは魔法を手持ちの剣で受け止める。
「ほぉぅ。風の刃を剣で受け止めるとは、お前クソやるなぁ」
「貴様、何者だ」
「いいぞぉ、教えてやる。なっがい耳かっぽじってよく聞けよクソ。ガリア陸軍魔法歩兵科少尉、エロワ・ド・モンレヴァル・ド・サン=ベリエール子爵だ。長いからエロワでいい。低知能のクソ、よく覚えとけ」
「エロワ、貴様何しにここに来た」
「え?あぁ、用事ねぇ。あっそこの女!お前だよお前さん。この女が国外追放した後を監視するのが俺の任務。そしたら何たる僥倖!ストーカーしてたらいつの間にかガリア未発見の軍事施設とゲルマニア現陸軍総司令官のお前、ラインハルト元帥を見つけたぁ。なんてんたって国の軍の最高指揮官!殺して手柄を立てたら俺は大出世!というわ・け・で運が悪かったということで、ばいばーい」
「貴様……」
「ほんっとうにごめんなさい!」
エロワとかいう男の奇襲の原因がわたしだと知って申し訳なくなる。
なんとか自分で責任をとりたい。
でもなんで、わたし一人だけをずっと付きまとって監視したいんだろう。
もうガリアを出て1週間以上経つのに。
「ボダゲバセジョガサギドラジョダヅラビジョデンゾバべパガボ――」
「サクラ!次が来るぞ!この場から失せよ!」
「はいッ!」
エロワの詠唱を再び唱えるので、地面の奥の底が深い遺跡に逃げて隠れる。
遺跡の目の前にはたくさんの銃がある。
「これ……使える?」
目の前のピストル(十四年式拳銃)を手に取る。
◇
「ゲビジョラギゴゾスザドバシグデデゾビシガベ・ドスべべゾ!」
詠唱が終わり、木の杖から風の刃が飛んでくる。
魔法(遠距離攻撃)ができない亜人の自分は持っている剣で対処するしかない。
ブーメランのような風の刃は弓矢のように速く飛んで襲い掛かってくる。
「――ンッ、クッ!」
風の刃を自分の剣でガードし鍔迫り合いが続く。
攻撃を剣で受け止めることにより、だんだんと刃が欠ける。
「二度目の魔法も受けとめられちったぁ。クソったれ。クソほど体力使うが、しかたあるまい……」
「……」
「ボダゲバセジョガサギドラジョダヅラビジョデンゾバべパガボゲビジョラギゴゾスザドバシグデデゾビシガベ・デンメグド!」
「なんだッ」
さっきとは少し違う詠唱をエロワが唱えたら、木の杖から風の刃が3つも出てくる。
自慢の剣術で3つとも受け止めるが威力はさっきの三倍。
剣がぴきっと音がして今にも壊れそうになる。
「フッ、もうお手上げかぁ」
「――はァッ!」
ラインハルトは最大限に力を振り絞り風の刃を払いのける。
だがパキンッと剣はおれた。
「ほおぅほおぅ。お前さんクソ強ぇなぁ。でももうし・お・ど・き」
「くッ」
「ボダゲバセジョガサギドラジョダヅラビジョデンゾバべパガボゲビジョラギゴゾスザドバシグデデ――」
詠唱にかかる時間は約1秒、エロワとラインハルトの距離は50メートル走くらい離れている。
わたしはピストルに弾を装填し、しっかりと両手で握りながらエロワに向ける。
前後のサイトを覗き狙いを定めて引き金を引く。
パァンッと雷のような大きな音が響く。
わたしの掌には大きな反動が伝わる。
「グゥッ……クソッいってぇ……なんだぁクッソォォォぉッ」
エロワは出血した腹を手で押さえて、その場に足を崩しその場に倒れこむ。
やはりピストル一発では頭を撃たない限りなかなか死なないか。
「何が……起こった」
ラインハルトさんは放心状態だ。
「ラインハルトさんっ!無事ですかぁ~」
安否確認のため急いでラインハルトさんのもとへ駆け寄る。
「ラインハルトさんっ」
「あ、あぁ無事だ」
「よかったぁ」
なんとか間に合って安堵とともに気が抜ける。
「クソっ!クソっ!クソぉぉ……」
エロワが嘆くように苦しむ声が聞こえる。
油断はできないのでまた銃を向けて構える。
「長距離からの攻撃は我ら人間のとっけえぇぇぇん……なのにぃなんだその武器はぁ!クソッ!クソッ、クソッッッ!クソいてぇぇぇ……」
だんだんとエロワの声量が小さくなった。
弾丸が体に風穴を空き大量出血で衰弱している。
奇襲を仕掛けた敵とはいえ瀕死の人にまで銃を向けるほど私は鬼ではない。
「……」
「待て、貴様何をし――」
「……ドスベベゾ」
「え」
エロワが持っていた長い杖の先端から緑の光が発光し、刃のようなものが私の目の前に。
「……ッ!はぁッ!」
隣に立ったラインハルトさんは私の肩を突き飛ばす。
すると途端にものすごい速さで駆けエロワの首を欠けた剣で突き刺す。
間一髪だった。
「借りは返したぞ」
あっけにとられたわたしにそうラインハルトさんは声を掛ける。
「ありがとう、ございます」
異世界初の戦闘はこうして終わった。
明日から毎日18時に更新したいと思っています。おもしろいと思ってくださった方は、ブックマークや星の評価をいただけるとありがたいです。何卒よろしくお願いいたします。