もう助からない
「うんまっ!」
「いやー、来て正解だったね」
「ラーメンのレシピ教えてもらおうかな」
私達はお父さんの作ってくれたラーメンを食べていた。
「美味しそうに食べてくれて良かったよ。どうだい?材料少し持ってくかい?」
「え?いいんですか?」
「ああ。ただ少し変わりにパンとか果物とかあれば分けてくれないか?流石にラーメンばかりでは飽きてきて」
「わかりました。焔ー」
「はいはい、取ってきますよーっと」
「レシピも後で書くから」
「ありがとうございます」
「ふぅー、美味かった」
「ご馳走様でした」
「お粗末様でした。みんなはこの後どうするんだい?」
「あーどうしよ。決まってないんだよなぁ」
「九州のオススメの観光地とかありますか?」
「観光地って、はは。うーん、この状況でも楽しめるとしたら温泉か熊本城とかかな」
「熊本城かぁ、行ってみる?」
「そうだな。特に行く場所はないし行ってみるか」
「ん、光も賛成」
「私も」
「俺もそれでいいよ」
「じゃあ熊本城で決まり」
「そうか。でもとりあえず今日は泊まっていったらどうだ?もうすぐ暗くなるし、夕飯にラーメンも出してやれるぞ」
「いいんですか?」
「ああ」
「それなら夕飯のラーメン作り私も手伝わせてください」
「おっ、いいぞ」
「俺らは一旦着替え取りに行くか」
「まぁ今ラーメン食ったばかりだからもう少し夕飯は後にするか」
「じゃあ私も着替え取りに行く」
こうして私達は一度キャンピングカーに戻った。
「ねぇ、ゾンビと同じ家で寝るって危なくない?」
「大丈夫だろ。起きる気配なかったし、一応寝る前に結界魔法貼ればいいし」
「うーんそれにしてもあの人は何で動かないんだろ」
「もしかしたらまだ完全にゾンビになってないとか?」
「ゾンビに不完全とかあるのか?」
「そもそもとしてあの部屋でゾンビ化前から寝てたんならどうやってゾンビになったんだ?」
「確かに何でだろ?」
「最初の方に発生したゾンビだったとか?」
「確かにそれならありえるかも」
「なぁ、前から思ってたんだがゾンビになる条件って何だ?」
「そりゃあゾンビに噛まれることじゃね?」
「でもそれじゃあ安全地帯でショッピングモールゾンビに殺された人はどうして噛まれてはないのにゾンビになったの?」
「確かに」
「こっからは俺の勝手な推測なんだけどさ、ゾンビになる条件って死ぬことなんじゃないかな?」
「え?」
「それはなくね?そうだとしたらゾンビに噛まれた人は死んでないやん」
「ゾンビが噛むと、ほらあれだよ、毒かなんかが流れて死ぬ。そしてゾンビ化する」
「ほんとかなぁ」
「うーんまぁ憶測で物事を語るのは良くないし、一旦戻ろ?心配させちゃうし」
「そやな」
私達がお父さんの家に戻ると、
「あっ、君たち帰ってきたのか。聞いてくれ、妻が目を開いたんだ!」
「え?」
「君たちが見てくれたおかげだよ。本当にありがとう」
「それで奥さんは今どこに?!」
「まだベッドにいるが」
「すぐ動くと危ない。お父さんは少しここで待っていてください。一度診断します」
「わ、分かった」
私達は急いで部屋の中に入った。
ゾンビは上半身を起き上がらせていた。
「まだ動き出してはいないね」
「どうする?」
「これは多分もう時間の問題だよ」
「外に放り出すしかないってことか」
「で、でもそんなことしたら」
「お父さんが黙っちゃいない」
「一時的に俺が再び眠らせとくことも出来るけど」
「それじゃあしばらくしたら動き出しちゃうね」
「じゃあお父さんをここから連れ出すのは?」
「多分自分の妻を置いていけないって言うだろうな」
「ゾンビになっても、人間だと信じてるくらいだからね」
「どうする?」
「とりあえず一旦焔の魔法で眠らせとこう」
「分かった【レムスリープ】」
起きあがろうとしていたゾンビは再びベッドに横になって眠ってしまったのだった。




