朱里さんの両親を救え
「あの、お父さん。ちょっと奥さんのところに案内していただけますか?」
「別に構わないが、どうしてだい?」
「私達いくつか薬を持っているんです。もしかしたら奥さんに効く薬があるかもなので」
「でも君たち医療知識はあるのかい」
「そ、それはえっと、、、」
「私、医学部受験しようと思ってて多少の心得ならあるので大丈夫です」
沙莉?!
でもあんだけ塾行ってたから本当かもしれないし、
でも本来その時間で特殊部隊として動いていたはずだし
ま、まぁ焔のポーションかけるだけだし、嘘だとしてもいっか。
「そ、それならこっちです」
お父さんは私達を奥の部屋に案内してくれた。
「この部屋です」
そう言って扉を開けると中にいたのは
「っ!?」
「な、なるほど。すみませんお父さん少し集中したいので外で待っていてもらえますか?」
「え、でも」
「大丈夫ですよ。これでも沙莉は成績が優秀なんで」
「そ、そうかい?なら君たちが食べたいって言っていた博多ラーメンを用意して待ってるよ」
「ありがとうございます」
光がお父さんを連れて外へ出て行った。
二人が階段を降りる音が聞こえると、
「これってやっぱり、、、」
「うん間違いなくゾンビだね」
「でもこんだけの人間を前にしても動かないね」
「それはよく分からないけど、、、ちょうど良い焔ポーションかけてみてよ。もしかしたら人に戻るかもしれない」
「意味ないよ」
「やってみないと分かんないでしょ」
「もうやったんだ。ゾンビ化が始まったその日に遊園地で試したんだ」
「それでダメだったと」
「うん。お父さんの言う感じ元から動けない程の病気を持ってんだろうから多分その病気は治せる」
「そしたら動き出しちゃうね」
「それはおかしくない?だってゾンビって粉々にしても再生するんだよ?そんな生物が病気ごときで動けなくなるわけなくない?」
「それはそうだけど」
「そもそもゾンビってまだよく分かってないから例外なんかいてもおかしくない」
「うーん、とりあえずこの人を助けることは出来ないってことだよね」
「そうなっちゃうね」
「ならとりあえずお父さんに私達には助ける薬はありませんでしたって言いに行こ」
「そうだな。残りのことは光を入れてキャンピングカーの中で話そう」
「でもさ、ゾンビってこと言った方がいいんじゃない?」
「いや、それは言わない方がいいだろ」
「うん。その通りだね今まで大丈夫だったんだから今後もお父さんが襲われることはないだろうし」
「で、でも」
「この二人からしたらこのままの方が幸せだろ」
「赤の他人が介入することじゃない」
「それはそうだけど」
「俺らに出来るのはこのことを東日本に行った時に朱里さんに伝えることだけだよ」
「そ、そうだね。でも何も出来なかったって言ったらお父さん落ち込んじゃうだろうから栄養剤を渡しとこ」
「そうだね。奥さんは元気にならないけどお父さんの気持ちは少し元気になるかもね」
「よーし、二人のとこ戻って博多ラーメンだ」
私達は栄養剤をベッドの横に置いて、部屋を出て一階に向かった。
「君達、どうだい妻は治ったか?」
「いえ、すみません。私たちの手持ちじゃあ助けることは出来ませんでした」
「そ、そうか」
「治るかは分かりませんが一応栄養剤は置いておきました」
「ありがとう。私に少しでも希望をくれて」
「いえ、俺らは全く」
「いやいいんだ。朱里の無事を伝えてくれただけで十分だ。ラーメンはもう少し時間がかかるから席に座って待っててくれ」
「わ、分かりました」
「ど、どうだったの?」
「完全にダメだった」
「それじゃあ光がいても変わんないね」
「うん」
そうして私達は少しモヤモヤしたまま博多ラーメンを待つのだった。




