可能性は0じゃない
せっかくいい感じでまとまっていたのに光が余計なことを言ったせいで、結局みんなのことを全部話すことになってしまった。
「えーっとつまり、焔君が異世界から帰ってきた転生者で、光ちゃんが魔法少女で、蒼雷君が超能力者で、沙莉ちゃんが特殊部隊に所属してたと」
沙莉が政府直属の特殊部隊ってことは伏せておいた。
流石にそれがバレたらどうなるか分からないからね。
「うーん、まだまだ沢山わからないことだらけなんだけど」
「あー大丈夫です。私もほとんど分かってないので」
「そ、そうなの?」
「私が知ってるのは焔が持って来た異世界の食材は美味しいってことだけですよ」
「案外光もそうかも」
「みんな結構仲良いみたいだけどそう言う話はしないんだね」
「光達も話したくないわけじゃないんだけど、面白い話じゃないからね」
「雑談の中に衝撃的な新事実があるのなんてザラにありますからね」
「まぁもう何でもいいや」
「あーあ朱里さんが考えることを放棄しちゃったよ」
「仕方ないよ。草乃がこうならないのがおかしいくらいだよ」
「私はおかしくない」
「まぁまぁ二人とも。それよりゾンビとバリケードの方はどうなっているの?」
「えーっと、とりあえずゾンビはほとんど殺して、安全地帯の外に追いやりました。バリケードに関しては3人が簡易的に復旧しています」
「色々やってくれてありがとね」
「いえいえ。でも光達がバリケードを復旧したところで明日ゾンビが復活したらまたすぐに破られると思います」
「そうだよね」
「もうここにはいられないんじゃない?」
「極論光達が毎日ゾンビを殺して回ればここを保たせられるだろうけど」
「みんなにも限界があるよね」
「はい。ゾンビも強くなって行っちゃいますし」
「うーんどうしようか」
そうこうしてるうちに三人がキャンピングカーに帰って来た。
「ただいまー」
「帰ったよー」
「夕飯の続き食べよー」
「はぁぁ、まったく」
「あれ?朱里さんじゃん。来てたんだ」
「沙莉ちゃん達おかえりなさい。お邪魔させてもらってるわ」
「草乃、これってつまり、、、」
「うん、全部伝えてるよ」
「そっか」
「ねぇ、みんな」
いきなり朱里さんが改まって話しかけてきた。
「三日、、、いや二日でいい。この安全地帯内を守ってくれないかな?」
「な、何故に?」
「今すぐにでも政府のところへ直談判しに行って、この現状をどうにかしてもらいにいく。そのための時間が欲しいの」
なるほどね。朱里さんはこの状況を中から変えようとしてくれたのだ。
でも、、
「でもどうやってこの状況を打破するんですか?」
「え?」
「今政府を動かしても、ゾンビを退けれるわけでもバリケードを超絶強固に出来るわけもない」
「政治はあくまで物事の使い方を決めるだけ。それを使える人がいなかったり、そもそも使う物自体がなかったらどうしようもないんです」
「それはその通りだけど、、」
「ちょっとみんな、そんな朱里さんを責めないでよ」
「いや、良いんだよ光ちゃん。みんなの言う通りだよ。もう政府がどうこう出来る状況じゃなくなっちゃったんだ」
朱里さんは少し俯き悲しそうな表情をした。
「けど」
朱里さんはもう一度頭を上げた
「可能性はゼロじゃない。まだどうにか出来る手立てはあると思う。確率において0と100はないんだ。だから私はこの現状に抗ってみたいんだ」
あー、朱里さんは流石だな。
自衛隊だからこうしてられるのか、こうしてられるから自衛隊なのか。
分からないけど、、
「分かりました。私は協力します」
「光もー」
「私も」
「結界はもう直ぐしたらまた張り直せるだろうし、そしたら三日はもつな」
「超能力を工夫すれば俺も擬似結界みたいなの出来るかな」
「みんな、、ありがとう。私、早速政府のところ行ってくる」
「行ってらっしゃい朱里さん」
「大人としてここを守る自衛隊として、私は最善を尽くしてくるよ」
そう言って朱里さんはキャンピングカーを飛び出して行った。
その後私たちは食べ残していた夕飯を再び食べ始めた。
「ねぇねぇ、こう言うのって普通逆じゃない?」
「こういうのって?」
「さっきの朱里さんの言葉。こう言うのって普通子供もが大人に対して言うものじゃない?」
「確かに、普通子供が可能性信じて大人を説得するよね」
「んで、結局自分一人で飛び出すと」
「良い意味でも悪い意味でも私たちは場数を踏みすぎてるからね。すぐに冷静になっちゃう」
「特に沙莉と光と焔は」
「そう思うと草乃もこっち側なのやっぱおかしいよな」
「私はみんなに影響受けまくってるから。それにここまでの旅も十分な場数だったから」
「それもそうだな」
「やっぱ光達がおかしかったのか」
「そうそう私はただの高校生だからね」
「それを言うなら俺もただの異世界転生高校生だから」
「俺もただの超能力高校生だ」
「光もただの魔法少女高校生だよ」
「私もただの特殊部隊所属高校生だから」
そうだよね。
私たちはただの高校生。
ちょびーっと力を手に入れてる人が多いだけの五人組。
「あっ、草乃。腹減ったから追加でなんか食べる物ない?」
「俺も」
「光もなんか食べたい」
「私も」
「じゃあみんなでなんか作ろっか」




