安全地帯の危機
深夜2時頃
『緊急速報緊急速報。バリケードが突破されました。
繰り返します。バリケードが突破されました』
「ん?」
大音量の放送で私は目が覚めた。
「沙莉なんかあったの?」
私は寝起きで何が起きているのかよくわからなかった。
「バリケードが突破されたんだって」
「へぇ〜バリケードが、、、、って、えぇー!!」
「もううるさいなぁ草乃。深夜なんだから静かにしろよ」
「そうだぞ」
私の叫び声で焔と光が起きた。
って言うかあの大音量の放送で起きないとかどう言うことなの
「バリケードが突破されたんだよ。ヤバくない?」
「なーんだバリケードが突破されただけか」
「二度寝するかぁ」
「いやいやいやいや。何でそんな落ち着いてるの?」
「だってバリケードはこの前増強したばっかでしょ。そんなすぐに壊れるわけないだろ」
「そうだよ。どうせ誤報だよ誤報」
「そ、そうなのかなぁ」
そうしてそのまま焔と光は二度寝してしまった。
「あれ?蒼雷は?」
「あの放送が聞こえるなり、すぐさま下に降りたよ。多分テレビでも見てるんじゃない?」
良かった。蒼雷はまともで。
「沙莉も一緒にテレビ見に行こ?」
「そうだね。私たちは問題ないけど朱里さん達が心配だし」
下に降りると蒼雷がニュースを見ていた。
「どう蒼雷、どんな状況?」
「地震と大雨の影響でバリケードが脆くなっちゃってたからバリケードが崩壊したらしい」
「どこのバリケードが壊れたの?」
「瀬戸大橋のところと他に三箇所ぐらい」
「これはどんどん連鎖していきそうだね」
「これからどうするの?」
「どうするって言ったって、どうしようもなくね」
「そうだね。私たちがゾンビを殺したところで」
「そっか。殺しても明日には復活しちゃうし、それまでにバリケード復旧は無理だろうし」
「これは政府にどうにかしてもらわないと」
『これより政府の緊急会見です』
「あっ、始まる」
『えー現在バリケードが破壊されていると言う放送が流れているかと思います。
ですが皆さん安心して下さい。
ゾンビは自衛隊の方々の尽力により安座地帯内には侵入しておりません。
なので今は落ち着いて屋内にて待機していて下さい』
朱里さん達が頑張ってくれてるのかぁ
「でもさこれほんとかな?」
「どうして?」
「だってさ、私たちが来る時、自衛隊の人達全然ゾンビ殺せてなかったよ?」
「確かに、増強作戦の時もそうだったね」
「それじゃあやっぱり俺らが助けに出るしかないか?」
「でも総理が待機してろって言ってるし、それにまだ使ってない秘策とかがあるんじゃない?」
「ここ最近総理はいいことしてる気がするし、とりあえず信じてみよっか」
私たちは政府と自衛隊の方々のことを信じて再び寝ることにした。
そして二時間ほど経った深夜四時頃、キャンピングカーの外から声がして、私は目が覚めた。
「沙莉と蒼雷は気づいてないみたい」
私は起こしちゃ悪いかなと思い一人で下に降りて、キャンピングカーのドアを開けた。
「どちら様です?って、しゅ、朱里さん!?」
そこには雨でずぶ濡れの朱里さんがいた。
「だ、大丈夫ですか?」
「はぁ、はぁ、バ、バリケードが完全に崩壊したかもしれない」
バリケード崩壊した、かもしれない?
「どどういうことなんです?」
「知ってると思うけどさっきバリケードが崩壊して瀬戸大橋にゾンビが流れ込んできたの。
でも草乃ちゃんも覚えてる通り瀬戸大橋の本州側のバリケードが壊れても、一応四国側のバリケードがあったでしょ」
言われてみれば確かに2回クレーンで持ち上げらたはず
「他の場所も同様に二重にバリケードがあるはずだから別にバリケードが突破されても大して焦るはずのことじゃないの。
だけど内側のバリケードが壊れてないはずなのに電波塔や発電所がゾンビに襲われてるの!」
「えっ、何でそんなことが」
「わからない。でも、そのせいで通信手段が失われてたの。私は今日休みだったからバリケード突破の放送を聞いて急いで瀬戸大橋のとこに向かって、ゾンビの掃討作戦に参加してたんだけど途中で電気が無くなって」
そっか私たちはキャンピングカーだから停電してても気づかなかったんだ。
「それで発電所の方を見に行ったらゾンビが何体もいて、排除しようと試みたけど全然ダメでなんとか逃げてきたけど隊の他のみんなは大体、、、」
「朱里さん、、、」
私が朱里さんを慰めようとしていると
「なぁ、そのゾンビってもしかして飛行ゾンビじゃねぇか?」
「え?」
後ろから声をかけてきたのは蒼雷だった。
「ほらいたろ、ここに来る前に」
そういえばしりとりしてる時にぶつかりそうになったっけ
「飛行ゾンビ?そんなのがいるなんて、、、」
朱里さんは絶句してしまった。
「そういえば朱里さんはなぜ私たちのところへ来たんですか?」
そうだ何で私たちのところに来たんだろう。
逃げるならここじゃなくて瀬戸大橋の他の隊員がいるところじゃ
「その飛行ゾンビが瀬戸大橋に向かって行ってたのよ。
あのバリケードは勿論外側からには強いけど内側からなら簡単に壊せちゃうの。
だから多分ここはもう終わる。安全地帯は安全でも何でもなくなる。
だからせめて外で生き延びてきたみんなならここから逃げ出して生き延びれるんじゃないかって。
奈美さんや瑠美さんを連れて逃げて」
朱里さんがここに来たのは私たちを逃すためだったんだ。
「な、なら朱里さんも一緒に逃げましょう」
「それもそうだな。今日あんだけ大人数でもなんとかなるってことは証明済みだし」
私たちが朱里さんを助けようとしたが朱里さんは顔を横に振った。
「私はこれでも自衛隊の瀬戸大橋の副隊長。
最後まで責任を果たさないと。
みんなの逃げる時間は私、いや私たち自衛隊が稼ぐから。
高校生と大学生は大人しく逃げてなさい。
じゃあね」
そう言って朱里さんは走って行ってしまった。




