政府の会見放送
『私は内閣総理大臣の岸辺大造と申します。
我々政府はこの度のパンデミックに対し、数々の対策を講じてきました。
その結果現在、ここ香川に安全地帯を形成することに成功しました。
しかし未だにここに避難できていない国民もいる現状です。
それを受け我々は安全地帯の拡大を図ってきた。
しかし多少の拡大は実現したがこの調子では日本全土どころか四国全体にすら拡大出来ないと思われる。
さらに自衛隊の報告によりこのゾンビのような生物は死を繰り返すほど強くなっていくとのことだ。
よって我々政府は今後拡大作戦を一時中断し、ゾンビの原因究明をする方針に変更しようと思う所存であります』
「政府も無能じゃないみたいだね」
「ちゃんと冷静な判断が出来てて安心だわ」
『だがそうすると言っても安全地帯外の国民を見捨てると言うことではない。
もしこの放送を聞いてる安全地帯外の国民がいるのなら何かしらの方法で我々に居場所を教えて欲しい。
居場所さえ分かれば救助しに行くことが可能であります』
「岸辺総理の中身変わった?」
「語尾もコロコロ変わっておかしいし」
「疲れてんだろ」
『政府からの発表は以上をもって終了させていただきます』
そう言って岸辺総理は頭を下げて、そそくさと会見場を去ってしまった。
その後すぐにテレビ放送も終了してしまった。
「何だよテレビこれだけかよ」
「今日はテスト放送みたいな感じだったらしいからね」
「テレビが出来た頃まで戻ったみたいだね」
「まぁしばらくはこんな感じだろ」
「そっかぁ」
「よし、それじゃあ今から皆んなでDVD借りに行こうよ」
「良いなそれ。でもあんのかレンタルビデオ屋って」
「銭湯であるって聞いたんだよね。ちょっとここからは遠いけど」
「電車とかで行く?」
「電車って今動いてんの?」
「うーん。一応動いてはいるみたいだよ。本数はすごく少ないけど」
「まぁ今から行ったらちょうど夕方には帰って来れるんじゃない?」
「そうだね。じゃあお昼食べたら行こっか」
こうして私たちはお昼を食べて、レンタルビデオ屋に向かうのだった。
一方その頃政府は、、、、
「総理困ります、あんなことを発言されては」
「仕方ないであろう。ああでも言わないと国民は納得してくれない」
「そうかもしれませんが。どうするんですか、これで北海道から救援申請が来たら」
「その時は仕方ない。諦めるしかないだろう」
「それは酷すぎます。命懸けで救援要請してくれるかもしれないのに」
「私だって助ける気がないわけではない少なくとも近場なら助けに行かせるさ」
「総理の考えは全ての国民を助けたいと言うような考えではなかったのですか?」
「私も最初はそのような考えだった。だが現実を見たんだよ。全ての国民を助けるなんて出来ない。私にそこまでの力はない。君らの言うことが正しかったんだ」
「そ、総理」
「それに全ての国民を救うならゾンビになってしまった人も救わないといけない。ならば助けに行くより原因究明の方が大切だと気付いたんだよ」
「ならば何故あんな発言を」
「さっきも言ったではないか。国民を安心させるためだと。国民に不安や我々政府へ負の感情が生まれれば何が起こるかわからん。だったら嘘でも良いから安心して、協力してもらわないといけない」
「そう言うことだったんですか」
「確かに私は嘘をつき、国民を騙し危険に晒した。だが誰かがこうして嘘をつき悪者にならんとこの国は救えん。もとより私も以前の総理も批判されるのが当たり前だったからな。これくらいどうだってことはない」
「何だか総理、パンデミック以前と比べ随分変わりましたね。以前はこんなに真剣に考えたり行動しなかったのに」
「イレギュラーが起き危機が迫った時に人は変わってしまう。私の場合それがいい方向に変わっただけだよ」