プールでの出会い
私達がプール内に戻ってくると蒼雷が椅子の上でぶっ倒れていた。
「あ、蒼雷!こんなとこいたんだ」
「すっかり蒼雷のこと忘れてた」
「おい忘れんなよ」
蒼雷の容態をみる感じちゃんと覚悟を決めてスライダーを降りてきたみたい。
「さぁ、蒼雷は置いといて残りのプールを遊び尽くそーう」
「イェーイ!」
「俺はもうしばらく休んどく」
そういうことで今度は何もないだだっ広いプールでビーチバレーをすることになった。
チームは私&光チーム対焔&沙莉チームでやることになった。
「みんな勿論、能力使うの禁止だからねー」
「分かってるっての。行くぞー」
焔が思いっきりサーブを打ってきた。
「光にまかせてー」
光は綺麗に私に向けてレシーブをしてくれた。
「光いくよー」
私はネットギリギリで光の真ん前にトスを上げた。
「いっくよー」
そう言って光は一度水中に潜り、そして一気に飛び上がった。
「ヒカリンアターック」
光は思いっきり叫びながらボールを打った。
「おーらい、おーらい」
光の渾身のサーブを沙莉が綺麗に受け止めた。
「トスいくぞー沙莉。と見せかけてからのアターック」
焔がトスと見せかけてのツーアタックを仕掛けてきた。
「草乃頼む」
「うん」
唐突な焔の攻撃に、私は思いっきり飛び込んでボールを捉えたが
「あっ、」
ボールはプールの外へと飛んでいってしまった。
「やりぃ。まず1点」
「ナイス焔」
「どんまい草乃。あれは予想できなかったね」
「うぅー。とりあえずボール取ってくる」
私は一度プールから上がってボールが飛んでいった方向へ歩いていった。
「あっ、ボールあった」
ボールを拾って私はプールに戻ろうとした時、蒼雷が誰かと話しているのが見えた。
「蒼雷何やってんだろ」
私は蒼雷の方へ向かった。
「あっ草乃、ちょうどいいところに」
向かっている時に蒼雷が私に気付き、近くの人々との会話を止め話しかけてきた。
「蒼雷何やってるの?この人達は?」
「あーうん今から説明するから3人呼んできて」
「ん、分かった」
私は3人を呼んできて再び蒼雷の元へ戻ってきた。
「蒼雷、みんな呼んできたよ」
「サンキュー」
「それで蒼雷、この人達は?」
「私達はこの近くで暮らしている者で、私は飛雄馬龍虎と言います」
焔が聞くと、龍虎と言った男性が自己紹介をして来た。
「私は向井園佳です」
「僕は小日向凰華だ」
残り2人も順番に自己紹介をした。
「光でーす」
「焔です」
「草乃です」
「沙莉と言いまーす」
「それで蒼雷、龍虎さん達と何の話をしてたの?」
「俺等がここに何しに来たかって話」
「何しに来たって」
「見ての通りプールに遊びに来ただけだよね」
「蒼雷が変なことを言ってたわけではないのか」
なんだかこういう私達に驚く反応久しぶりだなぁ。
「ほんとに君達がここに遊びに来たというのならやっぱり外のゾンビ達も君達が?」
「そうですよ」
「ほとんど光がやったんだけどねー」
あれ?いつもは能力隠そうとするのに今回は隠さないのかな?
まぁ今更隠したって怪しいことに変わりはないか。
「そう言えばここのゾンビ少し強かったんですけど、もしかして皆さん何度か戦ったんですか?」
「あ、はい。私達がここに来た頃に何度か」
ここに来た?ってことは前は別のところにいたのか。
「私達は元々四国の安全地帯に居て、そこが安全では無くなって逃げ出して来たんです」
あーそういうことね。実質私達とは同郷ってことじゃん。
「そうなんですか。実は私達も四国の安全地帯から逃げてきたんです」
あれ?これ沙莉今更無害な高校生演じようとしてる?もう無理でしょ。
「私達は直ぐにここらへんに逃げてきましたが、皆さんはどちらへ逃げたんですか?」
「えっと、私達はキャンピングカーで色んなところを逃げ回ってて、ここに辿り着いたんです」
沙莉もう諦めよう。私達は普通の高校生だとは思われてないよ。それに私達は逃げ回らずに日本全国観光ツアーしてるじゃん。
「そ、そうなんですね」
あ、ほら絶対これなんか怪しんでるよ。
「皆さんはどうやってこの付近で滞在を?」
「僕達は安全地帯からここへ一直線へ逃げてきて、このプールに目をつけたんです」
「目をつけた?」
「はい。元々このプール内や付近には多くのゾンビが群がっていました。そこで私達は周囲のゾンビを全部ここに集めてしまえばここら一帯は安全に過ごせるのではと」
あー、ここもプールだから遊びに来てる人が多かったんだ。しかもプールなんて隠れる場所も防ぐ防具もないから一瞬で広がったわけね。
ゾンビパニック起きた時に居たくない場所ランキング1位が更新されたかも。
「そして私達は一度周辺のゾンビを安全地帯で貰った銃で殲滅し、このプールに仕掛けを施したんです」
「仕掛け?」
「皆さんも先ほど聞いたと思いますが、迷子の放送です」
「確かに聞きましたね」
「そんなの鳴ってたか?」
「蒼雷は多分スライダーの恐怖に夢中で気づかなかっただけでしょ」
「その放送は中だけではなく外にも流れるように細工してそうすることで近くのゾンビを殺さずに一箇所にとどめておけるんです」
なるほどそう言うことだったのかぁ。確かにこれならゾンビを殺さずに退かせるから、安全だしゾンビも強くならないのね。
「そうして私達はゾンビが居なくなったうちに物資調達などを行っていたんです」
「そう言うことだったんですね。余計なことしてすいませんでした」
沙莉が頭を下げたので私達も合わせて頭を下げた。
「いえいえ、良いんです。どうせこの辺の物資は少なくなって来たので移動しようとしていたところですから。ちょうど皆さんが殲滅してくれたので早速今夜にでも移動しようと思います」
「因みにどちらの方へ向かうんですか?」
「そうですね。今のところはもう少し関西の下の方へ行ってみようと思っています。皆さんは?」
「私達は、、、、どこ行く?」
「んーとりま朱里さんに手紙届けに行かないとだし、関東方面でいいんじゃね?」
「光もそれでいいと思う」
「と、そういうわけなので私達は関東へ向かおうと思います」
「そうですか。ではお互いに生き残れるように頑張りましょう」
「そ、そうですね」
そうして龍虎さん達はプールを出ていった。
「さて、ビーチバレーもとい、水上バレー再開しますか」
「今度は負けないよ」
「次は蒼雷も参加だからね」
「はいはい」
こうして、せっかくの出会いは1ミリたりとも無かったかのように遊びに戻る私達なのであった。




