閑話
『名前?そんなのねーよ』
産まれた場所は森だった、親?知らねーな、物心着いた時には狩人さ、獲物を囲んで一斉に襲って、仲間?自分が生きてりゃ良いだろ?死んだら終わる、それだけだろ?
『貴方を呼ぶ時に名前は必要でしょ?教えて』
攫ってきた女に名前を聞かれた、攫われたのに怯えもしない、怖がらない、変な女だ
『お前ら人間は俺達をゴブリンって呼んでんだろ?』
『じゃあゴブリーって呼ぶわ!』
『は?勝手にしろ』
他のゴブリンが寄って来たから、俺の獲物だって追い返したら、何故か俺に懐きやがった
『その女、俺らにも回せよ!』
またか、俺の獲物だって言ってんだろ!
『よこせよ!』
武器を隠し持ってるのを俺が見逃すとでも?
『遅せぇよ』
振り向きざまに斬り捨ててやった
『っち、つまんねぇな』
『おい女、俺と一緒に来るか?』
なんで一緒になんて言ってんだろ俺?
『着いて行きます、貴方は私を大事にしてくれる、そんな気がするの』
意味わかんねーよ
『っち、行くぞ』
人間に言わせりゃ魔物の俺に、攫った俺に笑顔を向けて来る、なんなんだこの感情は?
森を離れて人間の住む場所の近くに着いた
『おい女、お前らの住処の近くだ帰っても良いぞ』
『私は貴方と一緒に居るわ』
何言ってんだこいつ?
『俺は魔物だぞ?』
『守ってくれるでしょ?それに1人ぼっちになるわよ?』
『また攫ったら良いだけだ』
『誰も攫われない様に私は残るわ』
なんで笑ってんだこの女?
『勝手にしろ』
半年は過ぎたか?女の腹が膨らんできた
『貴方と私の愛の結晶よ』
愛?なんだそれ?子供が出来るだけだろ?
季節が過ぎ女は俺の子を産んだ、産婆?居ねーよ、俺が取り上げたんだ、この手で
『貴方、この子に名前を付けなくちゃ、元気な男の子、私と貴方の宝物』
目から涙が出て止まらねぇ、なんだ?魔物だぜ?俺はなのに
『この子とお前を、お前らを俺が守る』
アレから何年過ぎたかな?ゴブイチ、ゴブジ、ゴブミも走り回れる位には時間が経ったか
『この場所に住ませてください!』
『勝手に住みつけ』
勝手に住み着いてる俺に聞くなよ
『ありがとう!良かったな、ほのか!ここなら皆一緒に暮らせるぞ!』
また増えやがった、仕方ねーな、家くらい建ててやるか
『貴方、また産まれそう』
『っち、忙しくなるな』