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ある日 森の中 男娼に 出会った  作者: 自動賽鍵
第2章 魔族領の入口編
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3. 別行動

年度初めで忙しいんです。短くても許して下さい。

 食事の後、老婆に案内されて村の住民を紹介してもらった。酒屋に宿屋、墓守に駐在官、それに早耳屋なんて魔族もいた。名前から何をしているのかいまいち想像が付かない。情報を売ったりしているのだろうか。

 気になったので尋ねてみると、平たく言えば通信塔のようなものらしい。普段は王都で起こったニュースや天気の情報など、魔国王から何か声明があった場合にはその内容を、王都以外に住む者たちへ知らせるために派遣されているのだとか。

 ちなみに戦闘能力もかなり高いようだが、自衛を超えた範囲での戦闘行為が契約の魔法で禁じられているらしい。これは、魔獣などから身を守る術として使われるのを防ぐためなのだとか。仮に地方都市が魔獣の襲撃によって滅びたとしても、早耳屋だけは生き残ることが出来る程度の戦闘力がある者だけが就ける職らしい。


「最近あった魔国王様からの知らせはどんなものだったのですか?」


 ウキアが聞く。確かに気になることではある。本当に重要な、それこそ法が変わるとか、そういった情報しか来ないのだろうか。


「今年は魔国王の管理されている紅眼薔薇の咲きが微妙だったそうだ」


 ────かなり小さなニュースまで来るようだ。




   ◇◆◇◆◇◆◇◆




 夜も更けて辺りが闇に染まった頃、俺たちが夕飯を食べているところに、槍を持った老爺がやってきた。


「んお?誰じゃおぬしら」

「男娼のウキアと申します。人族領から彼に連れてきていただきました。魔族領を巡って旅をしようと思っているのですが、少しこの家に滞在させていただきたいと思っております」

「ほお~、息子が世話になったみたいじゃな。ゆっくりしていきな」


 俺はやりとりを見ながら老爺を観察していたが、恐らくめちゃくちゃ強い。それこそ、プレッシャーだけなら早耳屋にも負けないくらいだ。その当人は「人族ってこっちに来られるんじゃなぁ」なんて言いながら魚を頬張っているが。


 仮に今日出会った魔族の全員がウキアを狙ってきたとして、俺はそれを全て殺してウキアを護れるだろうか。老爺と1対1なら勝つ自信はある。だが、その他の村民も雑魚ではない。

 こちらに来て気付いたことは、魔族だからと言って誰もがとんでもない強さを持つ訳じゃない。少なくとも魔力量においては少年の才能は凄まじいものだ。とは言え、初めて出会った時のウキアよりも魔力の少ない者はいない。


「ご主人様、大丈夫です」


 ウキアがテニスボール程度の玉を飲み込んでから言う。

 俺の眼が正確だとは思っていない。戦闘能力を見極めるのならともかく、害意の有無など俺には分からない、だから、ウキアが何故大丈夫だと言うか理解できない。

 しかし、俺には信じることしか出来ない。いや、信じることは決まっている。そしてウキアが言うのだから村民たちがウキアを襲うことは無いのだろう。だから俺は、イレギュラーが無いことを祈るしかない。


「お父様、魔吸を見せていただけないでしょうか」

「お父様なんて柄じゃない、爺ちゃんでええぞ。あと魔吸なら明日教えてやろう。代わりにちと頼みたいことがあってな」

「はい、僕に出来ることであれば」

「いんや、そっちのあんちゃんにやってほしいんじゃよ」

「俺ですか?力仕事なら出来ますが……」




   ◇◆◇◆◇◆◇◆




 さて翌日、俺は山の中にいた。


「あれかぁ……」


 俺の視力でギリギリ見える距離に蠢く毛玉たち。俺が今から依頼されて駆除しに行く魔獣だ。通称は棘羊。魔法で毛皮を剣山のように硬く尖らせて、高速で突進してくるらしい。

 遠くにいるせいでよく分からないが、体高は俺の腰程度でほぼ球に近い形状の身体をしている。ただし、群れの長ともなると体高は俺の身長を超え、硬さも尋常では無いとか。


 ウキアに魔吸を教える代わりに、爺さんでは手に負えないあいつらを駆除するのが俺の仕事だ。今のところは散らばった群れの一部が村に近付いたところを駆除する程度で十分らしいが、一斉に襲ってくることが無いとも限らない。そうなれば村を捨てて逃げる必要があると。


「でもまぁ……丁度良かったな。どれだけ強くなったか試したいし」


 森神を討伐した俺は、おそらく遙かに力を増した。いや、強くなった確信はあるのだが、それを全力で振るう機会は無かった。

 だが、村から山2つを隔てたここなら、全力で動ける。地形を変えても問題ない。


「派手にやろうか」


 どうにも口数が増えている。不安か、高揚か。どちらもあり得るがそんな思考を吹き飛ばすように加速する。十分に速度が乗った所で地を蹴り、背中に風を発生させて更に速く飛ぶ。

 同時に、剣に風を纏わせる。強化魔法を試した時よりも鋭く、分厚く、重く。俺に制御できる限界まで溜めた風を、平原で群れている羊たちに全力で放った。

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