28. 旅支度
ショタの逆レも大好物です
はじめは少年を待とうと思っていた俺たちだったが、1度終えた女性がもう1周しようと話しているところを見て、しばらくは解放してもらえないだろうと買い物へ出ることにした。
「そもそも旅支度って何が必要なの?」
「歩くのであれば、水と食糧と天幕が最低限必要ですね。ただ、その辺りは辺境伯様に頼めば用意して下さると思いますので、我々が用意すべきは魔族の方々に喜ばれる物かと。人間も魔族も思考はそう変わらないようですし、土産物があれば邪見にはされない……のではないでしょうか」
普段はなんでも教えてくれるウキアだが、この話題に関しては自信の無い様子だ。魔族の風俗など知らないだろうから当然だろう。
そして、ウキアと相談した結果、土産は単純な効果を長く維持する魔道具に決めた。『別に必要とする物では無いけど物珍しい』枠だ。魔族は万人が全属性の魔法を使えるらしく、言ってしまえば魔道具など必要としない。火を起こすのも、水を用意するのも、室温を調整するのだって全て自前の魔法で行えるのだから、魔道具をわざわざ用いる必要は無い。
だからこそ瞬間的な効果ではなく、一度魔力を注げば長時間効果を発揮する魔道具は、それなりにウケるんじゃないかという考えだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
さてやって来たのは、森神討伐前にも来た爺さんの店だ。なんだかんだで倒れた爺さんの様子を再び見たのは今回が初めてだったので、無事なようで安心した。
爺さんは俺たちを見てすぐに跪いて延々とお礼を言い出したので、落ち着かせるためにも土産になりそうな物を持ってきてもらうことにした。
「お、これなんか良さそう」
まず俺が見つけたのは、香りを出し続ける魔道具だ。柑橘とミントを足して3で割ったような香りで、大して強くないのもあって、万人受けするんじゃなかろうか。
平均的に魔力が少ない人間が使うには、あまりに実用性が無いため売れ残っていたらしいが、年若い少年ですらあの膨大な魔力を持つ魔族なら、何ら問題なく運用できるだろう。
「ご主人様、こちらはいかがでしょう?」
「なになに……へぇ、面白い」
ウキアに渡されたのは、音を遮る結界を張る魔道具。外の音は内には聞こえず、内から外も同様に聞こえない。実用性はあるものの、おおよそ1畳程度の範囲では密談にも狭すぎる。さっきの物と同じく売れ残りらしい。
「そんなもんいくら持っていってもらっても構わないんだがね、もっと使い勝手の良いやつの方が喜ばれるだろ?」
これなんかどうだい?と爺さんが出したのは、水の生成と浄化の効果がある魔道具。水を出し、手を洗うなどした排水を浄化できるものらしいが、正直、直接水を出せる魔族には必要ないだろう。自分で出した水なら形状や温度を操作できるらしいのもあり、魔族へのお土産には適さないように思った。
結局俺たちは不人気な売れ残り商品ばかりを選び、「そんなもんで金は貰えない」と言われて1銭も払わずに店を出た。まぁ、爺さんの様子からして、俺たちが何をどれだけ選ぼうが金を払わせる気はなかったと思うが。
「あとはこっちの食べ物が良さそうだけど、ウキアは魔族にウケそうなもの分かる?」
「彼に聞いた方が良いでしょう。彼の嗜好が特別尖っていたとしても、最低限珍しいものは選べます」
「なら先に辺境伯サマからいろいろ貰おうか」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「────という訳ですので、我々の旅装や野営道具を用立てていただけないでしょうか」
「分かった。志願兵に持たせる程度の物であればすぐに用意しよう。10日あれば上等なものも出せるが、どうだ?」
「いえ、すぐに準備できるもので十分です。ありがとうございます」
「そうか。ところで、魔族の少年はどうした」
「まだ娼館にいるのではないでしょうか。朝方には開放されると思います」
「なぜ……いや、言わなくて良い」
用が済んだら行けと、辺境伯サマに部屋を追い出された。
その後昼食を摂り、部屋でイチャついていると、扉がノックされた。いつの間にか夕飯前の風呂に入る時間になっていたらしい。
風呂でもウキアと一緒だから関係ないかと思っていたが、中でメイドさんが待機していた。ウキア曰く、そもそも風呂はメイドさんに世話してもらって入るところなんだとか。その言葉通り、ウキアは当然のようにメイドさんに体を洗ってもらっている。
じゃあなんでこの前はいなかったのかと言えば、俺が1人ゴミを潰したのを見て、待機していたもう1人も怖がって逃げてしまっていたらしい。
ウキアと2人だけで良いのになぁなんて考えながら、風呂の時間は過ぎていった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
俺たちが部屋に戻ると、旅に必要なものが用意されていた。ウキアは手早く確認を済ませ、ついでにお土産も纏めた荷造りまでしてくれる。俺が手伝えることを探してあたふたしている内に、全ては終わってしまった。
「ご主人様、少し多く荷物を持っていただくことになってしまうのですが、大丈夫でしょうか」
「そりゃもちろん。全部持ちたいくらいだけど、それは嫌なんでしょ?このくらいが落としどころだね」
そうしてひと段落着いたタイミングで、丁度良く夕食の時間になった。今日は俺たちがこの街で過ごす最後の夜ということで、豪勢な食事で送ってくれるらしい。
街歩きをしながらの屋台飯も良いが、やはり権力者お抱えの料理人が作るものと比べると数段落ちてしまう。しばらくは旅続きで中々そういったものを食べる機会は無いだろうし、たらふく贅沢な食事を楽しもう。
まぁ、いくら食っても腹が膨らむことは無いのだが。




