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ある日 森の中 男娼に 出会った  作者: 自動賽鍵
第1章 辺境伯領編
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23. 強くなる瞬間

 煙が晴れる。目の前にあったのは、肉がひしゃげ、毛皮のあちこちから骨が突き出している、無残な姿になった森神であったもの。

 巨大質量と鋭利さ、そして濃密な魔力を兼ね備えた巨岩は、森神の分厚い毛皮と魔力壁を容易く貫通し、全身をミンチにした。


 ウキアの凄さを世界に見せつけられたような気がして、変ににやけてしまっていたが、物音がしてそんな場合ではなくなった。


「マジか。すげぇな」


 森神がほんの少し動いた。意識があるかは分からないが、少なくとも息はある。とは言え、俺たちの勝ちは揺るがない。もうとても戦える状態にないのは分かっている。

 周囲を見渡し、剣を見つける。それを右手で拾おうとして、前腕が牙に貫かれたことを思い出し、大穴の開いた左手で掴む。人差し指と中指は骨まで貫かれているが、残り3本の力が効くならどうにかなる。


「介錯してやるよ」


 森神の無事な側の眼がこちらを向いたような気がした。尤も、俺はそれが見える位置にいないから分からないのだが。


 ゆっくり剣を持ち上げる、肋骨が酷く痛むが気にしない。


「じゃあな。来世では真っ当に生きろよ」


 剣を振り下ろす。もはや魔力壁すら無いも同然で、楽々骨を断ち切った剣が地面に埋まる。森神の命が消えるのを確認した俺は、柄を握る手を離し、反動のように背中から地面に倒れこんだ。




   ◇◆◇◆◇◆◇◆




 終わった。


 森神の魔力が著しく小さくなった。おそらくは残滓が残っているだけだろう。そう感じ取った瞬間に膝から力が抜け、前のめりに倒れこんだ。


 ここは崖の際。そんな所で前のめりに倒れこんだらどうなるか。



(落ち――――っっっっ!!!)


 落ちる。と理解し終えるよりも先に、身体が莫大な魔力で包まれた。いや、魔力だけじゃない。膨大な魔力を扱う代償に極限まで酷使したはずの肉体にも、力がみなぎっている。

 即座に風で落下を制御。同時に、なぜか鋭くなっている感覚で、ご主人様の状態を魔力感知で探る。


(ご主人、様……?)


 ご主人様の反応が明らかに強くなっている。森神と闘う以前よりもさらに強い。それに、肉体の損傷も無い。生命力に満ちている。僕の現状もそうだが、一体どうなっているのか。


 そう考えている内にご主人様の傍に降り立った。辺りは死闘の痕でボロボロになっている。僕が落とした岩も、命中していたことは分かっていたが、こうして直接確認すると安心してしまう。


 ご主人様は血だまりの中で仰向けに転がっていたが、身体は問題ないだろう。魔力で感じても、直接見ても、傷ひとつ無い綺麗な身体だ。


「すげー。よく当てたなコレ」

「ご主人様が抑えていてくださったのでしょう。少なくとも、そうでなければここまで正中線には直撃しなかったでしょうから」


 僕を追って降りてきた魔族の少年に、僕はごく自然に返せた。それはきっと、助けてもらったことによる親近感に加え、僕の魔力が激増したことにある。


「あなたは森神の首を持っていただけますか」


 魔族の少年に軽い気持ちでお願いする。別にご主人様は気にも留めないだろうが、この首があればご主人様は、街を護った英雄に変わる。今のままでは、衛兵から盗みを働き、街を危機に追いやった犯罪者となってしまう。ご主人様がそんな不当な扱いを受けるのは、僕が許さない。


「いいよ。街まで戻るのか?」

 

 少年はあっさり承諾してくれた。まぁ、先程の戦闘だって何の見返りも無く手助けしてくれたのだから、断られるとは思っていなかったのだが。

 それに、魔力量から考えても、強化魔法の適性が無くともこの程度の運搬は余裕だろう。やろうと思えばかつての僕でも出来るのだから、この少年にできない筈も無い。


「はい。共に闘ったと言えば、あなたも受け入れられるでしょう」

「じゃあこれも持っていくか」


 魔族の少年は森神の角を握り、巨大な顔を持ち上げて肩にかけた。そして、ついでと言わんばかりに尻尾を掴み、森神の巨躯を引き摺りだした。


「首から下は要らないのでは?」

「美味そうな肉じゃないけど、それ以外は色々使いようがありそうじゃん。それに、少なくとも核は欲しいけど、ここで探すの面倒だし」


 まぁ、持っていけるのなら良いだろう。街までどの程度歩くのかも分かっているだろうし、首から下だって無いよりはある方が良い。

 あと、核というのは魔力結晶のことだろうが、どうして欲しいんだろうか。加工したりするんだろうか。ご主人様が目を覚ましたら聞いてみても良いかもしれない。魔族の習慣など聞く機会はそう無いから、知識を手に入れておきたい。


「分かりました。では、行きましょうか」


 ご主人様を横抱きにすると、初めて会った時のことを思い出す。

 暗殺者から隠れるのも限界に達していた時、ご主人様という光が現れ、温かい魔力で治療してくれた。その時の僕はご主人様を利用することしか考えていなかったけど、それでもあの安堵は間違いなく本物だった。


 あの時ご主人様が抱きかかえてくれたように、がっちりと力を籠める。幸い、いくら力がみなぎっていても、僕の腕力ではご主人様を潰したりしない。安心して全力でご主人様を抱きしめ、街へ向けて歩き出した。


男の娘とショタの組み合わせは最高ですね。

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