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ある日 森の中 男娼に 出会った  作者: 自動賽鍵
第1章 辺境伯領編
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21. 初めての全身全霊

お久しぶりです。研修終わりました。

FGOが忙しいですがなんとか投稿できました

 俺の挑発が怒りの引き金を引いたか、森神が岩の兜を纏って突っ込んでくる。俺は、その大型トラックよりも大きく硬い突進を、戦力分析のため真正面から迎え撃った。


「砕け散れ!」

「おっっ……らぁ!」


 風を纏った剣が岩と触れた瞬間、圧倒的な質量差で俺の身体が後ろへ吹き飛んだ。たっぷり5秒ほども宙を舞ってから、回転しながら墜落し、2度バウンドしてから体勢を立て直す。

 たったそれだけの時間で、俺の中の戦闘マシーンが分析を終えていた。


(力は互角。でも質量差がデカすぎて勢いには勝てない。速度は優勢。魔力は互角だけど、あれだけ削ってもまだ互角か)


 結論としては、距離を詰めてフットワークでかき乱す。そこで広範囲魔法を打たせて削り殺す。距離を取られると不利の方がデカいのは間違いなく、速度の有利も発揮できない。寄りすぎなくらい密着してやろう。


「そんじゃこっちの番だ」


 森神を中心として螺旋を描くように、周囲を回りながら距離を詰める。行く手に伸びる土の槍も、横から飛んでくる岩の弾丸も全て避け、ようやく剣の届く間合いまで近づいたが、そこで森神と離れるように身を投げ出す。

 飛び退いた俺の残像を、森神の足元から全方位に伸びた土の槍が滅多刺しにする。一瞬遅れていれば、俺もああなって……いたかは分からないが、それなりの損傷は受けたことだろう。


「なんだ?自分の番と言っておきながら逃げるだけだな」


 森神が勝ち誇ったように言う。


「そういうのは一発でも当ててから言うもんだろ。家畜の神サマ?」


 森神の魔法がいっそう苛烈になる。だが、明らかに雑だ。走っている方向に置いて(・・・)はくるものの、緩急が無いから楽に避けられる。


 すぐに距離を詰め、今度こそ上段から剣を振り下ろした。だが森神は剣閃に角を合わせ、その曲線で力の方向を変えて地面に受け流した。

 そうして体勢が崩れた俺に、森神が再び頭突きを食らわせようと足に力を籠める。しかし、森神は正面ではなく、真横に飛び退くことになった。


「もうちょっとで頸動脈イケたのにねぇ」


 森神の頬の毛が切り裂かれ、地面にハラハラと落ちる。俺が鍔に近い指を支点に、剣を回転させて付けた傷だ。てこの原理を考えれば力は1/10ほどにもなってしまうが、そもそも深手を負わせるつもりは無かったから問題ない。


 今の攻撃で目的は達成された。どうやら想像は正しかったようだ。


「お前、俺が斬った左目の視力戻ってないだろ」


 森神の反応は無い。しかし、回避行動の遅さに加え、対して力が出る筈も無い斬り方なのに大袈裟に避けたこと。そして今もわずかに傾いている顔の向き。左目は見えておらず、気配で斬られそうだと感じて避けたとすれば辻褄が合う。


「魔力の節約なのかそもそも眼を治せるほどの腕は無いのか。どちらにしたって、神を名乗るには格好付かないよな」


 嘲笑交じりにそう言いながら、人差し指をクイッと曲げる。後から思えば、ジェスチャーが通じなくても全くおかしくない相手だったが、通じてくれて良かった。


 森神の再度の突進。速度はあるものの、やはり直線的に過ぎる。闘牛士のようにギリギリで避けてカウンターといきたかったが、魔法の気配を感じたので過剰に大きく避ける。すると、身体の側面に岩の棘が生えた。

 加えて、俺の背後の崖を足場にし、ボールが跳ね返るように再び突進をする。俺はその突進を避けてようやく気付いた。


 誘われた(・・・・)


 そそり立つ断崖の割れ目。両サイドに硬い岩壁があり、この森神の突進には最も適した地形だろう。相手との性能差は俺の中の戦闘マシーンが教えてくれるが、戦略は俺自身の頭で考えるしかない。


 身体は勝手に最適解を選んでくれるのになぁと独りごちる。こっちはこっちで思惑があるものの、それにかかりきりでは駄目だと実感させられた。学びの機会だとしておこう。


「勢いは良いけどそれだけだな」

「遺言はそれで良いのか?」


 森神がニヤリと嗤った……ような気がした。もちろん牛の表情など分からないが。


 もう突進を20回は避けただろうか。しっかり距離を確保して避け、森神の駆け抜けた方向を見ると、岩壁よりも手前に岩が現れていた。森神の魔法だ。自分に向けられていないから気付けなかった。

 それが何を意味するかと言えば、森神が転回するタイミングが早くなる。要するに、一定のリズムで避けていた俺には、次の突進を避ける手立てが無い。


 感触だけが酷くゆっくりに感じる。初回に打ち合ったときは、しっかりと迎え撃つ準備をして正面からぶつかった。だが今回は地面に足がついておらず。体勢も横向きだ。

 右脇腹に硬い岩が触れる。肉がひしゃげ、あばらが折れ、肝臓が破裂する。嫌な感触を冷静に受け止めた一瞬の後、岩壁に叩きつけられた。


 チカチカ点滅する視界の中、森神が迫るのが見える。あと1歩で俺にとどめを刺すべく踏み込むだろうというタイミングで、森神の足元から無数の風の刃が舞い上がった。


「終わりだ」


 岩壁にめり込む俺の身体に、森神の鮮血が降り注いだ。

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