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ある日 森の中 男娼に 出会った  作者: 自動賽鍵
第1章 辺境伯領編
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18. 未知との邂逅

 蜥蜴車とはなんぞやと思っていたが、文字通り蜥蜴の牽く四輪車だった。尾の無い蜥蜴は馬と変わらないくらいの体躯があり、人を襲ったりしないのだろうかと考えてしまう。


 そんな事はさておき、いざ乗り込んで発車しようという所で、ウキアから「ご主人様、体勢を崩さないよう踏ん張ってください」と声がかかる。何のことか分からないがとりあえず両足を踏ん張り、ウキアを腕で抱き留める。

 次の瞬間、急加速で身体が前に振られる。進行方向に背を向けていたため、正面に座る騎士団長サマに飛び込みそうだったが、あらかじめ力を入れていたことでなんとか耐えられた。


「速いのは間違いないがこの加速がな」


 苦い顔をして辺境伯サマが言う。窓から家々の明かりが見え、辺境伯サマの言葉通りに早い乗り物であることが伺える。それに、整備されているが平らとは言い難い石畳を進んでいるのに、まるで揺れが無い。後から聞いた話では車輪を魔法でわずかに浮かせているようで、流石はお貴族様の乗り物だなぁと感心していた。


 やがて御者から声がかけられ、今度は対面の2人が踏ん張り、後ろに吸い付くような力と共に車体が停止した。


 「どうぞこちらへ」


 少し装飾が付いた鎧を着る兵士が俺たちを案内する。蜥蜴車を降り、その案内に従って歩いていると、扉の前で兵士が立ち止まって俺たちに道を譲った。


 「貴様たちは辺境伯様の後について入れ」


 そう言った騎士団長様は、躊躇することなく扉を開け、険しい表情で部屋に足を踏み入れた。


 後に続いた辺境伯サマの背中を見ながらウキアと共に部屋に入ると、語られた通りに魔族の少年がいた。

 僅かに黄みがかった肌には、血管が張り巡らされるように青い紋様が浮かんでおり、後ろで結った白髪をかき分けるように、前頭部から後ろへ同じく青い角が伸びている。魔族という存在を知らずとも、人間とは異なる存在であることが分かるだろう。

 しかしそれ以外、顔立ちや体格などは10歳前後の人間と大きく変わるような事はない。少年と少女との境界があやふやな年齢だ。


「ようこそ、魔族の使者殿。突然の事で歓待の準備は出来ていないが、どうか許されよ」


 俺が魔族の少年を観察している内に、辺境伯サマが初めの一言を放った。それに対して少年がどう反応するのか。こちら側4人の意図がおそらく1つになっていたであろう所に、少年は思いもよらぬ返答をした。


「使者?」


 少年が首を傾げ、それに合わせるように俺も首を傾げた。ウキアも含むほか3人はリアクションを取らなかったのを見て、慌てて俺も体勢を整えたが、流石に誤魔化しきれるものではない。少年は同じ動きをした俺と目を合わせて言う。


「俺、人間の王様がみたくて来たんだけど」


 俺に言われても困ると辺境伯サマの方を見ると、少年も視線を横へ動かす。


 当の辺境伯サマはじっと黙って考え込み、たっぷり時間を取ってから言葉を絞り出す。


「貴殿が普段、どこに住んでいて、何をしているか教えていただけないか?」

「ここからまっすぐあっちに行ったところにある海辺の村で、婆ちゃんと魚獲ったり魔獣狩ったりしてる」


 一方を指さしながら淀みなく答えた少年とは対称的に、辺境伯サマは再び長く考え込み、やがて決心したように言った。


「……魔国から、来たわけでは、ないと?」

「うん。人族領から多分一番近い村だもん。ド田舎もいいとこ」

「そうか────。まぁ、明日1日はここにいてくれ。明後日以降なら街を案内しよう」


 それだけ言って、辺境伯サマはよろよろと部屋を出ていった。それに続いて騎士団長サマも出ていき、部屋には俺とウキア、そして魔族の少年の3人が残された。


「良かったら俺たちとも話してくれないかな?」

「いいよ。代わりに人族のこと教えてよ」

「そちらに関しては僕が話しましょうか。王族についてもそれなりに知ってますよ」

「やったぁ!さっきの魔力で膨れた人は王様じゃないんだろ?」

「ええ。あの方は辺境伯といって、国の端を護る役割の人ですね。この街では一番偉いので、ここら一帯の王様と言っても良いかもしれませんが……」


 ウキアが少年と話している間、俺は机の下でウキアの手を握っていた。過去に魔族を見た話をしている時ですら恐怖を見せていたウキアが、こうして対面して話すのが平気な筈ない。

 小さく震えるウキアの手を隣で握り、少しでも安心できるように願いを込める。それが効いたのか分からないが、ウキアは最後まで恐怖を見せることなく、少年との話を終えられた。




   ◇◆◇◆◇◆◇◆




「ウキア、お疲れ様」


 部屋を出たとたんにウキアが俺に体重を預ける。肌は脂汗でじっとりと湿っていて、ウキアの緊張が伝わった。


「恐ろしい魔力でした。僕はもちろん、騎士団長様やご主人様よりも多いです」

「そりゃすごい、あんな子どもでもそれか」

「話を聞く限りでは、ここに来るまでに数えるのが面倒なほど魔獣を倒してきたようです。それも()()()()ものを。」

「あっちの魔獣は強いの?」

「はい、直接対面した事はありませんが、人族領の魔獣とは比較にならない強さと聞きます。この近辺の魔獣は人族領ではかなり強い部類ですが、それでも魔族領の魔獣とはまるで違うそうです」


 要するに、あの少年は人間から見れば化け物だということだ。

 しかし、魔力で上回られていようとも問題ない。そもそも俺は魔法を大して使えないし、不得手な領域で負けていようと剣があればウキアを護れるのだ。


「飯食ったら今日はさっさと寝ようか。明日は万全の状態じゃないといけないし」

「…………はい」


 ウキアが言い淀んだのであろうことは分かる。明日俺が死ぬかもしれないのだから、最後の晩にと提案しようとしたのだろう。

 だがそれを言わなかったのは、きっと俺を信頼して、いや、俺を信頼しようとしてくれているからだ。

 なら俺は"ご主人様"として、その信頼に応えよう。

当然の如く、構想段階では魔族とこの段階で出会う予定はありませんでした。

だからプロットが書けないんですね。

まぁショタなので良いでしょう。

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