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ある日 森の中 男娼に 出会った  作者: 自動賽鍵
第1章 辺境伯領編
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17. 祭り当日・夜

 日も傾いた頃、ウキアと2人寄り添って歩き、再び魔道具店へやってきた。

 櫓の下見をした後はたっぷりデートを楽しみ、別の場所でもう一度演奏を披露したりと、そんな1日の〆にしては味気ない場所だが、明日の作戦の要になるかもしれないのだから無視するわけにはいかない。


「触媒は完成しましたか」

「おう、他のモンには使えんで、気を付ける事さね」


 ポンとウキアの手に拳大の石が置かれた。黄土色の石に刻まれた紋様が紅く輝いている。

 ウキアはそれを注意深く眺め、やがて驚いた表情で呟いた。


「かなり高出力の触媒ですね。男爵家が家宝としていてもおかしくないくらいに上等な品です」

「そりゃ、あれだけの魔力結晶を消費したんだ。それなりのものが出来るさ。だとしても消費に見合った効果とはいかないがね」

「……これほどの腕前が知れ渡っていないという事は隠していたのでしょう。なぜ作っていただけたのですか?」


 後からウキアに聞いた話では、いくら魔力結晶を消費しようとも、作成者の腕前次第で触媒の出来は頭打ちになってしまうという。今回手に入れたものを作ることが出来ると世に知られれば、まず間違いなく王家が召し抱えるのだとか。

 人の口に戸は立てられない。知れ渡っていないという事は、そもそも技量を披露していなかったという事。ウキアは、この年まで秘匿し続けていたものを、どうして今俺たちに見せてくれたのかと言いたいのだろう。


「お前さんたち、森神を殺すんだろう?」


 爺さんが重々しく呟いた言葉に、俺は動揺を隠せなかった。その後すぐに取り繕ったが、横のウキアが完全に反応を隠しているのが無駄となったことに気づいて歯噛みしていると、爺さんは続けて話した。


「────明日櫓に登る娘、ありゃ孫でな。豊穣の神でも、街の守り神でもない、ただの魔獣に喰わせてなるものかと頑張っちゃみたが、所詮は魔道具士。とても敵いっこない。そんな時にお前さんたちが来た」


 爺さんはそこまで話すと、席を立って店の奥へと続く戸に手を掛けた。しばらくガタガタと戸を揺すっているから、建付けが悪いのかと思っていたが、やがてその戸を外して壁に立てかけた。


「なんでも持って行ってくれ。団長の嬢ちゃんでも駄目と聞いて諦めていたが、最後の希望に託す。どうか、森神を殺してくれ」


 そう言うと爺さんは崩れるように膝と手を地面に降ろし、頭を深く下げて動かなくなった。


 俺がどうすべきか悩んでいると、ウキアはすぐに爺さんに駆け寄って丸まっている背中に手を当てた。宥めて落ち着かせるのかと思ったが、背中に当てた手から魔力を流している。


「ウキア、何してるの?」

「魔力を過剰に供給して、体力を無理やり回復させています。恐らくこの触媒を作るためにかなり無理をしていたのでしょう、魔力も空に近いですが、肉体から生きようとする力を感じません。生命力を魔力に注ぎ込む、邪法に近い魔力操作を行ったのだと思います」


 なんと、どうやら爺さんは死にかけていたらしい。ウキアは素早く処置を終えると、爺さんが開けた戸の奥を眺め、いくつかの道具を手に取った。


「僕は出来る限りの増幅魔道具を使います。ご主人様には……魔力回復薬くらいしかまともに機能するものは無いでしょう」


 この辺りですね。と、ウキアが俺に3本の瓶を渡した。


「魔道具を使うよりご主人様が剣を振った方が良いです。魔力が切れた時はそれをすべて飲めば7割くらいは回復しますから、一気に飲み干してください」

「あいよ。じゃあ腰に括り付けられるような装備も見つけないとね」

「ご主人様に似合うのを探しましょう」




   ◇◆◇◆◇◆◇◆




 さて、あれからウキアにホルダーベルトを選んでもらい、上機嫌で辺境伯邸に帰った俺たちをメイドさんが待ち構えていた。


「お帰りなさいませ。辺境伯様がお待ちです」

「食事は後ということで宜しいですか?」

「はい、緊急ということで軽食を用意しております」


 俺たちは風呂には入らず、メイドさんの後を歩いて昨日と同じテーブルに着いた。待っているという言葉通り、辺境伯サマは席に着いて待っていて、俺たちを見るや否や「座れ」と言った。


「率直に言う。魔族の使者が来たから私の護衛をしてくれ」


「何故ご主人様が?」


 俺の手には負えないと感じたのか、ウキアがすぐに聞き返してくれた。

 魔族についてウキアから軽く聴きはしたが、当然詳しくは知らない。俺としては割と興味もあり、話を受けても良いとは思っているが、安請け合いはウキアにも悪影響を及ぼすかもしれない。交渉役は任せておくのが良いだろう。


「騎士団長が遠方から魔力を視て、自身だけでは不足だと判断した」

「そもそも使者なのですから、護衛など最低限で会うべきでしょう」

「その魔族は子供の姿をしていて、偉い者を見たいと主張しているらしい。まともな使者とは思えん」

「聞いている限りでは、魔族の子供が人間の権力者を見たいと魔族領から来たと思えますが」

「魔族の言葉を信じると?」


 そこで問答は止まり、ウキアがこちらを見て「あとはご主人様にお任せします」という表情をした。

 正直、ここで振られても困るのだが、俺のしたいようにすれば良いのだろう。


「ま、護衛してやるかね。その代わり俺も魔族と話す時間が欲しいんだが」


「……それは、魔族次第だな。あちらが了承するならいくらでも話せば良い」


 辺境伯サマはそう言うと、メイドさんを呼んで何かを指示する。


「では、準備が終わったらここに戻ってこい」

「我々が準備をさせていただきます」


 追加のメイドさんがどこからか3人足され、4人になったメイドさんが俺たちを別室へと連れ込んだ。

 ウキアを眺めながら、されるがままに衣装に袖を通す。やたらに装飾が付いている割には動きの邪魔にはならず、護衛向きである事は分かるが、いかんせん落ち着かない。

 ウキアは平然としているから特別変な格好ではないのだろうが、護衛ならもっとラフな格好で良いだろうと思ってしまう。


「ご主人様、良くお似合いです」


 俺の着付けをしているメイドさんよりも先にウキアが褒めてくれるが、贔屓目抜きにしてもウキアの方が遙かに似合っている。纏う空気というか、気品がまるで違う。


「ありがと、ウキアも綺麗だよ」

「ありがとうございます。衣装を引き立てるのも男娼の立ち振る舞いですから」

「お二方とも、申し訳ありませんが急いでいただけますと幸いです」


 メイドさんに急かされて向かった部屋には、辺境伯サマと騎士団長サマが俺たちと同じくおめかしして待っていた。


「では行くぞ。蜥蜴車を用意してあるから乗り込め」













キャラクターが勝手に動くタイプの書き手なので、14時点では爺さんの影も形も無かったし、16時点では生贄との関係も全くありませんでした。

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