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ある日 森の中 男娼に 出会った  作者: 自動賽鍵
第1章 辺境伯領編
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13. 愛故の

先週は投稿できなくてすみません。土曜出勤だったんです許して下さい。

 あれからも街を周って、散々ウキアを着飾って辺境伯サマの家に戻ってきた。


「お帰りなさいませ。辺境伯様がお待ちですので、身を清めていただいた後、食事の案内を致します」


 メイドさんが迎えてくれたが、既に待っていると言うなら、先に食事にする方が良いのではないだろうか。


「食事の前に身を清めるのは、この国の貴族では絶対の行いです。ご主人様には関係の無い話ではありますが、今立つ地の流儀に倣っていただければ」


 俺が疑問を口に出すのに先んじて、ウキアから作法を教えられた。

 なんでも、この国で一番勢力の大きい宗教の教えらしい。


 ありがと。と、ウキアの頭を撫でる。


「それではご案内致します」


 俺たちのやりとりを気にせず、メイドさんが前を歩き出した。

 昼間と同じメイドさんのように見えるが、もう外が暗くなっている。一体、労働時間はどうなっているのだろうか。


「どうかされましたか」


 メイドさんが振り向いて、俺に声をかけてきた。どうやら視線が気になったらしい。

 闘って勝てることだけは分かるが、特殊な能力を持っているとか、細かな素養については、少なくとも今の俺には感じ取れない。

 気配を感じ取れる能力みたいなものがあるなら、是非身につけたいものだが。


「いえ、少し考え事をしていました。ジロジロ眺めてしまってすみません」

「その必要は無いように思いますが、夜伽をお求めであれば申しつけください」


 そう言ってすぐに歩みを再開した()の目はウキアに向いており、一瞬見せた極めて冷たい視線が廊下の温度を下げていた。

 視線は俺に向いていなかったが、その冷たさと不細工な面の裏に隠した軽薄な笑みが、ウキアを侮辱していることを十分すぎるほどに伝える。


「おい」


 俺の呼びかけに、表面だけは繕った女が返事をしながら向きなおろうとした。

 だが、身体は動かない。全身が小刻みに震え、取り繕っていた内面の薄ら笑いが恐怖に染まる。


「死ぬか?」


 ひとりでに殺気が噴き出す。それを一身に受けた女が腰を抜かし、廊下を濡らしたところで静止が入った。


「ご主人様、その辺りでお許しを。男娼ですから嗤われるのにも慣れていますので」


 慣れているからと言って、黙って我慢する理由にはならないだろう。

 それに、ウキアの言う通りなら、ウキアは俺の所有物だ。人の大事にしているものを笑うのだから、それなりの覚悟を持ってもらわないといけない。


 剣を抜き、女の首筋に浅く傷をつける。組織液が滲む程度でしかない切り傷だが、女にとっては恐ろしいものだったようで、あれだけ震えていた身体が、時でも止まったかのように静止し、やがて気絶した。


「ウキアが優しくて良かったな」


 剣を収め、ウキアに「行こ」と声をかけて、突き当たりに見えている浴場へ歩こうとしたが、廊下に響いた声に止められた。


「何だ!!」


 騎士団長サマが廊下を走ってやって来た。前の開いたバスローブのような服から色々とまろび出ており、見る者によってはその巨大な乳房と分厚い腹筋に魅了されていたかもしれない。

 まぁ、俺はウキアに心を奪われているから、そんな余裕は無いが。


 そんな、魅力的な格好をした騎士団長サマは、俺の殺意を感じ取って気絶から飛び起き、治療室から大急ぎで走ってきたらしい。俺と、失禁しながら気絶している女を見て、大きくため息をついた。


「貴様か……。そのメイドが何かしたのか?」

「ウキアを馬鹿にした。首が落ちなかっただけ感謝してくれ」

「────まぁ、不問とするようお伝えする。とりあえず浴場に行ってこい」

「不問じゃなく()()を処罰してくれ」

「私にそこまでの権限は無い。希望はお伝えするが、判断は辺境伯様次第だ」


 俺と騎士団長サマの視線が交差する。つい数時間前に両腕を折られ、内臓をグチャグチャにされたのにこの眼ができるか。

 その忠義は真似できないと思ったが、ウキアのためなら自分などどうなっても良いと思っているのだから、自分も同じようなものだった。


「ご主人様……」


 ちょんちょん、とウキアが俺の脇腹をつつく。そのいじらしい仕草に俺はため息をつく事しか出来ず、女に対する殺意も萎えてしまった。


「それじゃ今度こそ、行こうか」


 ウキアの手を取って浴場へ行こうとした。しかし、俺たちと浴場の間で女が気絶している。

 軽く、殺さないように女を蹴り飛ばし、通り道から排除する。感触からするに、肋骨の3本や4本程度折れただろうが、所詮その程度だから命に別状は無いだろう。


「なっ……おい!」


 後ろで騎士団長サマが騒いでいたが、それを無視して今度こそ浴場へと向かった。




   ◇◆◇◆◇◆◇◆




「ご奉仕させていただきます」


 ウキアはそう言って、俺の身体を清め始めた。

 奉仕と言っても淫猥な事はせず、ただ丁寧に俺の身体を擦り、この数日で付いた血や土埃を落としていく。


 ウキアの手さばきは凄まじく、瞬きする度に俺の身体が綺麗になっていった。最後に身体の泡が流され、すっかり綺麗になった俺が立ち上がると、ウキアは驚くような事を言った。


「ご主人様、よろしければ僕の身体を綺麗にしていただけますか?」


 主従関係であることを崩してこなかったウキアが、まさか自分の身体を洗うように頼んでくるなんて。

 当然俺は喜んで全身くまなく綺麗にするし、ウキアもそれを分かっていて頼んだのだろう。あるいは、俺がウキアの手捌きを知っているから、邪魔になるだけだと思っていることまで理解して言ったのかもしれない。


 どちらにしても、俺にとっては喜ばしい事であるのは間違いない。ウキアを座らせてその後ろに立つ。

 手のひらで石鹸を泡立て、ウキアの背中からじっくり清め始めた。




   ◇◆◇◆◇◆◇◆




「ご主人様、森神を倒す作戦はあるのでしょうか」


 たっぷり時間を掛けて互いの身体を清め、その後にウキアを抱きしめながら湯に浸かる。のんびりしながら明後日の作戦会議を始めた。


「とりあえず櫓の真下に隠れて、生贄の人がやられる直前で不意打ちしようかな」


 正直、生贄に食らいついた直後に強襲するのが一番成功率が高そうではある。しかし、それではウキアが悲しむだろう。それでは森神を殺したところで意味が無い。


「では、僕はご主人様が隠れる手助けを?」

「いや、ちょっと考えてる事があってさ────」



 それから、さっきの女とは別のメイドさんが果実水を持ってきてくれた。それを飲みながらウキアと触れ合い、楽しい時間は過ぎていった。














ご主人様が人と接する時の姿勢は、印象とウキアへの影響だけで決まります。

いきなり襲いかかってウキアにも魔法を掛けた騎士団長や、その上司である辺境伯にはぞんざいな態度な一方、初対面のメイドさんは丁寧に接してくれるのでそのように返します。

しかし、ウキアが辺境伯の所でお世話になると思っていた時は、ウキアへ悪印象を抱かせないため失礼の無いように接していました。

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