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謝罪にいったのに

 まず、なんでセシルが俺たちの教室にいたのか?

 俺が、一ヶ月くらい遅れて入学してきたことをセシル王太子が気にかけてくれたかららしい。

 寮の規則などを、王太子の立場であるセシルが、説明しに来てくれたのだろうというのが、マキノと考えた結論。


 なんで、用事を済ませずにさっさと教室を離れてしまったか?

 俺とマキノが、神聖な卒業プロムを馬鹿にするようなジョークを言っていたからだと推察される。


 シロノの通う貴族の子女が通う女子校と、俺の通う貴族の子息が通う男子校が、これ見よがしに隣に建てられて頻繁に交流しているか。それは成人直前の貴族が、将来の結婚相手を探すためでもある。

 卒業して正式に貴族社会の仲間入りを果たす前に、どんな子がいるのか、お互いに見ておけというのだ。悪趣味な制度だ。


 卒業プロムで誘うこと、それは、事実上の婚約宣言でもある。

 神聖なものであり、たいていの貴族は、そこで正妻をめとる。……まあ、王族だけは別で、フライングで、最上級生の歳の誕生日に、盛大なパーティを開き、正妃を決めるのだが。

 この風習は、美女の取り合いで、王族が部下と揉めないようにとの配慮と思われる。


 真面目なセシルには、そういった国の伝統をないがしろにする態度が気に喰わなかったのだろう。

 たぶんね。


 ……最悪だ。

 もうどうしよう。シロノ。お兄ちゃん、シロノの恋を邪魔しちゃったかも。

 あの無礼な馬鹿兄貴の妹だろうww ないない、却下だ! なんてことになったらどうしよう。


 これは、早々に謝りに行くべきだろう。そうに違いない。


 俺は、セシルの教室を探して上級生の教室へ向かう。マキノが付いて来ようとしたが、それは断った。一人で行く方が、謝罪の意が伝わる気がしたから。


 セシル王太子の学年である、一つ上の学年の教室を覗けば、俺の顔を見て教室内がざわつく。

 下級生が上級生のクラスに顔を出すのが珍しいのだろうか。それか、悪名高い宰相の息子だときづいて、警戒されているか。一々面倒だな。


「どうしたの?」


 声をかけられて見上げれば、赤毛の長身の男がヘラヘラ笑っている。

 なんだ、この絵に描いたようなチャラ男は?

 やたらデカい奴だ。


「あの、セシル様に謝罪したくて」

「セシル様に? なんで? 何かしたの?」


 なんでとは、俺が聞きたい。どうして、顎をクイッと持ち上げた? どうして、壁に手をついて包囲している? これじゃあ、セシルがいるかどうか、教室の中がまるでみえない。邪魔だ。


 だんだんムカついてくる。


「放っておいてください。あなたには関係ないでしょう?」


 つい、そう言ってしまった。


「うん? 可愛いねえ。気が強いんだ」


 殴るぞ。なめた事ばかりいっていると。

 殴ったところで、病弱俺のへなちょこパンチで、デカいこいつを倒すことが出来るかどうかは分からないが。


「無礼でございましょう? たとえ下級生であっても初めてお会いする者にその態度は!!」


 この美しい凛とした声は、……愛しいシロノだ!!

 腕を組んで、上級生を堂々と睨む毅然としたシロノの態度。

 なんて素敵なんだ!! さすが俺のシロノだ。

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