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不思議な高校と無音美少女

 訳有栖(わけありす)高校を受験する事を決めてから約半年が経過し、僕は無事訳有栖高校に合格することが出来た。四月八日の入学式まで後二日に迫る中、僕の荷物を愛姉さんの家へ送り終わり、あとは僕自身が愛姉さんの家に行くだけであった。


 車の前で待ってくれているお爺ちゃんが名残惜しそうに僕へ声をかけてきた。


「車で健を送りとどけたら、この広い家で婆さんと二人だけになるのか、寂しくなるな」


 お爺ちゃんが言う広い家というのは一軒家だからという理由だけではなく、僕が快適に暮らせるように鴨居や敷居などを普通の部屋の五割増し程広くしているという意味もある。今日僕を送りとどけてくれる車も普通車ではなく、マイクロバスの後部座席を抜き取って魔改造した特別仕様で、250センチある僕が横になっても大丈夫なようにしてくれている。


 この特別仕様型マイクロバスは僕が気兼ねなく遠出できるようにお爺ちゃんが発案・改造してくれたもので、これがあれば寝っ転がったままで尚且つ窓にカーテンをしなくても外から僕の姿が見えないように移動ができる。窓越しに映る僕を見て外の人から指を差される心配もなくなるのだ。


 大きな家も車も工業に精通しているお爺ちゃんが手掛けてくれたものだから、本当にお爺ちゃんには頭が上がらない。口数が少なく人と接する事もあまり得意ではないお爺ちゃんだけど、誰よりも人情味がある僕の自慢のお爺ちゃんだから、別れは辛く、僕も寂しさでいっぱいだった。


「お爺ちゃん……僕も寂しいけど向こうで頑張ってくるよ。それに頻繁に顔を見せに帰ってくるつもりだしね。二人が趣味でやっている畑作業も手伝いたいし」


「そうだな、しんみりするのも良くないし元気に送り出すとするか。次に畑作業を一緒にできる日を楽しみにしているから本当にすぐ帰って来いよ? 健がいればトラクター要らずで助かるしな」


「うん、約束するよ」


 そして、運転席にお爺ちゃん、助手席にお婆ちゃん、後方一帯に僕を詰め込んだ車は愛姉さんの家がある社玉市(やしろだまし)に向かって出発した。


 社玉市にある愛姉さんの家は列車で行くと迂回する形になるので一時間半ほどかかってしまうが、車で行けば多少混みはするものの、一時間もかからないぐらいの距離にあるので、三人で会話が出来る最後の機会である車内での時間はあっという間に終わってしまった。


 愛姉さんの家に着くと、玄関の外で愛姉さんが待ってくれていた。車から降りた僕たちは愛姉さんに近づいて挨拶をすると元気な返事が返ってきた。


「健君もお父さんもお母さんも久しぶり! 元気そうで何よりだよ。それに健君も男前になったね、少し童顔だけど将来はきっとイケメンオジサンになれるよ」


 初対面に近い形の人間に筋肉以外の要素へ言及されることはまずないので少し不思議な気分になった。お婆ちゃんは少し涙目になりながら僕と愛姉さんを交互に見つつ、口を開いた。


「本当に久しぶりね愛、もう三年以上会ってなかったかしら。あなたが本当に大変だったと噂にだけは聞いていたから、頻繁にスマホでメッセージを送っていたのに、あなたときたら『平気、大丈夫、元気』としか返してこなくて心配していたのよ? 電話だってしたかったけど、あなたの仕事上電話もしにくい状況だったでしょうから、こちらからはかけ辛かったし」


 お婆ちゃんの口から出た『大変だった』『電話のしにくい状況』というワードがとても気になったけど、久しぶりの親子の再会を邪魔しちゃ悪いと思い、尋ねる事が出来なかった。


 愛姉さんは玄関を開いて「お茶していきなよ」とお爺ちゃんお婆ちゃんを手招きしたが、お爺ちゃんは首を横に振った。


「いや、名残惜しくなる一方だし、今日はこのまま帰るよ。愛が社玉市〈やしろだまし〉に引っ越してきたなら、これから何時でも会えるわけだしな。愛なら心配ないと思うが、健の事をどうかよろしく頼む、健もどうか元気でな」


 そう言ってお爺ちゃんはサッサと車に乗り込んでしまった、僕的にはもっと四人で色々と話してみたかったけど、お婆ちゃんも車に乗り込んでしまったので、そのまま車が離れて見えなくなる位置まで手を振り続けて別れを終えた。


「それじゃあ、さっそく部屋を案内しようか、こっちにおいで健君」


 そう言って愛姉さんは僕に新居の案内をしてくれた、部屋一つ一つの広さはお爺ちゃんの家に比べると少しだけ狭いものの、敷居や鴨居も一般の一軒家に比べるととても大きく、僕でも快適に暮らせそうだった。


特に台所は背の低いお婆ちゃんに合わせた高さから背の高い愛姉さんにフィットする高さに変わった分、僕が屈む深さも減って料理がしやすそうだ。


 最後に僕の部屋になる場所と、すぐ隣にある愛姉さんの部屋の場所を教えてもらって案内は終了した。愛姉さんは人差し指を唇に当てて、悪戯っ子な笑みを浮かべながら僕に注意を促す。


「健君はお年頃の男の子だから勝手に部屋に入ったりしないから安心してね、逆にお姉さんの部屋にはいつでも入ってきていいよ、ただし夜にこっそりエッチな突撃をしてくるのは禁止よ?」


「な、なにを言ってるんですか、そ、そんな事しませんよ!」


 急に卑猥な事を言う愛姉さんに動揺して、ツッコミの時に少しだけ噛んでしまった。愛姉さんはお母さんとは随分歳が離れていて、まだ年齢も二十代半ばで、おまけに養子らしいからお母さんや僕と血の繋がりはない。


 見た目も切れ長な目にスレンダーな体形でウェーブのかかったサラサラな茶髪が美人度合いを高めていてぶっちゃけ客観的に見たらかなり綺麗な部類だとは思う。きっと若さや血のつながりが無いからこそそれを利用して僕を揶揄っているのだと思う。


 しかし、血が繋がってないとはいえ、いくら何でも叔母という立場に対してそういう感情を抱くことはないと思う……多分。


 人差し指を唇に当てて、今にも『ウフッ』とでも言ってきそうな古い時代のアピールに一瞬でもドキッとしてしまった自分が恥ずかしくなったのだが……。あたふたしている僕を尻目に愛姉さんは話を続けた。


「まぁ冗談はここまでにしといて、今から訳有栖高校の先生のところへ一緒に挨拶に行くよ」


「え? 入学前に挨拶しに行くんですか?」


「こう言っちゃ健君は傷ついちゃうかもだけど、やっぱり健君の体は少し特殊だから、いろんな場面で先生達の手を煩わせちゃうこともあるかもしれないことを考慮して、事前に注意しておいてほしい事柄を健君の姿を見てもらったうえで伝えておきたいと思ってね」


「自分の体の特異さは自分が一番わかっていますから、言葉に気を使ってもらわなくて大丈夫ですよ、これから一緒に暮らす家族なんですし。外を歩くのはちょっと怖いですけど、理由も理由ですし頑張りますね」


「偉いぞ健君、じゃあ早速学校へGO!」


 そして僕は新品の制服に着替え、愛姉さんの車に乗って学校へ行った。愛姉さんの車はお爺ちゃんの車の様に広くはないけど、それでも僕が後ろに座れるぐらいには空間を広く改造してくれていて、改めて愛姉さんの思いやりが心に沁みた。


 学校に着くとまだ春休みだからか、グラウンドに少し生徒がいるだけで閑散としていた。僕にとっては好都合である。


 廊下を歩いていると数人の先生とすれ違ったが、その時の先生たちの反応に僕は驚いた。すれ違う全ての先生が僕を見ても全く驚いていないのである。事前に写真などで僕の体の事を知っているのかもしれないが、それでも少しぐらいは表情に驚きや恐怖の相が出てしまうものだと思うのだが全くの0なのだ。


 自分がごく普通の生徒になったかのような錯覚を覚えながら案内された応接室を訪れると校長先生がいて、他の先生と同様、驚きも恐れもない対応で僕に笑顔で挨拶してくれた。


「はじめまして、伊集院さん、そして熊剛 健(くまごう けん)くん。私が当校で校長をしております安東〈あんどう〉です。よろしくおねがいします」


 僕と愛姉さんも挨拶を返すと早速、校長先生は待っていましたと言わんばかりに僕の体を触り始めて、鼻息を荒くしていた。


 小太りな身体を白スーツに包み、白髪に黒縁メガネをしている校長先生はフライドチキン会社のカルテル・サンダーを彷彿とさせるような容姿をしており、当然僕はそんなおじさんに鼻息荒く触られる趣味もないので、ゆっくりと上半身を仰け反らせて抵抗した。


 僕の様子を見て我に返った校長先生は謝りながら体を触ってきた理由を説明する。


「いやぁ、すまない。立派な筋肉だからつい触って確かめたくなったんだよ、私は校長をしながら当校のバスケ部の監督もしていてね、がっしりとした高身長の生徒を見ると興奮してスカウトしてしまうんだ。どうだい、熊剛君、バスケ部に入らないかい?」


 校長の目からは奇異のもの見る雰囲気は一切感じず、純粋に戦力が欲しいのだろうという気迫は伝わってきたが、ジャンプせずとも手を上げるだけで余裕でダンクが出来てしまう僕の体ではバスケットという競技そのものが成り立たなくなってしまうし、そもそも人前でスポーツなんかやりたくないので首を激しく横に振って断った。


「そうか、それは残念だ。気が変わったらいつでも言ってくれたまえ。では本題に移りましょうか、まず学校の設備や行事についてですが健君の場合ですと――――」


 そう言って校長は学校の見取り図やスケジュール表を取り出した。愛姉さんも僕の身体的特徴を身振り手振りで説明し、二人でどんどんと話を進めていった。


 一方当事者である僕は少しだけ話し合いから気を逸らしてしまっていた。僕に気を使って表情を崩さない先生達や僕一人の為に色々な計画を進めてくれている愛姉さんと校長を見ていると僕という存在は沢山の人の手を煩わせてしまっているんだと実感してしまい、物憂げな気持ちになってしまったからである。


「健君……ねえ……健君ってば」


「あ、ごめんなさい、ボーとしてた」


 どのくらいの時間、別の事を考えていたかは分からないが気が付けばそこそこ話は進んでいたらしい。愛姉さんは腕時計を眺めながら僕に提案する。


「健君の顔見せはできたし、私と先生の話し合いはもう少し続きそうだから、健君だけ先に家に帰ってる? 暇させちゃうと思うからね」


 愛姉さんが少し気を使ってくれているのと、何となく邪魔になっているんじゃないかという懸念から僕は一人だけで先に帰る事にした。校長先生にお辞儀をして、部屋を出た後に、一人で道を歩いていたら目立ってしまうからやっぱり愛姉さんを待てばよかった――と思ったけど、また部屋に戻るのも気まずいから頑張って一人で帰ることにした。


 家までは一本道だし車で三分ほどで着いていたから、徒歩でも十五分ぐらいあれば着くだろうと考えて歩き出した僕は十分後に後悔する事になった。慣れない土地で東西を逆に思い込んでしまってたらしく、反対方向に歩いてしまったのだ。


 家のすぐ近くにあった動物病院の広告看板が目に入り、真逆の方向に車で五分と明記されていたので気づくことができた。新しい土地だという事に加え、車に乗っている時に外の景色をほとんど見ておかなかったことが災いして道を間違えたみたいだ。


 ここから正しい道を進んでも逆に歩いたぶんを足して二十五分ぐらいかかっちゃうなぁと憂鬱な気持ちになっていると、後ろから突然知らない人に声をかけられた。


「おいてめぇ、訳有栖高校の奴が何で俺らのシマで堂々と歩いてんだゴラァァ!」


 振り返るとそこには今時珍しくリーゼントに髪を整え、制服を着崩し、ガムをクチャクチャと音が鳴るように噛んでいるお手本のような不良が立っていた。『俺らのシマ』というパワーワードもさることながら、僕の身体を見てもなお、喧嘩腰で突っかかってくる他校の生徒に色々な意味で驚かされた。


「オォン? 随分新品くせぇ制服だなオィ、さてはてめぇ新一年生か? だったら此処のルールを教えてやる。俺らの蘭到(らんとう)高校がある蘭到町を他校の生徒が通るときは通行料を置いていくのがルールだ、オラさっさと財布を出せ」


 学校への挨拶時に一応制服を着ていったことがこんな形で仇となるなんて、そう思った僕は自身の身体能力があれば絶対に逃げ切れるだろうと180度回転し、逃げの姿勢を取った。


 しかし、僕の気づかないうちに沢山の不良に囲まれていたようで逃げ道を防がれてしまった。やたらと声の大きい威嚇のせいで仲間の足音に気がつけなかったようだ。


「おいおい、何逃げようとしてんだアァン?」


 背中側から響く威嚇を聞きながら、僕はこの状況をどう突破するかを考えていた。僕を囲んでいる不良の数はざっと十人程はいるけれど、僕に手が届くほど近くにいる不良は四人しかいない、そして前方の不良と右側にいる不良との間には若干広めの隙間が空いている。


 この隙間を狙って逃げるしか怪我をさせないで突破する方法はない。決心を固めた僕は右斜め前に走った。すると反応が遅れた二人の不良はギリギリ僕の体を掴むことが出来なかった。


「よし、抜けれた!」


「あめぇよ」


「え? うわぁあ」


 突破成功だと喜んだのも束の間、僕の足の脛に突如衝撃が襲った。どうやら僕の服を掴みそこなった二人の不良の更に後ろ側にも小柄な不良が二人隠れていたらしく、足を出して僕を転ばせにきたのだ。


 しかし圧倒的に体重の重い僕からしたら両開きのウエスタンドアにぶつかった程度の衝撃しかなく、転倒には至らなかった。むしろ足をかけてきた二人の不良の方がダメージは大きく、足を軸にしてベーゴマの如くクルクルと5メートル程吹き飛んでしまった。


「うわぁぁぁ痛ぇぇぇ」


「骨がぁぁぁ母ちゃぁぁぁん」


 故意ではないとはいえ新生活早々二人も怪我人を出してしまい、僕は顔から血の気が引いていくのを感じた。傷ついた仲間を見たリーゼントの不良は声を震わせながらも、僕に戦う意思を見せつけてくる。


「て、て、てめぇ! 俺の仲間を怪我させやがって分かってんだろうな、ちょっと化け物じみた図体してるからって俺たち蘭到(らんとう)高校の奴らは絶対に退かねぇからなァァ!」


 リーゼントの言葉を聞いたとき、もしかしたら周辺の高校同士で縄張り争いや因縁のようなものがあるのだろうかと考えた。先行きの暗さと怪我人を出してしまった罪悪感でパニックになっていると、突如僕の耳に女性の声が響いた。


「悪いのは全部、蘭到高校の人じゃないですか」


 声のした方を振り向くと15メートル程離れた位置でスマホを両手に一台ずつ持った、黒髪ロングにパーカー姿の少女が立っていた。リーゼントは苛立った声で女の子を威嚇する。


「なんだてめぇは、関係ない奴はすっこんでろ」


「そんな事を言っていいんですか? 恐喝を始めてから今現在までぜーーんぶスマホで録画してますから、この動画をSNSにあげちゃいますよ? 蘭到高校生の雑頭 杖〈ざつがしら じょう〉さん」


「お前、何で俺の名前を知ってやがんだぁ?」


「あなたが道端に置いていた鞄の中から拝借して調べさせてもらいました」


「ありえねぇ、俺のスマホは指紋認証しなきゃ開けれねぇんだぞ!」


「うふふ、それはですね」


 小悪魔の様に笑う少女に対し僕は不思議な感覚を抱いていた。少し垂れ目気味でまつ毛の多い透き通った眼に、色白で小柄な身体を覆うようにサラサラと広がる綺麗な黒髪に見惚れてしまっていたのも理由としてはあるけれど、何というか存在感があまりに異質なのである。


 違和感を上手く脳内で言語化できない僕に答え合わせをするかのように彼女は言葉を続ける。


「あなた達が言い合っている隙に雑頭さんのスマホを雑頭さんの指にそっと当ててロックを解除したんです、私ってすっごく存在感が薄いからこんなことができちゃうんです」


「馬鹿言うな! そんな事をしてたらいくら何でも俺達が気づかないはずがないだろうが、スパイや忍者じゃあるまいし」


「でも、現に鞄の中に入れていたスマホを取り出されて、指紋認証を解除されていますよね?」


「くっ……確かに」


「あなた達はさっさと降参して逃げる事をおすすめしますよ? 昔の歌で『愚か者が家を建てた、砂の上に家を建てた~♪』っていうのがありますし、頑張って抵抗すればするほど大変なことになっちゃいますよ?」


 少女はより笑みを強くし、透き通った声で童謡をワンフレーズだけ歌って雑頭を煽った。そして自身のスマホ画面を向けて、動画がバッチリと撮れていることを証明して見せた。


 動画だけではなく名前まで知られてしまってはボタン一つで今回の件を強く拡散されてしまう。そうなるとまともに高校生活を送れなくなると判断した雑頭と仲間たちは悪態をつきながらこの場を去っていった。


「ちっ、覚えてろよ女ァァ!」


「あなたも動画を握られている事を覚えておいてくださいね」


 お手本のような捨て台詞に対して綺麗なカウンターを決めた少女は、小走りで僕の方に近づいてきた。


「怪我はないですか? 蘭到高校には不良の生徒が多いですから、あまり近くを歩かない方がいいですよ、ましてや他校の制服を着て歩くのは自殺行為に近いです」


「そうだったんですね、僕は今日、社玉市〈やしろだまし〉に引っ越してきたばかりで、そういう事情があるのは知りませんでした、次からは気を付けますね。それとさっきはありがとうございました、凄い特技を持っているんですね」


「特技というか体質に近いですね、貴方と似たような感じですよ」


「え、僕の体の事を知ってるんですか、貴方は一体……」


「それは秘密です、それよりも早くここから離れて訳有栖の方へ戻った方がいいと思いますよ、別の不良に絡まれても面倒ですから」


 自分が今危険地帯にいることを思い出し、慌てて周りを見渡したが今のところ蘭到高校の生徒は近くにいないようだった。数秒周りを見渡した後に少女の方へ再度視線を向けるとそこに少女の姿は無かった。


 驚いて後ろの方を見てみると5メートル程離れたところに少女が立っていた。またもや僕に気づかれず数秒の間に移動をしていたようだ。彼女は不良に向けて放った小悪魔な笑顔よりもずっと優しい笑顔で僕に手を振って別れの言葉を言った。


「じゃあねお兄さん、もしかしたらどこかでまた会うかもしれないけど、その時まで元気でね」


「は、はぁ……さようならです」


 少女と別れ家に帰り、食事と風呂を済ませ、僕は早めに布団に入り今日の出来事を思い出していた。綺麗な見た目なのに半透明のように存在感が薄く、意味深な言葉を吐く不思議な少女の事が忘れられず、僕は久しぶりに寝るのに時間がかかった。


「また、会って話をしてみたいなぁ」


 そう独り言を呟いた後、僕は無理やり目を瞑り続け、一時間ほどかけてようやく眠ることができた。今日は別れと出会いに溢れた濃い一日となった。


今話を読んでいただきありがとうございました。






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