特異体質と新たな目標
その後も僕達は買い物を続けて、三人とも林間学校に持っていくものを一通りそろえる事ができた。
買い物を終えた後はゲームセンターに行って盛り上がった。
クレーンゲームでは箒星さんが大活躍し、景品を沢山入手して僕達にプレゼントしてくれた。テレビゲームも上手かったしゲーム全般得意な人なのかもしれない。
レースゲームでは雷久保君がぶっちぎりで、速くてカッコイイ姿を見せてくれた。
レース終了後に雷久保君は「ゲーセンの走りは死と隣り合わせではないから思い切った走りができるな」と発言していて、その言葉が本物の車に乗っていたことがある故の発言なのか、何か他の理由で言っているのか気になったけれど怖くて尋ねる事はできなかった。
どうか前者ではない事を祈りたい、何故なら僕達はまだ車の免許を持つことができない十五歳なのだから。
銃を画面の前で構えてゾンビを倒すタイプのシューティングゲームでは全員僅差ではあったものの箒星さんが一位を取って喜んでいた。
途中僕が銃のトリガーに指を掛けようとした時に指が太すぎて入らない事態が発生した際に箒星さんと雷久保君が笑ってくれたのが嬉しかった。
普段なら自身の巨体に関して笑われたり気を使われたりするのが辛いけれど、二人からは馬鹿にした感じの笑いではなく友人として、ハプニングを笑ってくれているのが感じ取れるし、気を使っていない友達同士の空気感でいられるのが堪らなく心地よかった。
結局、指が通らなかった僕に箒星さんがクレーンゲームで手に入れたオモチャの爪を僕の指先にテープで固定してくれたおかげで銃のトリガーを弾くことが出来るようになった。
自分の指で直に弾いているわけではないから操作はやり辛かったけど、箒星さんが僕の為に工夫してくれたことが嬉しかったし、オモチャの爪をつける際に指を沢山触られたことで凄くドキドキさせられた。意外と指って繊細な器官なのかもしれない。
ゲームセンターで一通り遊び終えた僕達は、商店街から少しだけ離れたところにある喫茶店に入って一息つく流れになり、オープンテラスの席に座った。
良い意味で騒がしかった商店街と違い、鳥の声が聞こえてくるぐらい静かな落ち着いた喫茶店で、中々居心地は良さそうである。
とはいえ個人的には商店街の中にある喫茶店でもよかったのだけれど、箒星さんがここを強く勧めてきたからこの店に入る流れになった。
僕はこの店を選んだ理由を知りたくて箒星さんに尋ねた。
「どうして箒星さんはここに来たかったの?」
「池上先輩とのやりとりの後にデラックス・ジャンボパフェを奢ってもらうって約束したからだよ」
そう言えばそんな事を言っていたなぁと思い出し、僕は値段表を確認した。
値段はさほど高くなくてホッとしたが、いざデラックス・ジャンボパフェが机に置かれた瞬間に僕は度肝を抜かれた。
その名を語るに相応しい程に巨大なパフェはバケツの様な重量感を醸し出しており、見ているだけで胸焼けしそうなほどのクリームが盛られていた。
むしろ何でこの量で値段は然程でもないのかが気になるし、利益率はどうなっているんだ? とツッコミを入れたくなったけれど、一番ツッコミを入れなければいけないのは箒星さん本人だ。
さっき自身の家で昼飯を食べてきただけでなく僕の家でもおかわりするぐらい昼飯を食べていたというのに、夕方前の時間帯にこの巨大スイーツである。
僕もこの身体だからかなり食べる方だけど、体重差を考慮すれば彼女の方が遥かに摂取カロリーが高いだろうし、甘いものを一度にこんなにも摂取できはしないだろう。
「あ、二人にもちょっとだけ分けてあげてもいいよ」
ちょっとだけ……ほぼ全部一人で食べるつもりなんだ……と僕達は箒星さんの無限胃袋に言葉を失っていた。
箒星さんと一緒に一つのパフェをつついて間接パフェだ! なんて喜びも湧いてくることもなく、掘削しても掘削しても終わりの見えないパフェへ早々に白旗を上げた僕と雷久保君は箒星さんが食べ終わるのを待ち続けた。
終始スプーンのスピードを落とさずデラックス・ジャンボパフェを食べきった箒星さんは満足そうな笑顔でお腹をさすりながら、ごちそうさまでしたと手を合わせた。
パフェも食べ終わり、少し落ち着いたところで箒星さんが急に真面目な顔になり、改まって僕達にお礼の言葉をかけてきた。
「二人とも今日は一緒に遊んでくれてありがとう。私はあんまり友達の多い方じゃないから上手く遊べるか不安だったけど私は楽しかったなぁ、二人も楽しんでくれた?」
「俺だって友達は少ねぇから、ちょっとだけ不安だったけど楽しかったぜ。兄弟で遊びに行ってた頃を思い出せたしな。熊剛はどうだ?」
「僕は友達が少ないどころか全くいなかったから何もかも未体験で楽しかったよ。三人とも訳有栖高校に通っているだけあって普通の人とはちょっと違うし、友達が少ないっていう共通点もあるから、良いトリオかもしれないね。だからってわけじゃないけど機会があったらまた遊びたいね」
「おうよ、今度はボーリングとかいこうぜ、俺得意だからさ。熊剛と箒星は何か行きたいところややってみたいこととかあるか?」
「僕はビリヤードを一緒にやってみたいかな。おじいちゃんと数回だけしかいったことがないからそんなに上手くないけど」
「私も山ほど二人と遊びたいと思っているよ、それに二人と一緒なら……」
水着を選んでいる時やパフェを食べ終えた時もそうだが、今日の箒星さんは急に暗い顔になったり、シリアスな表情を見せる時があって僕はそれがとても気になっていた。
その理由を知りたいけれど無理に喋らせる事になってもよくないと考えた僕は自分なりに言葉を選びながら箒星さんに提案した。
「箒星さんも希望があれば聞かせてほしいなぁ、楽しい事は勿論、何か頼み事や手伝ってほしい事があったらそういうのでもいいしね。僕も雷久保君も箒星さんに大きく助けられた立場だからサービスするよ?」
勝手に雷久保君の名を出してサービスすると宣言したけれど、優しい雷久保君は予想通り勢いよく頷いて肯定してくれた。
僕の言葉を聞いた箒星さんは五秒ほど沈黙した後、決心したような顔で僕達に希望を話してくれた。
「二人ともありがとう。今日買い物に付き合ってくれただけでもありがたい事だけど、お言葉に甘えさせてもらうね。私が今から言うことは具体的な行動じゃなくて漠然とした願望の様なものなんだけど――――私、異常に存在感が薄くなってしまう特異体質を治したいの」
さっき僕が透明感というワードを出した時に箒星さんが元気のない顔をした理由がようやく分かった。
箒星さんが僕や雷久保君を助けてくれた時も一種のステルス能力の様な隠密っぷりだったわけだが、アレは体質的な能力だったんだ。
普通の人が聞かされても信じる事が出来ないだろうけど、僕みたいな異常な筋肉を持っている人間や電気を出すことができる雷久保君みたいな人間が現実に存在しているわけだし、実際に僕はその不思議な体質で助けてもらっている以上、箒星さんの言葉に疑う余地はなかった。
箒星さんは更に自身が苦労してきた過去と異常体質について知っている事を話してくれた。
「どうやら訳有栖高校に通っている生徒のうちの数%は、テレビに出てくる超能力人間や私達みたいな異常体質の持ち主らしいの。私は中学三年生の夏頃にたまたま訳有栖の校長先生と話す機会があって誘ってもらえたの。他の異常体質の人達がどういう経緯で入学したのかは分からないし、普通体質の生徒の方がずっと多いらしいんだけど、訳有栖高校は特異体質の生徒に限らず色々事情を持っている生徒を集めることに力を入れているみたい。医学的には私達みたいな人間を『特質型』と呼んでいるらしいんだけど、先生も皆理解のある人たちだし、やたらとお金のありそうな学校だから、きっと特質型に対して色々詳しくて、治す方法とかも知っているんじゃないかなぁと私は踏んでいるんだけどね。だから私達で協力して体質を治し合えたらなって思っているの。任意で電気をコントロールできる雷久保君はどうか分からないけど、熊剛君は色々と苦労していると思うし、私もこの体質で色々苦労してきたんだ。同級生には存在を覚えてもらえなかったり、声をかけただけでビックリされて幽霊扱いされたり……」
箒星さんもまた僕と同じように特別扱いされてきたのかと考えると少しだけ目頭が熱くなってきた。
僕自身、化け物だとか恐いだとかさんざん言われてきた。気の弱い僕は基本的に言い返すことはなくてその様子を見た同級生に『デカいだけの弱虫』と呼ばれて馬鹿にされることもあった。
だけど少なくとも僕は他人から認知はされていたわけで、箒星さんは存在を認識してもらえないという、ある種、総シカトのような状況で辛い生活を送ってきたのだろう。
きっと今だけでは語り切れない辛い過去がもっといっぱいあると思う。
これは予想だけど、もしかしたら箒星さんは認識されない辛さや特質型の辛さが分かっているからこそ僕達の事を放っておけなかったのかもしれない。
大切な友人である箒星さんが困っているなら僕達の返事は一つしかない、僕も雷久保君も協力する意思を箒星さんに示した。
「未知の事過ぎて何から手を付ければいいか分からないけど一緒に特質型について調べていこう。箒星さんは素敵な人だからもっと沢山の人に認知してほしいしね」
「ああ、俺も全力で頑張るから絶対治そうぜ」
「熊剛君、雷久保君……本当にありがとう、これからもずっとずっとよろしくね」
さっきまで少し陰のある表情を見せていた箒星さんだったけど、今は胸のつかえが取れたのか、晴れやかな笑顔を見せてくれた。
正直何が分からないかも分からないような状態だから役に立てるのか今から不安だけれど、大事な友達だから絶対何とかしてあげたいし、特質型について調べていけばもしかしたら僕の異常発達した筋肉の謎も解けるかもしれないわけだし、頑張るぞ! と心の中で誓った。
といってもまずは目の前に迫っている臨海学校を楽しむことが先決だ。
解散して、家に帰った僕は脳内で臨海学校シミュレーションを繰り返しながら眠りについた。そして、日曜、月曜を終えて遂に念願の臨海学校初日が訪れた!
読んでいただきありがとうございました。
よろしければ下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援・評価をお願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、遠慮せずに率直な☆数でもちろん大丈夫です!
ブックマークやプロフ蘭にあるツイッターのフォローもいただけると本当にうれしいです。
よろしくお願いいたします。




