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光。


それはあまりにも不可思議な光であり、周囲に生命を与えしような光である。止まる気配はなく、その光は何もかもを吸い込み、泡沫の輝きに身を包み込むんでいる。

1000の小さな針で肌を滅多刺しにされるように身に染み、骨を暖めいていく。その暖かさに身を委ねると、少女は玉響の安堵感を味わった。


それはまるで、親が自分の子供を世界の現実から守ってくれているような感覚であったけど、どんなよいことにも終わりがある。


少女は突如として震え出す。


先程まで全身を守ってくれたその暖かさが今や生まれ落ちたばかりの赤ん坊が初めて味わう途轍もない寒さに取って代わっていった。骨を凍らせるほどの寒さに襲われ、少女はパニッに陥って狂乱状態になった。


息が出来ない上に、体も動かすことが出来ない。意識はあるけど、身体から遠く離れて、まるでないという感じがする。これは一体なんなんだろう、と冷静を保つことが出来ない少女は、助けを呼ぼうとするが、まるで声が喉に詰まっているように口から言葉が全く出てこない。これは現実じゃない、ということを呪文のように何回も唱えるが、やはり身体を支配するその絶望的な感覚が消えず、むしろ前よりもだいぶ強くなっていく。


身体を動かせない、足す、息が出来ない。と、そこで、少女が気づいていた。これはもしかして、お母さんと同じ病気? そんな可能性があるかつ高い。つまり私はお母さんのように、死ぬ?


そう考えれば、少女は妙なことに、安堵感を再び味わった。私が死ぬ。私が母さんのいるとこに一緒に、いられる……永遠に、二人きりで。よく考えれば、まるでいい事なんだ。これでこの理不尽で、不条理で、厳しくて、出鱈目な世界から救われる。


ーーーやっと自由になれる。


少女は頭の中で、安らかな微笑みを浮かべる。

そしてそこで、決心に達した。


私は死にたい、と。

私はお母さんといたい、と。

私は救わたい、と。

私はあの【悪夢】を忘れたい、と。


とんな後世が待っているだろうか、どんなペナルティーを受けるなろうか、私は死にたい。私はどうしても、お母さんと一緒にいたい。


それ以上でもそれ以下でもない。


でもやはり………世界はそんなに甘くないんだ。



「やっと、目が覚めたな」


突然、男の声が聞こえた。

そしてその声を聞いて、少女は心の中で怯んだ。


体を動かせない理由は多分、目の前の男に関係があるかもしれない。そしてあの時の痛みを思い出すと、やはり少女は怖がっているに違いない。



アイザックは少女の反応を見ると、溜息をつく。精神的に不安定であることが一目瞭然。でもそれはそれで仕方がないことなんだ。痛い目にあったんだから。何回も。そしてこの年頃でそんなのに晒せたら、ある程度まで精神的に不安定になるに違いない。


だからアイザックはその少女の反応を見て溜息をついた。


「大丈夫です。僕は悪い人じゃないですから」


大体の悪い人が言うセリフ。でもこの状況で少女を安心させることが優先。そうしないと、話が進まない。


「僕はアイザック・クロス。錬金術師です。隣の人はリラ、リラの隣の人はエリス。僕達が近くの裏路地で君を見つけたんだ。君を犯そうとしてたやつも殺したから安心してください」


でも少女の顔はまだ、恐怖に歪んでいた。可哀想。その少女の表情を見ると、考えざるを得ないアイザック。するともう一度溜息をつき、アイザックは続く。



「体を動かせないことに気づいただろ?実は僕、麻痺状態にさせるポーションを作って君を飲ませた。それに対してお詫び申し上げます。本当に、すみませんでした」


そう言うと、アイザックは頭を下げる。


「でも理由があったさ。実は君に話があるんだが、素直に受け取れることを疑って、勝手に麻痺状態にさせた。改めて申し訳ないが必要だと思ってた」


と、アイザックは言うと、近くのテーブルから瓶を拾った。


「そしてこれが、君の麻痺状態を回復させるポーションだ。もし話を聞いてくれるなら麻痺を回復する。体は動かせないが目は動かせる。話を聞いてくれるなら2回ウインクしてください。もし聞いてくれない場合なら、このポーション………」



そう言った瞬間、もう一個の瓶を拾って少女に見せた。


「を使って君の記憶全部消しちゃう」


(いやこりゃ完全に悪役だろが。でも仕方ないよな? そうしないと僕らの話、真面目に聞かないから)


「まあ、次は君次第だな。よく考えて、一択を選んだ方がいいと思う」


そう言うと、アイザックは少女の目にじっと見つめる。


「とは言っても、君の記憶を消す予定はあったんだけど。君がそう望むならば。君はその短い人生で、結構痛い目にあったんだ。できればその壊れた君を楽にしたい。まあ、それも君自身が決めることなんだけど」



麻痺状態を回復させるポーション。アイザックのその言葉は少女の頭の中で木霊の如き響き渡る。聞き間違いじゃない。お母さんを救うチャンスはすぐ目の前にある。でもこの人、果たして信じられるかどうか、それが現在の問題だ。いやでもさっき、錬金術師って言ったよな。錬金術師は確か、ポーションだけで奇跡を起こせる。少なくとも母さんがよく言う。


それは本当かどうかわからない。自分に言わせれば非現実的すぎるが、それでもこの世には信じられないものはたくさんいる。ドラゴンとかゴブリンとか。あと魔法も存在するからそんなに非現実的じゃないかもしれない。日本とは違ってこれらは普通だ。


それでも少女はまだ心もとない。アイザックという名の人を知らないし。と言っても、今のこの自分の状況を考えると、やはり信じずにはいられないんだ。母さんを救うチャンスだし、そしてたとえ嘘のだとしても、母さんと一緒にいられるからいい。



そんなことを考えると少女は2回ウインクした。



少女は2回ウインクした。それを見るとアイザックは安堵のため息をついた。


「わかった。じゃあポーションあげるよ」


そういうと、アイザックは麻痺回復ポーションを拾って少女を飲まさせる。


麻痺回復薬。その名の通り麻痺を治せるポーションだ。ポーションの材料は山の赤花の2つ、腹子の10個、蜻蛉の2つ、そして鳥の羽根の1個。幸いなことにアイザックが立ち寄った薬屋には色々な材料はあって、金を手に入れたや否やたくさんの買ってきた。


実を言うと、師匠がはじめに教えてくれたのは麻痺回復

ポーションの作り方だ。普通に考えれば、はじめに教えてくれるポーションは普段、回復薬だと、アイザックは思うが、師匠は師匠だ。今でも考え方がよくわからない。



効果は一瞬的だった。さっき体を襲ってきた疲労はすぐ消え、代わりにエネルギーに満ち溢れる。息もよくなってきて、寒さが完全になくなった。


「…………」


少女は上半身を起こす。試しに曲げ伸ばしする。自由に動かせる。まるで生まれ変わったかのよう、少女はスッキリした。少女はアイザックを見上げる。その目は神を見ているかのようにキラキラしている。


そんな少女の訝しげな表情を見ると、アイザックはやさしく、少女に微笑みかける。すると、少女は呆気に取られた。チャンスがある。お母さんを救うチャンスがすぐ、目の前にある。人間の格好をしている神が何らかの理由で、地球に来た。神だからきっと、お母さんを救ってくれる。そう考えると、少女は泣き出す。


うれしさのあまり、泣き出したんだ。



少女が泣き止んでから数分後。


お茶を用意して、部屋の中の3人はベッドの周りに座り、1人はベッドの上に座っている。お茶を啜り、アイザックはそろそろ始めようかと決めて、言い出す。


「さてと、まずはお名前から始めようか?」


アイザックが聞くと、少女は頷いて答える。


「わたしはまいと言います」


その声は、部屋内で鈴のように鳴り響く。それを聞いてアイザックは微笑む。協力してくれるみたい。


「はじめまして、まいさん。改めて僕はアイザック」


アイザックは言うと、視線をエリスとリラに向ける。アイザックの視線に気づき、リラは続く。


「あぁ。私はリラです。よろしくね」


するとエリス。

「そしてあたしはエリス。よろしく頼む」


そう素っ気なく言うと、エリスはお茶を1口啜る。

それに対してアイザックは汗を流せる。


(相変わらずお前、ストレートすぎ)


アイザックは思うと、再び目の前のベッドに座っている少女まいに視線を戻す。すると咳払いをし、本題に入ることにした。


「さてまいちゃん」


アイザックの声に潜む確信を聞くまいは、反射的に姿勢を正す。


「今朝、僕から銭袋を盗んだろ?」


その言葉に、まいは怯む。これからなにが起こるのか、まったくもって想像できない。


「聞きたいことはなんで、それを僕から盗んだってこと」


そう言うと、アイザックはまっすぐにまいを見詰める。彼の視線はまいにとってまるで針みたい。鋭くて痛い。怒られる。いや、もはや怒ってるよな。そう思うまいだが、アイザックはまるでまいの思考が聞こえるようにため息をつき、目の鋭さを緩める。


「言っておくけど、僕は怒ってないよ。ただ気になるだけだ」


「………」


「まいは明らかに何らかの理由で盗んだだろ。まあ、少なくとも僕はそう思う。その理由を聞きたいだけだ。あとてきれば、二度と今日に起きたみたいなことをどうしても避けたいと思う。できるなら手伝ってほしい」


これはアイザックの本音である。

そしてアイザックの本音として受け取り、少女は頷いた。


「実は………」


と、そこで口を止める。


本当に、言っていいのか、これ。そうまいは悩んでいた。まだ心もとないみたいだが、やってみないと本当かどうかわからない。



だからまいは、深呼吸をすると、言葉を続ける。


「実はわたしの母さんは不明な病気で動くなくなりました。反応すらできないです。その母さんを治せるためにわたしはお金を盗んで貯めたんです。元のお母さんに戻せるために」


「きみのお母さん、まだ生きてるかしら?」


と、そこでエリスは言う。


それにアイザックは「はぁ~」とムカつくと言わんばかりのため息をつくと同時に、頭の中で叫んだ。


(お前やめろ! まじで!)


エリスの言葉を聞いて、少女は必死な表情を作りながら言う。


「まだ生きてるんです。だって心臓がまだ鼓動しているですから」


「へへっ」


(関心ないの、お前?!)


やっぱこいつはダメだ~。などとアイザックは思いながら咳払いをし、少女に話し掛ける。


「うん、わかった。お母さんは動くなくなったが、まだ息をしている。恐らく、何者に麻痺されたんだ。その何者の正体はなにか知らないが、幸いなことに麻痺を簡単に回復できる。ってかさっきのやつ、僕が君を飲ませたポーションは麻痺回復薬だった。それを使えばお母さんの麻痺を回復できるだろ」


アイザックは独り言を言っているかのようにダラダラと言葉を続ける。そのアイザックの言葉を聞いてエリスはため息をつき、リラはやさしく微笑み、少女は悟ったかのような視線でアイザックの壮大な姿を捉える。


やはり神でした。


「あでも、もう一本作らなければならないよな。大変だけどもう一度材料の間のちょうどいいバランスを見つけられるなら簡単に合成できる。でも材料は足りてるかな。あの記憶喪失ポーションを作るには………」


「あぁもう! わかったわかった。わかったからむずしい話やめてよ」


エリスが言うと、アイザックは不機嫌そうな視線を彼女に向ける。


「はぁー? むずかしい話? いや僕が使った言葉は小学生すら理解できる言葉だぞ? お前この頭で理解できないの?」


「まじで殺すぞ? そんなに死にたいのか? 言っておくけど、あたしはB級の冒険者よ。お前みたいなF級の冒険者はあたしみたいな天才剣士に比べ物にならない」


「言ったね。錬金術の醍醐味を決して知らない冒とく者め。そもそも冒険者のランクはどうした? なんで錬金術についての話で言ったんだ? 」


「へぇ? 意味わかんねぇ。キモイからやめてくんない?」


「このアマ」


そうこっそりと口にするアイザックだけど、頭の中は乱れている。


(やったね、俺。今日この日、私は天国に行きます。神様、待ってくださいね)などと思いながらアイザックはこっそりとまいに視線を向ける。


………すべては、ベッドの上に座っている少女を笑顔にするためだ。


(…………え)


と、少女を見ると、アイザックはあることに気づいた。


(笑ってる)


そう。目の前の起こっていることは現象じゃない。幻でもない。現実だ。


ついさっき犯されそうなその少女。ついさっきその泣き出した少女。ついさっき死にたいと言わんばかりの目をしていた少女はいま、笑っている。僅かだけど、まだ見える。


それを見たアイザックは微笑むと、言う。


「よかったなぁ。やっと元気を取り戻したね」

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