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「なあなあ、増えたぜ。どう? 二人とも捕まえようか?」

「いや、ボスが…」

「ボスが何?」

「……」

「いい? むしろこの二人を捕まえたら得だろ? 昇給を貰えるだけじゃく、きっとオレたちの地位も上がるんだ。下っ端からの卒業あり」


二人の会話を聞いて、エリスはさらに目を細める。


「この子に指一本触れさせるとでも思ってる? 自分と、この子の身を守る為にあたしは全力を尽くして戦うんだ」


エリスがそう宣言すると、骨に肉があんまりついてないからいつでも倒れて死にそうな男が嘲笑って言う。


「バカ言うな。 オレたち二人いるぞ? それでも勝ち目があるとでも思ってんの? バカが。いいか、よく聞け。お前らはオレたちと一緒にアジトに戻るんだ。それだけ。ほらな、大人しくついてくれれば(イイモノ)あげるから」


そう、「イイモノ」を強調しながら言ったが、エリスの意志は揺るぎないものだった。


「だが断る」


そこで、アイザックは真剣な顔をして、ふと考え始める。


(エルスは間違いなく、この二人を殺す気で攻撃するだろ。それを知っている上に、僕はどうすればいいのか? 片や、別にこいつらが殺されても僕は構わないんだが、この後またアジトに戻るでしょ? こっそりとこいつらの後ろについたらアジトの道順を知るようになるに違いない。そして紛れもなくアジトには、こいつらのボスがいる。つまり一発でボスを殺せる上に、アジトを粉々に砕ける。一石二鳥っていうやつ。要はこのクソどもの死を防ぐこと。幸いなことに、僕は有名な錬金術師だからポーションの力は僕にある。簡単に回復ポーションを作ってコイツらにあげれば生き延びる。まあ、そりゃあくまでアジトにつくまでの話だけどな)


と。


ここに集まった人がまだ自分の存在を知らないことに乗じて、彼はそう、計画を立てたのだった。これこそが天才の錬金術師。錬金術師という職業に就く為に、知識と知恵が必要なのだ。アイザックはもう70年間錬金術師の仕事をしてきた。そしてそれを彼がまだ子供だった頃からずっと続けてきたことだから、結構慣れていると言っても過言ではないのであろう。この70年間に亘って、結構の知識を手に入れた上に、自然と知恵を得た。そしてその知識と知恵を駆使して、彼は錬金術師の最高峰に至った。【賢者の石】を作って、そしてその賢者の石を使って不老不死の肉体を手に入れた。それはもちろん、前世の自分の記憶と経験を維持したまま。その為に、こんなくらいの計画を立てるっていうことはもう、彼には朝飯前だ。


ため息を漏らし、アイザックは少し離れた場所で地面に腰をかけ、いつも持参している便利なボロボロの茶色いポッチから何年間に亘って使ってきた乳鉢と乳棒を取り出し、それから回復ポーションの2個を作り始める。周囲にあんまり気を配らなかったが、また音がはっきりと、聞こえてくる。また空気中に漂っている緊張感をハッキリと感じ取れる。


はじめに動き出したのは、ガリガリの男だった。エリスたちの元へ駆けつつ、どこからか錆び付いたナイフを取り出し、構える。その動きを見て、エリスは反射的に受付嬢を自分の後ろに優しく押しやり、片手に持っている剣を構えて筋肉を緊張させる。男は距離を縮めた後、素早く手にあるその錆び付いたナイフを振り翳し、勝鬨を上げながら振り下ろす。エリスはナイフの軌道を図り、とある優雅さで剣を上げて上手く男の振り下ろし斬撃を受け止めることに成功した。その後まだ片手で自分の剣を持ったまま男の攻撃を制止しながら、もう片手で拳を作って男の腹目掛けてパンチ攻撃を繰り出す。男はそれを見たが、うまく反応できなかった。腹に一撃を食らった男は痛みで唾を吐きながら後ろへと吹き飛ばされ、かなりのフォースとともに固い地面に仰向けに倒されていた。エリスはそれを見ると、仰向けになっている男の元へと素早く駆け出す。ここでとどめを刺す、という思考で行動したのだ。風のように走り、2秒で距離を縮める。すると憚らずに剣を持ち上げ、倒れている男の喉元目掛けてその剣を振り下ろす。


……が、


そこで、今まで控えていたデカい男は動き出す。見かけによらず、エリスを驚かせるほどの、かなりの素早さでデカい男が動いた。あっという間にエリスとの距離を縮めて、きっと相棒の命を終わらせるであろうその一撃を阻止する為にそのデカい手で拳を作ってエリスを狙ってパンチを繰り出す。幸いなことに、眦からデカい男の不意打ちを見た。デカい男の攻撃が当たるより早くエリスは倒れている男への攻撃を止めて、後ろへと飛び跳ねて距離を取る。デカい男の拳が地面に炸裂すると、砂埃が生み出された。それを見て、エリスは冷や汗をかけながら歯を食いしばってまた筋肉を緊張させて構えを取る。


(もし、あの攻撃を受けていたら、あたしはもうこの世にいない)


なんてことを思いながら、今から繰り広げる激戦に備えて、メンタルを固める騎士エリスだった。



張り詰めた空気は息苦しかった。

夜空からひらひらと儚く降り注ぐ雪に覆われている街並みを背景にして、その光景はまるで小説から取られたシーンのようなものだった。


月の光に照らさている敵は二人。見かけによらず結構強いとエリスは悔しく認めた。デカいやつはかなり足が速い上に、パワーがめっちゃある。一方で小さいやつはただただ素早いだけだけど、舐められるもんじゃない。


エリスは目の前の二人を睨みつけながら歯を食いしばって強そうな構えを取って待ち構える。

ここに来るまでの経緯をふと思い出す。


アイザックのやつを探す為に窓を使って脱出した。

脱出した際に受付嬢が帰るところを見かけたから彼女を見守る為にこっそりとその後につくことにした。

しばらく彼女についていたら恐らくどこかの暴力団のメンバーである二人の男が現れ、受付嬢を誘拐しようとしていた。エリスはそれを見て自分の中から沸き上げてくる怒りを抑えることができず、彼女を守る為に前線へ飛び出す。

その後しばらく小さいやつと揉み合って、ちようどとどめを刺すところでデカいやつが動き出して、相棒の死亡を防ぐことに成功した。


そしてここまでに至った。


満月の下、騎士エリス対暴力団の下っ端。


(クソっ。いつぶり最後に戦ったか、あたし?こんな体力消費ハンパねぇ。アイザックは一体どこなんだ。あいつの魔法があれば勝利確定だろ)


エリスはそんなことを思いつつ、表で表情を変えず、冷静そうに状況を観察しているように見える。この場合だと、敵に塩を送らないという選択はないのであろう。敵は二人いるから、油断してはいけない。この状況を自分に有利にする為に、どんな手を使っても損はない。


敵のガードに隙を見れば、憚らずにつく。敵が背中を見せたら、躊躇うことなく攻撃する。


2対1の場合では、身体力より脳力の方が必須。


何年間に亘って騎士として活動してきたエリスはもちろん。色ん状況に巻き込まれたからこれが一番わかる。だから彼女は考える……いや、考えようとしていた。なぜから敵はエリスに、考える暇を与えなかった。


小さい方が、動き出した。

相変わらず手に錆び付いたナイフを持ち、襲いかかってくる。彼のすぐ後ろに、デカい方が追いかけていた。


挟み撃ちしてくるのだろ。


エリスはそう思うと、対応する方方法を考え始める。


(後ろへ下がっても意味ないし。こいつらはただ攻めてくるから。左右もダメよな?よく見たら小さいやつは左を、そしてデカいやつは右をうまくカバーしている。前は当然ダメ。できるのはこいつらの攻撃を防ぐこと。でもそれってかなりムズいよね。デカいやつの攻撃を当然受けきれないので、仕方なく小さいやつから攻撃を受けて、反撃するしかない。できれば、致命的な攻撃じゃなく浅い傷の方が……)


と。


あっという間に二人の男が距離を縮めて、それぞれ攻撃を繰り出す。デカいやつは素手でパンチを、小さいやつは錆び付いたナイフを垂直に振って斬撃を。エリスは筋肉を緊張させ、攻めてくる男たちに剣を左手にスイッチしつつ中途で会って、小さい男の垂直斬撃を右腕を盾にして受けた。幸いなことに、エリスは鎧を着ているので、あんまりダメージを受けていない。そのまま彼女は小さい男を抑えつつデカい男の攻撃をギリギリ躱して懐に入る。左手にある剣を水平に振って切り払う。エリスはデカい男が反応するより早く攻撃したから彼女の剣が浅くデカい男の胸に線を描いた。


血が流れ始める。

それでも男は動じることなく、攻撃をし続ける。





アイザックは驚愕していた。


(中々早いな、こいつら)


回復ポーションを作り終えてやることがなくなったので、とりあえず目の前で行われている戦いを見ることにした。物事が起こっている中、受付嬢は近くにあるダストボックスの後ろに身を隠して、様子を窺っている。ひとまず安心ってことでアイザックは戦いに集中していたが、何か異変に気づいて心配になった。


(エリス。前に比べて大分遅くなったけど、大丈夫かな)


確かに前に比べてエリスの動きがかなり鈍くなった。

それはなぜかアイザックにはわからないが、彼の注目を引くことに充分だった。


このままだと、エリスは負ける。

いや、負ける程度じゃないが、彼女を待っている未来を彼を彼はそれを知っていた。

知っていたんだ。


だから彼はそれを阻止する為に、動き出した。


(まあ、ちょっとだけ、邪魔してもいいのかな)


もちろん、前に考えついた計画はそのまま行われる。


男が負ける。

女に負けた悔しさでアジトに帰る。

そして彼らのその後についたアイザックが現れ、リーダーを殺してアジトを破壊する。


そのまま物事が行われるが、成功を確かめる為にちょっとした変化が必要となった。ため息をつき、アイザックは立ち上がると、目を細めて魔力を集める。


(さて、これをそろそろ終わりにするか)


そう考えると、圧倒的な魔力が体内から溢れ出した。けどそれを感じたのほ、自分だけだった。

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