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003

こちらが003です。昨日の投稿をまだ読んでない方は、ぜひ、002をご覧頂けると幸いです。

「あ、そうか、そうゆうことか」

情報収集中、アイザックたちは注目に値することを食べ始めてから数分後、耳にしたのだった。

「それってまじ?」

同じことを聞いたエリスは真剣な顔をしながら尋ねる。

「もし本当なら相当やばいじゃないか」

と、アイザックは返事すると、心配そうな顔をしながらリラが、

「ど……どうしよう?」

と聞いた。

それにアイザックが答える。

「どうしようも何も、とりあえず考えよう」

彼のその言葉を聞いた女の子達は言うまでもなく不安に襲われていたが、言われるがままに考え始める。

それを見てアイザックはため息を漏らすと、自分も考え始める。考えるようなポーズを取って、頭を悩ませる。


(これって、もしかしてあれか? 記憶が正しければ、昔のマリア王国では、少女連続誘拐殺人事件っていうのが起こったんだ。まさかそこまで戻されるとは…運命か、もしかして?)


と、皮肉めいた含み笑いをする。


「でもさ、もし、本当にそこまで戻されたなら、これからどうすればいいのか一刻も早く決めないといかない。もちろん、早めに帰還の結晶を見つけて元の世界に戻されるという当初の目標に変わりはないが、」


と、そこで、アイザックは視線を女の子たちに向ける。

やはり複雑そうな顔をしながら悩んでいるみたい。

それを見て、もう一度ため息をする。


私情を問わず、勝手に未来を書き直すのが果たしていいのか?

正直に言って、それがアイザックの現在の悩みどころ。未来になんの影響を齎すのかわからないしな。


確かに追憶の結晶を1度体験したことがあったんだけど、そのとき師匠と一緒だったし、そもそも結局過去で何もせずに帰ったんだ。


間違いなく、この少女連続誘拐殺人事件に巻き込まれるのが未来に大きな影響を齎す。それをなんとかして避けたんだけど、……だけど。


(これ、水に流してもいいか?)


倫理的に、何が正しいかと聞かれたら、考えるまでもなくアイザックは、そりゃこのミステリーを解き明かして犯人を捕まえることなのだ。と答える。


が、論理上、それはほぼ無理っていうか、できるけど難しいっていうか、とにかく可能だけどやり難いっていう感じ。情報が足りないってわけだ。


アイザックは一応、犯人の顔とその名前を知っている。なんならそれらが、マリア王国についての(200年前の)現代教科書に載せられたから。その問題は、それしか知らないということなのだ。どこにいるのか、人脈は何人いるのか、そういった、強いて言うならとても細かいこと、その情報が全然足りなくて今の時点で行動をとるのが非常に危険。バカバカしいといっても過言ではないだろ。


ミスったらそこまでだ。


これを本気でやるつもりなら、慎重に尚且つ、完璧に行動しなきゃいかない。みんなは無事で帰られることを保証する為に、これしか手がないのだ。要は自分一人で、ミステリーを解き明かして犯人を捕まえること。自分で行動することによって、このミステリーとともに来る危険性は女の子たちには及ばない。とは言っても、自分が勝手に死ぬっていうこともよくはない。もし自分が死んだらみぞれ、リラ、そして、エリスの3人がこの世に閉じ込められる。魔力を感じ取る能力を有する者は、このグループに自分しかいない。仮に自分が死んだとしたら、帰還の結晶は例えば目の前にあるのだとして、決して見つけられないのだ。生きてみんなと一緒に帰る。それしかは許されていない。つまり、失敗という選択肢はない。


アイザックは決意で目を細めると、頭の中でそう宣言する。


(僕は必ず成功する)


と。


(まずは情報が足りない。この任務の成功確率を上げる為にもっと情報を収集せねばな。幸いなことに、情報で豊富な候補者を知っている)


そう考えると、こっそりと受付カウンターに視線を向ける。相変わらず受付嬢は警戒しているような体勢で宿屋を見渡している。


(よく見れば、誰かを探してるみたいだな。もしかして、人脈とかをさがしてるんじゃないか?)


だったら直接に聞くより、シフトが終わったら後についたほうがいいんじゃない?


と、アイザックはそんなことを考える。


(でも待って。もし本当に仲間とかを探していない場合、後につくより直接に聞いた方がいいだろ? いやでも……)


有り余るほどの考えが頭の中で泳ぎ回る。

しばかくそのいくつかの考えを整理すると、アイザックはやっと取るべき行動に決めたのだ。


(まあ、幸いなことに、体を透明にするポーションがあるんで、とりあえず後につくとしようか)


そう。彼女の後につくことにした。数日何もが起こらない場合だと、直接に聞くことによって情報を集めることにした。


どれほど時間がかかるか正直に言ってアイザックは知らないが、できるならせめて、今週以内で終えたいというのがアイザックの本音だった。



日が暮れると、世は心地よい沈黙に沈没した。


(やっと終わった〜。お疲れ様、あたし)


そんなことを頭の中で呟いたのは、背中まで流れるような、艶やかでストレートな黒髪を持っている女性。背がかなり低いからか、よく未成年だと勘違いされているが、実際は女性は、もう20代前半である。


女性は今、帰り支度をやっているところだ。この施設のオーナーを務める人物が指定した制服から私服に着替え、更衣室を出る。もう他の女の子たちがすでに去っていって、宿屋のエントランスエリアとして利用されている場所に残されたのは、飲みすぎた結果、酔っ払って寝っちゃった者たちと自分だけ。


カウンターの後ろから出て、うっかりと変な服装をした人たちが座っていたテーブルに視線を向ける。


……やはり誰もいなかった。


部屋に撤退しただろ? と、そんなことを思いつつため息をする女性。まあ、どちらにせよ、自分に何の関係もない輩だから別にいいけど。それより早く帰らないと。


と、そう決めると、宿屋を出る。


夜空では、満月が無数と思われる星とともに淡い光を放っていて、周りを照らし出している。相変わらず雪と呼ばれている白い物質が舞っているようにひらひらと降っているが、もう何年間ここの王国の住民をやっているから、もうとっくにこの風景に慣れているといっても過言ではないだろ。


いつものよう、月とそれを取り巻く星々を目印に、女性は静かに、帰路に着く。月の位置からすると、時刻はすでに真夜中に近く、間もなく日付が変わろうとしている。


そのことを考えると、やっぱりこの時間だと危険っていうのを思って、その足取りを速める。幸いなことに、少数だけど大通りを歩く人がまだそこそこいるので、多分、今の時点でまだ大丈夫だと女性は思う。


その事実を知って、一安心する女性だけど、それでもまだ危険だと思って、足取りを決して緩めず、大通りを歩き続ける。前よりそのペースが早かっだけれども。


1歩前に進む度に、心臓の鼓動が速くなる。それは、自分ん家がそれなりに近くなっているということを知っているので心が騒いでいるからだ。だからその心に不安と希望を抱きながら、女性は躊躇わずに前進する。こんな時間で一人の女性として、もうその危険性が半端ないレベルに達している。特に宿屋を出てからずっと、自分の背後を追っている誰かの視線を感じていることを除いて。


けど、彼女は知らなかった。


自分は一人じゃないということを。

彼女はまだそれを、全然知らなかった。




アイザックは一旦自分の部屋に戻り、みぞれを寝かせた後透明のポーションを作って飲んだ。そのあとまた彼女のいるエリアに戻り、おとなくしく彼女が更衣室を出るまで待って、宿屋を去ってから、ずっと彼女のあとについたんだ。


彼はすでに、自分の行動が一般的にストーキングと呼ばれているっていうのをもう知っている。しかし自分のことをストーカーだとは思っていない。もちろん、彼は実際はストーカーっていう者じゃないのだけれども。今自分がやっていることはあくまで、自分と、この世に連れてこられてしまった女の子たちの安否を保証する為に、やらなきゃいかないことなのだ。それ以上でもそれ以下でもない。


彼はもう知っている。


自分が何もやらないと、リラたちへの危険性が増えてしまうということを。この少女誘拐殺人事件とやらを解決し、元の世界へ帰る。


だから彼はやった。

やってしまったんだ。


何をやってしまったのか?


それはリラたちが見ていないうちに、こっそりと自分が開発した睡眠ポーションの少量を、彼女たちの飲み物に入れたというのを。でもそれだけでなく、彼女たちが寝ているうちに、部屋の扉をトラップ魔法にかかったのも、彼はそれもやってしまったのだ。これで彼女たちはこの事件に巻き込まれない。それに加え、例え自分がいないのだとしても、誰もが彼女らの部屋に忍び込んであいつらを誘拐しない。それなりの危険性がある、この任務は。これが終わったら間違いなく嫌われるのであろう。でもアイザックはそれを気にしてない。自分がやっていることは、あくまで彼女たちの為だから。なぜ、みぞれたちの為にそこまでやるのかと聞かれたら、アイザックは絶対にこれを、揺るぎない確信を持ちながら断言する。


「彼女ら僕にとって、とても大切な存在だから」と。


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