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呼んでない来訪者

お読み頂き有難う御座います。


時系列的には『異世界人に惚れたので』 https://ncode.syosetu.com/n6177fs/→『悪役非道の誘拐犯』https://ncode.syosetu.com/n3455ft/→本作となっております。

異世界で暮らすサツキとブランシュの話です。

のんびり暮らしてはおりますが、スローライフ的要素は御座いません。


「…………聞いてんの!?ザッツ!!私と結婚して!いい案でしょ!?」


 目の前の女ジェリアは、バンッと勝手口に置いてある机を叩いた。

 衝撃で荷物受け取りのサインの為に置いてあるペンが落ちていく。全く気付きやしていないが。

 俺はどうしてこう…………気の強い面倒くさそうな女に引っかかるんだろう。

 全ッ然好みじゃないのに。

 しかも訪ねて来いって呼んでいない。何故来た。

 普通、訪ねようと思ったら都合ぐらい聞けよ。


「俺にはそう思えない」

「どうして!!歳も同じくらいでしょ!?私、こう見えても家事も得意だし!!」


 嘘つけ。堂々と言うな。

 偶に行く坂の下の酒場で、彼女の家の使用人が愚痴溢してたのを聞いた。

 料理はするが、厨房が戦場のように荒らされるって。

 この女は、出会ってからずっと俺に絡んでくる。何でも、此処から少し行った先の町の商家の娘らしい。

 つい最近遠方の寄宿舎から帰って来たらしい。


 本当にこんな話、どうでもいい…………。全く興味がないのに、耳元で何回も騒がれて覚えてしまった…………。

 ウンザリする。


「それでね、あの子供は私も通ってた近くに寄宿舎のある学校にね。お嬢様に育てたいでしょ?」

「却下。帰れ」


 何があの子だ。馴れ馴れしいな。

 一応生まれだけ取れば、お前よりよっぽどお嬢様だっての。あの家は最悪だったけどな。

 大体、人の家の話だろ。何を勝手に進めてるんだ。

 そもそもあの子はもう子供って年でもない。幼く見えるが、いっぱしの女だ。

 …………詳細を問答する気すら起こらないが。


 未だ口やかましく何か言おうとする奴に、俺は呆れ果てて、出口を指した。

 それでも出て行かない…………。もういい、俺が出よう。


「ザッツ!!」

「家の中に入るなよ。勝手に入ったら巡回の騎士に通報するからな」

「だっ!!私が物盗りするって言うの!?」


 何だそのリアクション。

 知り合って大して経ってない人間を信用できるか。

 まあ、勝手口と繋がった台所は鍵を掛けてあるから、それ以降中へ入る事は出来ない。

 外から窓を割れば別だが、身元だけはちゃんと知れているから取り押さえて警備騎士に突き出してやる。


 異世界に放り出されて、俺が最初に学んだのは人を無闇に信用したら駄目だと言う事。

 女だろうが老人だろうが、隙を見せてはいけない。

 小銭だろうが何だろうが、盗られるような隙を見せてはいけない。何故なら隙のある奴が悪い。

 どんな無法地帯だ…………治安悪すぎだろ。俺が今まで、いや子供の時に住んでいた所とは全然違う。

 いや、田舎ならではの無遠慮さで借りパクは多数発生してたから、質的には同じかもしれないかもな。


 …………この身長になって体を鍛えてからは俺から物を盗ろうなんて奴は早々見かけない。

 が、用心するに越したことは無い。


 俺は未だ勝手な事を喚く奴の横を抜けて、表に出た。


 目の前一面に広がるのは淡い緑の葉が繁る低木。囲まれた気持ち広めの一軒家。

 それが、あの元妻からふんだくった慰謝料で求めた我が家だ。

 畑付きのその家は、ふたりで暮らすには広いくらいだった。

 …………やっとのことで庭いじりと農作業に慣れたが、体がバキバキ言うな。未だ俺若いんだけど。

 地味にあんまり農業の適正は無いと見た。



 そう言えばあの子、ブランシュはどこ行った?

 さっきから全然見ない。

 …………面倒に巻き込まれてないかな。俺みたいに。

 まあ、買い物に行くのは俺とふたりだから遠出することは無い。見回せば居ると思うが。


 …………あ、居た。


 お茶の木を植えて烏除けの人形を下げている下に水色の頭が見える。

 此処で初めて見た、アニメかよって位…………フツーの人類の色じゃ無いだろってカラーリングの頭。

 この世界ではメジャーらしくて、奇抜な色合いをよく見る。


 異物なのは俺を含めて僅か。

 異世界からやって来た人間なんて言うのは、あんまり居ない。

 若葉さんはどうしたかな。暫く手紙は来ていない。

 こんな田舎だとそんなに情報が来ない。まあ、それ狙いも有るんだけど。

 無駄に情報に溢れていると、心が荒むし荒らされてしまう事も有るから。

 どうせ俺とブランシュの噂なんて碌な事になっていないだろう。


 俺はいい。別に噂になってもどうせ流せる。

 だが、ブランシュにはあんまり耳に入れたくない。過保護だと言われるかもしれないが。

 …………俺は俺なりに、あの子が大事なんだ。

 まあ、結構照れ臭いからあんまり言えないけど。


 あれ?他に誰か来たか?

 あんまり見た事無いか。…………若い男に見えるな。郵便屋でもないみたいだ。


 流石にこの昼日中から犯罪は起こらないだろうが…………。

 一応遠目から見とくか。…………家の周りにいたらまたアイツが寄って来るかな。

 屋根の上でも登っとくか。


 この世界に来てから良いと数少ない思った事、その1。

 どうやら俺は、この世界ではかなり運動神経が良くなった。

 忍者かアニメのヒーローみたいに、凄く跳べる。

 屋根ぐらいなら、壁を2、3回蹴ったら上がれるんだ。

 …………まあ、それが何だって位、色々面倒くさい事に巻き込まれてるけど。



 しかし可愛くなった。

 昔から可愛い子だったが、背が伸びて、笑顔が増えた。


 …………押しが強くなったけどな。

 女って怖いわ。


田舎でも絡まれるタイプのサツキくんです。

異世界転移者特有の何だかよく分からんけど素敵で頼れるオーラでも出てるんでしょうかね。

次はブランシュが出てきます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 続編ありがとうございます。 大阪の南には、紫色の頭のマダムがうんとこどっこいしょとおられます。 それがどうしたと言われますと、すみませんでしたで終わりますが・・・。 老け顔なのにモテモテの主…
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