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第13話〜桜井若奈は年下に弱かった。

…………。


「もうだいじょーぶ?」


「しくしくない?」


「だ、大丈夫だよ。悲しくもないからね……ありがとう」


読み聞かせに来ていた子供たちはほとんどが帰るか、近くで絵本を眺めたりしている。


その中の2人が、若奈にくっついてずっとよしよしと慰めていた。


何がどうしてなのか分からないが、妙に懐かれたようである。


2人とも明るい茶髪で、片方はサイドポニー、もう片方は簡単なサイドアップをしている。


とてもよく似た顔立ちなので、双子かもしれない。


若奈の羞恥心は一周回ってしまい、今では素直によしよしされていた。


妹にもたまに同じ事をされていたので抵抗はない。


それに可愛らしい子供によしよしされるのは、結構悪くないものである。


桜井若奈は年下に弱かった。


そこに若奈をここまで連れてきた少年が現れた。


その背後には眼鏡をかけた、やや目つきのきつめな女性が付いてきている。


「いやー、ごめんね、お姉さん。まさか人違いだったなんてね。でも違うって言わないお姉さんも悪いんだよ?」


「今日来る予定の方が急病で来れなくなった件は、朝礼の際に伝えてあったはずです。代理で読み聞かせを行うはずのあなたが無関係の方を巻き込むなど言語道断です。そして大方、話も聞かず説明もせずに放り出したのでしょう。もっと真剣に謝って下さい」


あっけらかんと笑う少年に、頭を押さえてため息をつく女性。


若奈はとりあえず、ようやく出会えたまともそうな女性に助けを求めることにした。


「あ、えっと、あの、わたし道に迷ってしまって…」


「ええ、アルバートから連絡が入っています。しばらくすれば迎えに来るでしょう。迷い人から目を離したこちらの不手際です。申し訳ありません」


「あわわ!頭を上げて下さい!適当に歩き回っちゃったわたしが悪いんです!」


あわあわあわ!


若奈は大人の女性に頭を下げられて慌ててしまう。


いかにもお仕事ができそうな女性で、頭を下げる姿も実に凛々しい。


「改めまして、私はシュカと申します。迎えが来るまでまだ時間がかかりますのでそれまでは……その子たちの相手をしていて下さると助かります」


「それくらいでしたら喜んで!」


…………。


少年の首根っこを掴んで事務室へと入っていくシュカを見送り、改めて双子ちゃん?と向かい合う。


見れば見るほどよく似た顔立ちをしている。


「おねーさんに、いいもの、みせてあげる」


「こっちの人たち、みんなかんどーしてたんだよー」


2人がそう言って差し出したのは一冊の本。


「わ、立派な本だね。重くない?というかどこにこんな大きな本を持って…」


若奈がちょっとした疑問を最後まで口にすることはなかった。


「わたしたちの世界へ〜」

「ようこそ〜」


古めかしく凝った装飾のなされた本が開き、そこに書かれた文字が光を放ったのを見たのを最後に、若奈の意識は途絶えた。


そして次に目を覚ました時、目の前に広がっていたのは文字通りの異世界だった

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