第11話〜桜井若奈のテンションが上がった。
1月ほど時間が空いてしまい、申し訳ありません。
「わぁ!フクロウだぁ。かわいい〜!」
止まり木にとまっているのは所謂いわゆる豆フクロウと呼ばれる梟の一種である。
場所は変わって、観葉植物が多く置かれたエリア。
まるで木々から直接掘り出したような細工のなされた本棚が並んでいる。
同様に丸太から削り出したと思しき生き物の木像なんかも飾られている。
棚の近くに置かれた机の中央に鎮座しているのはバレーボールほどの大きさだが、雄々しく羽ばたくグリフォンの木像である。
そしてそのエリアでは様々な鳥たちが本の整頓をしていた。
若菜は大概の女子高生の多分に漏れず、可愛いものが好きだった。
中でも若菜は鳥好きである。
鞄に付けているキーホルダーはスズメがデフォルメされたものだった。
「あっちにもいる!」
離れたところにはさらに小さなサイズのちんまい鳥がいた。
胸元にはプレートのようなものがちょこんとかけられている。
「えっと、『マルモ鳥』?なんかスズメみたい。色違い?」
ぴょ〜?
首を傾げて若菜を見る小鳥はなになに?と言っているようだった。
桜井若奈のテンションが上がった。
「か、かわいい〜!ねぇ、うちの子にならない?」
ぴょ〜♪
「おねえさん、こっちだよ。あんまりふらふらしないで。迷子になるよ」
小鳥に向かって同じようにぴょ〜ぴょ〜と鳴いていた若菜は、自分よりも小さな子にたしなめられて赤面した。
あくまでたしなめられたことに対してであり、小鳥に向かってぴよぴよ言っていたことには何も気にしていない。
天然である。
「アルバート、若菜はどこにいるの」
図書館に氷のように冷たい声が静かに響いた。
高津本咲。
身長150cm。
黒髪ロング。
表情の変わらない冷たい相貌。
隠れファンからの呼び名は【凍れる美女】。
表情の変化が乏しいため勘違いされがちだが、彼女はかなりの友達想いの優しい子である。
とくに若菜に対しては出会いこそ最近だが、天然かつふらふらと何処かに行ってしまいそうな雰囲気で守るべき妹のように感じている。
そして実際にふらふらとどこかに行かれてしまったことで、咲は表情には出ていないが焦っていた。
「申し訳ございません。先ほどまではここからそう離れていない区画にいることが確認されていたのですが、いつの間にやら見失ってしまったようで…」
「貴方ならこの図書館にいる人間の居場所は全員把握できるはずでしょう」
「本来ならばそうなのですが、なぜか若菜様の位置が分からないのです」
アルバートは困惑したように眉をひそめ、そして思い当たることがあったのか
「もしや…」
と口に出した。
「もしかしたら、管理者区画に迷い込んでしまったのかもしれません」




