七話「守護騎士ユウキ」
「もういいや、お前使えないし。ウチのパーティーから出てってくれる?」
いつものように俺が通告すると、そいつはちょっと待つでござるとツッコんできた。
「拙者、訳わかんない。と言うか何故拙者に?!」
今日のござる口調トリッパーこと守護騎士ユウキはいつもに増して騒がしい。
「そりゃ騒ぎもするでござる! 基本的にこの追放は同胞や拙者たちが『この人材は手放したくない』って人材以外をリリースしてパーティーに空きを作るためのものだったはずでござるよ?!」
「いや、こう……何というかマンネリかなぁって思って」
「マンネリ解消で追い出されるとか斬新すぎでござろう!」
そうユウキは抗議するが、俺だってふざけたくなる時ぐらいある。
「と言うかね、アイリスさんもお前のセクハラ発言とかがちょっと問題なんじゃないかって言ってたし、こう、反省をしてもらうために一回ぐらいは良いんじゃないかと言う話に」
「拙者の知らないところで断罪計画が持ち上がってた?!」
まぁ、普通に冗談であり、お茶目とお仕置きを絶妙にミックスした感じのモノであるわけだけれど。
「しかし、俺たちがパーティー組んで本当に色々あったよね」
「まぁ、確かに……って、このまま回想シーンに突入してから笑顔でSay Goodbyeなって流れじゃござらんよね?」
「はっはっはっはっはっは……」
参ったなぁ、見透かされていたらしい。
「見透かされていたらしいじゃないでござるぅぅぅぅぅぅ!」
「うん、まぁ……小粋なファンタジックジョークはそれぐらいにして、よかったの? ほら、この間追い出した娘、ユウキに告白してたじゃん」
追い出し役を俺がやったからこのござるトリッパーには悪い印象を抱かなかったのか、それとも追い出された報復か、仕事もなく各自が自由行動していたとある日、俺はユウキが胸の大きな少女に迫られているのを目撃していたのだ。
「ユウキの目的が『日本に帰る』ってことなのは理解してるけど、こっちの世界だって捨てたもんじゃないし。『あっち』より大切な何かを見つけられたんだったら、俺たちを気遣う必要はないよ?」
昔読んだネット小説だった気がするけれど、異世界にトリップして元の世界の帰還よりもその世界で出会った大切な人と一緒に居ることを選んだ人物を俺は知っている。
「あぁ、そう言うことでござったか……いや、見られていたとは気づかなかったでござるが」
かたじけないと礼をいいつももござるトリッパーは気遣いは無用にござるよと首を横に振った。
「拙者はまだ一穂ちゃんとのトゥルーエンドを見ていないでござる故」
「ブレてなくて安心したというべきか、告白してた娘を不憫に思って一発殴っておくべきか」
「智樹殿の拳は割と痛いのでやめていただきたいのでござるが」
真顔のござるトリッパーに俺は言う。
「転生前の名前を出すな」
と。
「失礼。それはそれとして、あれ、実は告白されていたわけではござらんよ」
「へ?」
「まぁ、うちのパーティーに思い人が居たのは確かでござるが、どこぞの誰かに追放されたとき『自分の気持ちに気づいてしまった』そうで」
「え゛」
ちょっと、それって。
「いやぁ、モテモテでござるなぁ」
「どこでフラグ立ったぁぁぁぁぁ?!」
オカシイ、オレ ハ ニクマレ コソ スレ、スカレル ヨウソ ハ カイム ダッタハズ。
「彼女、同時にMに目覚めたそうでござるよ」
「ちょ」
この世界はおかしすぎる。こっちの世界だって捨てたもんじゃないとかのたまわった少し前の自分を殴りたくなるある日の午後だった。
【職業補足データ】
・守護騎士
防御に秀でた前衛職。敵のヘイトを集めたり、味方の消耗を肩代わりしたり、魔法や物理攻撃の威力を一定の割合カットする技能などを有する。どこかのござるトリッパーの固有技能を併用すると魔法が絶対効かない魔法職の天敵が爆誕する。