六十話「疑問」
「前回までのあらすじ。半分だけの剣を残して行方不明になってたパーティーメンバーがひょっこり戻ってきた件」
現実がまるで創作物であるかの様な口ぶりで独言したのは、もう何というかやりきれなさの発露とかそう言うモノだと思って頂きたい。
「とある魔王の勢力を敵に回してしまった」
とか。
「そんな状況にもかかわらず仲間に単独行動させてしまった」
とか。見込みの甘さを悔い、自分を責めていたところで、問題の人物が何の怪我をした様子もなく戻ってくれば、今の苦悩は何だったんだって事になるだろう。
「いや、最悪のケースに至っていてもおかしくなかった訳だし。そう言う意味では『良かった、良かった』じゃ終わらせられないけれど」
俺自身猛省する必要もあるが、謎も多い。
「レイミルさんが嘘を言うとは思えないし」
持ってきたユウキの剣の残骸は明らかに本人のモノだ。
「何があったの?」
「……やっぱり、それを聞くでござるよね」
問えば、いつの間にか真顔になっていたユウキは、ついと視線を逸らす。
「そりゃ、剣がこんなになってるんだから質問したって不思議な事じゃないよね?」
「そうね、なら逆に『他に何を聞くのよ?』ってツッコむところよ」
アイリスさんと顔を見合わせ口々に答えた俺達はユウキの顔に視線を戻し。
「はぁ、わかったでござるよ。あれは拙者が一人、道を歩いていた時でござった」
ため息をついたユウキは語り始める。
「声をかけてきた女魔族が居たのでござるが、無視していたら激昂しだ」
「っ、魔族って、それ――」
危惧は肩すかしではなく、謀略の魔王の手の者はユウキを襲撃していたというのか。
「待、待つでござるよ。拙者、話の途ちゅ」
「ごめん。それで?」
話を遮ったことにユウキがあげた抗議の声に、謝罪した俺は先を促し。
「それなりに危ういところでござったよ。たまたま旅人が通りかかったり、その旅人の一人が加勢してくれて無ければ、どうなっていたやら。件の魔族は目撃者が現れたことか予想外の邪魔が入ったことか、どちらが理由かはわかんないでござるが、尻尾を巻いて逃げ」
「今に至る、と言う訳ね?」
「なるほど」
言葉を継ぐアイリスさんの推測まで聞いて、ある程度腑に落ちた。目撃者だけなら証拠隠滅を計って皆殺しにしようとしてもおかしくはないが、ユウキ側には加勢した旅の人という想定外の戦力まで加わって居る。
「想定外の邪魔者だけでも一時撤退って判断させるには充分か」
もっとも、そこで逃がせばユウキはアイリスさんの固有技能の効果範囲内に至るため、魔族としては手の出しづらい状況に置かれる。
「危ない橋を渡ろうとしてもおかしくはないとも思うけど、慎重なのか、それとも――」
「いずれにしてもユウキは窮地を凌いでこの町にたどり着いた訳だし、一安心よねヘイル」
「あ、うん」
件の魔族の事を考えていた俺は、アイリスさんに名を呼ばれて同意し。
「コレが本当にユウキだったら、だけど」
「えっ」
続く発言に驚き、振り返る。
「なっ、何を言ってるでござるか?」
「まぁ、ヘイルはショックだったから仕方ないかも知れないけれど、あなたユウキにしては不自然なのよ」
アイリスさんは視線でユウキを刺し貫きながら顎をしゃくって、俺を示す。
「えっ? 俺?」
「それもあるけど、半分はあなたにくっついてる胸の大きな女の子よ。胸の大きな女の子がヘイルにくっついているのに、おっぱい狂いが『羨ましい』の一言もない。そもそも、この二人のことはユウキなら知っているはずなのに、言及すらしていない。本物のユウキじゃ、ありえないわ」
「「っ」」
俺とユウキの姿をした誰かは絶句する。確かにアイリスさんの指摘は正しい。俺の隣にマイが居るのだから、マイが俺を慕っていたことを教えてくれたユウキなら、何らかの言及があって然るべきだった。
「わかってしまうか」
何処かで聞き覚えのある言い回し、微妙そうな表情をしたユウキもどきの姿は突然ぼやけ。
「山賊のアジトでは世話になった」
正体をあらわし頭を下げたのは、先日助けた変装士の少年だった。
と、言う訳でユウキは偽物でした。
ついでに変装士の伏線も回収完了。




