番外「いきなり主人公以外の過去の話をぶっこんでみる」
お休みのお詫びに突発でパーティーメンバーの過去話をぶち込んでおきます。
「ユウキ、喧嘩したんだって? 珍しいな」
不意に声をかけられてどことなく億劫そうに階段へ座っていた少年はきまり悪げな表情で視線をそらすと、そうでござるねと友人に返した。
「付き合いは長いことでござるし、相手から概ね察してもらえるとありがたいでござるが――」
「あー、今のでだいたい察したわ。アイツの布教かなり強引だって聞いたことあるし、それでいて属性がロリじゃぁな」
どことなくげんなりとした表情で少年の友人は空を仰いだ。
「俺がその場に居たらアイツ殴ってたわ、きっと」
「いや、そこまでしてもらうと拙者の方が」
「冗談。気持ちの上では殴ってただろうけど、やっちまったらアイツと大差なくなるもんな」
「和馬殿」
慌てた少年は自分を見てお道化る少年に何とも言い難い顔をし軽く頭を下げた。
「本当にありがたいでござるよ。そうやって気持ちを汲んでくれるところも、まだ一穂ちゃんを覚えていてくれることも」
どことなく苦いものをにじませた笑みで少年は幼くして亡くなった許嫁の名を口にし、人気のない廊下に視線をやる。
「あれを忘れろってのは難しいだろ。本当に仲よかったもんな。俺なんて何度振り回されたことか」
「それについては申し訳なく思っているでござるよ。『許嫁ってなんだ、漬物かー』とかほざいた分を差し引いた分くらいは」
「ちょっ、まだガキでモノ知らなかったんだからしょうがないだろ! だいたいあの頃でさえ滅多に聞かなかったぞ、親同士の決めた許嫁とか」
抗議する友人にそれはそうでござるけどとこぼしつつ、少年はポケットから定期入れを取り出し、開く。定期券の入っていない側でまだ幼い写真の少女が野花の束を差し出していた。
「拙者、一穂ちゃんと会ってみるまで些少なりとも抵抗があったでござるよ。『この子がお前のお嫁さんになるんだ』何て言われてもまだ小さかったでござるし、その時は当時放送されてた戦隊モノの黄色の人と結婚するとか反論した覚えがござって」
「黒歴史じゃねーか! 今何でカミングアウトした?!」
「一穂ちゃんと始めに会った時、父経由で知ったのでござろうな、手作りの戦隊モノのコスチュームを――」
今思うとツッコミどころでござるよねと口元を引きつらせた少年の許嫁は少年とは違い、写真を見せられて一目ぼれしたらしく、会うたびに果敢に少年を攻めた。
「あー、その流れで俺は振り回された、と」
「怪人役をやってって言われて半泣きになったり、チョコをもらったものの、バレンタインチョコの実験台と知って大泣きしたり、でござるな」
「ちょっと待て、何で泣いたとこばっかり挙げんだよ?!」
いじれば喚く友人をまぁまぁと宥めて噛みつかれたりしつつも、とりとめもない思い出話は続いた。
「しっかし、人気のない場所でよかったわ。誰かに聞かれたらと思うと」
「誰かに聞かれなくても、こうして男二人で人気のない場所に移動する姿を見られただけでホモ疑惑ぐらいなら湧くでござるよ?」
「やめて?!」
数度に一度、友人を弄るのは少年がこの友人に心を許しているからか。
「一応、その手の噂が立たないように彼女を作ろうと努力したことが拙者にもあったんでござるけどね」
正確にはホモ疑惑払拭などではなく、許嫁の父親に懇願されてのことだったが、うまくはいかなかった。
「拙者の中の一穂ちゃんはあの時のまま。見た目が幼い子はどうしても一穂ちゃんを思い出してしまうでござるから、真逆と言うか胸の大きな年上のお姉さんに絞ってみたのでござるが……」
全敗中でござると漏らすとしょぼくれた顔で少年は友人を見た。
「やっぱりホモ疑惑発生しちゃうでござろうか?」
「そこに戻ってくんな?!」
投げられた疑問へ少年の友人は大げさな身振りと共に喚き。このとき少年はまだ思っても居なかった。自分が異世界に放り込まれるなどということは。
一穂ちゃんに関してはうっかり口にしたところを主人公に聞かれて、恋愛ゲームのキャラだとか誤魔化していたために主人公はゲームのキャラだと思っている模様。




