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三十九話「おそうじの時間」


「職業って組み合わせ次第で恐ろしい効果を発揮するよね」


 声には出さず、呟く。俺がそう認識したのは、四人目のパーティーメンバーをとっかえひっかえしていた為に冒険者がつく職業について色々わかってきたからだと思う。今回俺が提案したのも以前思いついた組み合わせだったりする。


「基点が確保されていたり目的地に視線が通ったりしておらず、飛ばされる側の安全が保証されない転移」


 と言う生身の人間を送るには危険すぎる魔法の行使も、飛ばされる側として犠牲にしても困らない存在を確保出来るのなら問題は大きく減る。


「別に二人目は死霊術師でなくてもいいんだけど」


 例えば人形使い。糸を使って動かす操り人形をでは無理だが、仮初めの命を与え自立行動可能にする技能を使われた人形ならアンデッドの代わりにはなるし。


「爆発物の製造が可能な錬金術師を加えれば、どこからともなくワープしてきて自立行動し、抹殺対象に近づいて自爆する危険な兵器だって作り出せる」


 自立行動する存在の知能によっては標的を間違えるだとか扉が開けられないで詰む様な失敗も起こりうるが、そんなモノを作り出せる奴らを敵に回したら気の休まる暇がない。


「もっとも、技術的な問題があるかも知れないし、現状は俺の思いつきだから机上の空論で終わる可能性もある訳だけど」


 今、こうして考えの一端を空間魔術師と死霊術師に明かした以上、可能か不可能かは答えてくれると思う。


「そう」


 顔を見合わせた二人は各々のタイミングで首を縦に振ったのを見て短く声を出す。可能という結論に至ったらしい。ならば後は俺が罠師としての空間認識能力と罠を製造設置するための能力を駆使し、おおよその空間の位置と大きさを付きの村長宅の見取り図を書き上げ、空間魔術師の女性に渡せばいい。


「じゃあ、そろそろ掃除を始めようか」


 口ではあくまで掃除のことを口にしながら、紙には「決行は夜中に」と書いてみせる。流石に昼日中に村の中をアンデッド連れで歩いていては目立つなんてモンじゃないし、空き家に滞在するのは事実なのだから実際に掃除もしなくては夜に困るのは俺達だ。騎乗者の少女が村長から聞き出した逢い引きスポットのおかげで村の中と外を歩き回っても不自然でない理由が出来たのも大きい。エリザと空間魔術師の女性を連れて四人で行動してるところを目撃されても、エリザ達が逢い引きスポットに興味を持ったところだから案内しているのだと説明が出来る。


「どのみち逢い引きスポットは行っておかないと納得しないだろう少女が約一名居るしなぁ」


 などと声にだしてボヤく訳にはいかず、ただ遠い目をしながらウサギ女勇者に掃除道具の場所を聞く。


「にゅ」

「ああ、そっち? ありがとう」

「にゅにゅ」


 場所を示してくれたことに礼を言えば、掃除道具の方に向けていた前足を振ってウサギ勇者は歩み去る。おそらくは台所に向かったのだろう。


「では、あたし達はこれで――」

「あ、うん」


 空間魔術師の女性がウサギ女勇者に続き、他の女性陣もこれに続いて行く。


「ヘイル様」


 最後に残った少女が立ち止まるのは、何というかわかっていた。


「スポットめぐりは掃除の後ね」


 別にツンデレのデレの部分が来た訳でもなければ、社会的に死ぬ結末を諦めた訳でもない。ただ、スポットめぐりを口実にして歩くにしても下見は必要だと判断して割り切っただけだ。


「ヘイル様ぁ」

「ちょっ」


 ただ、もうちょっと踏ん張っていた方が良かったのかも知れない。感極まったのか抱きついてきた少女を俺は受け止め損う。


「わぁっ」

「きゃあっ」


 抱きついてくるまでは想定内だったのだ。押しつけられた柔らかさに注意が逸れたのが失敗だった。


「痛……」


 前世、漫画とかで見かけてご都合主義お疲れさまとか思っていたハプニングをまさか己の身で体験することになるとは、思ってもみなかった。


「これも宿命故にか」


 相変わらず中二病な口ぶりで視線を逸らしている精霊治療師(エレメントヒーラー)のカルマンさんは彼なりにきっと気を遣っているのだと思う。だからたぶん、起きるの手伝ってくれとか上の少女をどかす手伝いをして貰えませんかねと声をかけるのは自分本位が過ぎるだろう。


「ああ、私のために身を挺して……」


 上に乗っかってる少女は少女で何か勘違いしているからか、俺はやけに思考がクリアというか冷静であり。変形しつつも柔らかさと重量で自己主張をしてくる少女の何かなんて全然意識していなかった。欠片も意識していなかった。


「そんなことより早く起きて掃除しないと」


 とか思ってて、本当の本当に気にならなかった。意識したそぶりでも見せればロクでもない結果に繋がることは明らかだったのだから。


ユウキ「おのれ智樹殿ッ! 羨ましいでござるぅぅぅぅぅッ!」


以上、最近出番のないトリッパーの慟哭でした。

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