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三十話「めんどくさかったりつまらないシーンって読み飛ばしたくなるよね」

「作戦修正はあっさり終了した」

 空間魔術による転移には重量と言うか人数制限がある為、騎乗者の少女もこなせたのはほぼ伝令のみ。従って、追加人員となったのはMな少女と空間魔術師の女性だけなのだ。人員が二人増えるだけなら修正部分などわずかなモノ。

「って、サクッと終わってくれたらよかったんだけどなぁ」

 騎乗者が加わることとなってやることができてしまった。Mな少女が乗る騎乗動物の確保だ。行使回数と距離の関係でさすがに彼女の跨っていた馬までは空間魔術で運んでこられなかったらしく、今騎乗者の少女には跨るモノがない。故に作戦修正を中座し、俺は宿を出て街を歩いていた。

「騎乗できる竜が居ればクレインさんと二騎、二人乗りすれば高機動力の四人パーティーを作れるんだけどね」

 騎乗可能な竜なんてそうお手軽に確保できるモノじゃない。

「人間は単体で空を飛べない、だから乗せて空を飛んでくれる竜と言うのは騎手と信頼関係などで結ばれているか――」

 調教もしくは取り付けた対象を支配できるアイテムなどで騎乗者に重々であるような処置でもしておかなければとてもじゃないが、乗れたモノじゃない。

「騎乗者とか騎乗系の職業は稀有な例外だけど、技能で補えるのは当人のみだし」

 野生の人を乗せられる大きさの竜を捕まえることができたとしても、二人乗りなんて試みたとたん、制御が効かなくなって二人目を振り落とすことだろう。

「空を飛べて高い機動力を持ち、調教は大変。アイテムで支配するとなると、そのアイテムが高価。捕獲も相手が空を飛ぶ生物だけに難しく、爪と牙があるから捕獲自体が一定の力量を持つ者でも命がけ」

 だからこそ卵の段階で巣から盗もうとする者もいるが、大半は巣を守る親に殺されるか大けがを負わされる。

「つまり、お金で片を付けようとするとシャレにならない金額がかかる上、都合よく騎乗竜が販売されているかもわからない、と」

 お前は誰に説明してるのとツッコまれそうなことを延々と口にしてるが、まぁ、現実逃避である。

「おとなしく馬でも買う、かな」

 現実や財布と相談すると妥当なのはその辺りであり。

「馬がなくても文句は言わないと思うけど」

 そのかわり四つん這いになって自分にまたがってくれとあのMい少女なら言い出しかねない。

「久しぶりに再会した人たちに俺の間違った情報が伝わるのは嫌だ」

 拡散なんてしようモノなら俺は引きこもるしかない。

「はぁ……どうしてこうなった」

 頭を抱えつつ向かう先は騎乗動物を専門に取り扱う店。

「あ」

 店頭近くまで来て立ち止まる。

「何で俺、一人で来てるんだろ」

 騎乗者の少女が居なくては意味がないというのに。

「重症だよ、ホン……あ」

 ホントにと言いかけて目に留まったのは売り物であろう拘束具や騎乗具、そして。

「……首輪? ちょ」

 俺は遅まきながら気づいた。騎乗動物を専門に取り扱う店にこの手の品があるのは当たり前だが、M方面で手遅れな少女とこの店へ一緒に足を運んだらどうなるかを。

「馬とかそっちのけで、首輪(こっち)とか見て――」

 購入したうえで自分に装着したりするのではなかろうか。いや、たぶんする。

「重症で良かった」

 危ないところだったのだ。ひょっとして罠師としての危機察知能力が働いてくれたのか。

「危なっ。危うく社会的に死ぬとこだった」

 この店にはクレインさんとあのM少女で一緒に行ってもらうのがおそらくベストだろう。他の異性の前でまで暴走はきっと、たぶん、しないような感じがそこはかとなくするっぽいし。職業柄、足を運んでも不自然ではない組み合わせなのだから。

「それと、騎乗動物も何を買うかはお任せでもいいのかもしれないよね。渓谷や山地もある目的地の事を鑑みると、大山羊も選択肢の一つではあるけど」

 よくよく考えれば、餅は餅屋だ。

「俺は俺で呼び出すための追加の罠でも作っておくとか……うん、ロープでの拘束系なら状況次第では壁からぶら下がったりとかに使えるかもしれ」

 そこまで呟いて、ふと思う。

「ロープでの拘束……」

 ロープを特定の長さで切って、せっせと罠を作る俺。そこに買い物を終えてMな少女が帰ってきたら。

「あー、罠は良いか」

 ロクなことにならない気しかしなくて俺は罠作成をあきらめた。


現実にシーンのスキップ機能はない

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