二十九話裏「騎竜射手の回想」
「パーティー、か」
鞍を付けた愛竜と別れパーティーメンバーの後ろを歩きながら自分はふと思い出す。そう、あの日のことを。
「そっか、治ったんだ」
竜の怪我が完治し、パーティーから抜けることを申し出た自分にかの人は良かったねと言った。ひょっとしてどこか態度に出ていて察されていたのかもしれない。
「騎竜射手に限らず何か騎乗動物とかに乗っての行動が基本の職業は足の違いで騎乗職以外とは組みづらいからね。二人組とかだったらタンデムもありかもしれないけど、ウチは三~四人パーティーが基本だし」
「なるほど」
愛竜の怪我が治ればパーティーから抜けることを始めから知っておられたのか。
「まぁ、ウチは四人目をとっかえひっかえする節操ナシパーティーだからさ、空きもすぐ埋まると思うし」
お気遣いなくと笑うと去ってゆき。
「ヘイルから話は聞いたわ。と言っても、治ったばかりの子のところに私が顔を出すのは拙いから、これでお別れね」
入れ違いにやって来た赤毛の女は微かに苦みの帯びた笑みを浮かべて告げる。
「お気遣い、痛み入る」
「そんなのじゃないわよ。ただ技能の効果を抑えることもできない未熟者にできるのはその影響に巻き込まないってことだけだから。まぁ、コレも負荷代わりと思えばいい訓練になるらしいのだけれど」
「なるほど」
このパーティーに一時所属したことのある魔物使いが大幅に実力を上げた話の真相を自分が知ったのは、このとき。
「なれば、またパーティーを組むことがあれば」
「そうね。あなたの愛竜が嫌がったりねを上げなければだけど」
それは約束と言うほど確かなモノでは無かったと自分は思う。
「それじゃ、また」
だが、去りゆく背にまたどこかで出会うことがあるのではないかと言う根拠なき確信を持ちながら見送り。
「聞いたでござるよ。乗竜の怪我が回復したとか。こう、拙者、空の旅とか興味シンシンでござる故、クレイン殿がおっぱいの大きな女の子だったらなぁと思うことしきりでござる」
最後にやって来て真顔でふざけたことを言う人物に、自分はどう返すべきか迷い、沈黙した。それが正しかったのかはわからない。
「あー、その、冗談でござるよ? 飛竜に女の子とタンデムとか拙者的にはちょっとしたトラウマがあるでござるから。ええと、そうじゃなくて拙者たちの明日の予定なんでござるが――」
気まずげに視線をそらしたユウキと言う少年は、仲間たちとどちらへ向かうかなどを大まかに自分に教えてくれた。アイリス嬢の固有技能と言うモノに愛竜が巻き込まれないようにと言う配慮なのだろう。
「世話になった」
「まぁ、お世話をしたのは拙者以外の二人でござるけどね。拙者も一度でいいから胸の大きな女の子にお世話されてみたいとは思うでござるが……まぁ、アイリス殿はノーカンでござるな」
「ふむ?」
相変わらずふざけているようだったが、少年は何故か赤毛の女を特別扱いし。
「あー、こっちの話でござる」
ヒラヒラ手を振ると別れを告げ去っていった。
「あれから一年――」
愛竜の防具や乗具を求めて立ち寄った鉱山の町でかの人らと再会することになろうとは。
「パーティーを組むなどいつ以来のことか、されど」
悪くない、と思う。相手が一度組んだ者達を含んでいることもあるだろう、だが、何より。
「ようやく見せられる」
自分の本領、騎竜射手としての力をかの人らに。出発が伸びたのは、想定外であったが、たいして問題ではない。
「それよりも――」
気になることがあるとすれば、暗黒神を崇める者達が何か企んでいるという話と、目的地。
「かの村の向こうにあるのは強大な渓谷」
大きな高低差は自分と愛竜ならば無視できるが、徒歩の者には大きな障害となる。また、高低差がある地形となれば生息する魔物も生息環境に適応した飛行できるモノが多少なりとも存在するだろう。
「渓谷にいくつかある自然洞に潜んでいると見るべきか」
先行偵察を請け負う以上、重点的に調べる場所は絞っておかねば。
「さて」
鬼が出るか蛇が出るか。未だ出発どころか作戦修正の打ち合わせすらまだだというのに。気が付けば自分は強く拳を握りこんでいた。




